第5話:雷神
突如として現れた少年に、男は驚きの声を上げる。
「お、お前は……」
「なに、気にしないでいいですよ。それよりも、その透明化の指輪、もう効果ないみたいですね」
もう一人の男は、ハッとした表情を浮かべ、手にはめた指輪を隠した。
「やはり透明化ですね。日中でも姿を隠せる効力の高さは、おそらく……」
話の途中で、フッとクリスの姿がかき消えた。
その刹那。
クリスは仁の背後に回り、虚空に向けて掌底を繰り出した。
ゴンッという鈍い音が聞こえると、また大きな男が姿を現した。
「ば、バカな! なぜ分かる。この透明化の神具は、気配すらも消せるというのに!」
「ふふふ、仁さんの周囲は効果が消えるんですよ。透明化の効果がない以上、察知するのは簡単です」
倒れた大男もまた、手にナイフを持っていた。
「お、おい。クリス、大丈夫なのか?」
「実は、あんまり大丈夫じゃないです。遠距離まではカバーできないので、銃だとお手上げですね」
仁には、なんとなくわかっていた。
この公園には、もっと大勢の男がいて、それらは自分を狙っていること。
そして、この連中は神事を悪用している集団であるということ。
当然、銃が出てくる可能性もある。
「ど、どうしたらいい?!」
動揺する仁に、クリスはほほ笑む。
「あなたの力を、この公園中全体に届くようにイメージしてください。自分の身体で、この公園を覆うイメージです」
言っていることは分かる。
自分でも、出来るという実感がある。
だが、1つ問題があった。
「でも、そんなことをしたら、クリスの神事まで切れるんじゃないか?」
そう、この少年は、子供だ。
あの爆発的な力は、間違いなく神事によるもの。
それが切れてしまっては姿が見えても、倒せない。
「大丈夫です。さあやって!」
目の前にいたはずの男も、いつの間にか姿が消えていた。
新しい神具を身に着けたのだろう。
「迷っている暇はありません! さぁ、はやく!」
「ええい、なんとでもなれ!」
仁は、公園を包み込むようにイメージを持った。
すると、自分たちを取り囲んでいる男たちが、次々と姿を現した。
「ありがとうございます!」
クリスは叫ぶやいなや、凄まじい速度で銃を構えた男に突進した。
全く、速度は落ちていない。
それどころか、さらに速くなっている。
「ははは……、マンガの世界だ……」
屈強な男たちが次々と倒れ、あっという間に全滅した。
クリスは男たちの指輪を外すと、集めて仁に手渡した。
なんの変化もない光景だが、仁だけにはその指輪に残された神の断片が燃え、消滅していく様子が見えた。
「何か、見えました?」
仁は、その指輪から感じ取ったイメージを伝える。
「たい……よう……」
「太陽ですか。透明化で太陽、とくれば一人しかいない」
クリスはそう呟くと、どこかへと電話を掛けた。
「さ、仁さん。ここの処理は田楽さんにお任せして、今日は家まで送りますよ」
「そ、そんなことより、どうしてここがわかったんだ?」
「そりゃ、付けていましたからね」
「まさか狙われるって知っていたのか」
クリスは、よく見る不敵な笑みを浮かべた。
「デメリット系の神事は希少だって、お話しましたよね」
「改めて、よろしくお願いいたします」
「くそっ。選択権なんてないってか」
仁はクリスの手を取り、覚悟を決めた。




