第一話: 突然の終わりと新しい始まり
俺、佐藤悠斗は、ただの平凡な高校生だった。成績は中の下、運動神経も特に良くない。友達はそこそこいて、放課後はコンビニでバイトしてアニメを見て寝る。そんな繰り返しの日々を送っていた。
その日もいつも通り、バイト帰りに信号待ちをしていた。イヤホンから流れるアニソンを聞きながら、ぼーっと空を見上げていた瞬間――ドンッ! けたたましい衝撃音とともに、視界が真っ暗になった。
「……え?」
気づいた時には、俺は見知らぬ森の中に立っていた。頭上には青々とした木々が生い茂り、足元には苔むした地面。遠くで鳥のさえずりが聞こえる。コンビニの袋も、スマホも、全部消えてる。代わりに、俺の手にはボロボロの木の杖が握られていた。
「は? 何これ? 夢? いや、痛いしリアルすぎるだろ……」
混乱していると、突然、目の前に半透明のウィンドウが浮かんだ。まるでRPGゲームのステータス画面みたいだ。
名前: 佐藤悠斗
レベル: 1
職業: なし
スキル: 【ゴミ拾い】
「ゴミ拾い!? 何だよこのクソスキル! 異世界転生したのにこれかよ!」
思わず叫んだら、森の奥からガサガサと音がして、でっかい猪みたいなモンスターが飛び出してきた。牙ギラギラ、体重は俺の3倍はありそう。完全に詰んだ。
「うわっ、やばい! 逃げなきゃ!」
慌てて走り出したけど、足がもつれて転ぶ。猪が唸りながら突進してくる。もうダメだと思った瞬間、手に持ってた杖が勝手に光った。
「え?」
次の瞬間、猪の足元にあった小石がふわっと浮かび上がり、猪の頭に直撃。ゴツン! って音がして、猪が気絶した。
「……は?」
呆然としていると、ステータスウィンドウがまたポップアップ。
スキル【ゴミ拾い】発動
効果: 周囲の小さな物体を自由に操る。
補足: 「ゴミ」とは使用者にとって不要なもの全般を指す。
「待て待て待て、これって……チートじゃね?」
気絶した猪を見ながら、俺はニヤリと笑った。この異世界、案外イケるかもしれない。