ダンジョン税①
「えぇ!?それっておかしくないですか!?」
そんな少年の声が聞こえ、酒場の奴らは皆、そっちを向いた。
「ランクが上がると、それに応じて特典が増える、って・・・ずるいじゃないですか!」
続く少年の言葉に、俺らは興味を失った。
あれは風物詩だ。
新人なら皆同じように思い、そして叫びたくなる。
「まぁまぁ、落ち着いて。」
「落ち着いてられるわけがないじゃないですか!ランクを上げるのに必要なのって、獲得したドロップアイテムの換金金額ですよね!?10人で組んで1人だけに集約すれば、Aランクの1600万だって達成できるじゃないですか!なのに、Aランクになればこんな・・・」
あぁ、皆が通る道である。
Fランクは100万まで、Eランクは200万まで、Dランクは400万まで、Cランクは800万まで、Bランクは1600万まで、Aランクは3200万までの昨年の儲けた金額で決まるのだ。
そして、Aランクにまでなると、ギルド所有の転移魔方陣のパーティーでの無料使用や、ギルド経営のホテルのスイートルーム優先権などが与えられるのである。
だが、集約を実践できる者はいない。
なぜなら・・・
「まず、集約は不可能です。」
「え!?」
「パーティーに所属している限りこのカウントは分割されますし、金銭の受け渡しはギルドカードに直接されます。そして、ダンジョン内は各パーティーごとに分かれているため、別パーティーでの受け渡しは不可能ですよ。」
そう、この世界のダンジョンは、ゲームで言うところのインスタンスダンジョンなのである。
それに加え、ダンジョンの出入り口は日本国内でも47個に限られていて、その全てに買取所が存在しているのだ。
買取所とはいうものの、強制的に売らなければいけないわけではない。
ダンジョンを出る際に査定を受ける義務があり、その合算で翌年のランクが変動するのだ。
「そ、そうだったんですか・・・」
「まぁ、出来たとしてもやらないでしょうがね。」
「え?何故です?」
「Fランクである間は翌年まで関係ありませんので、年度末説明会まで説明されませんが、ランクによって納税価格が変動するのですよ。」
そう。
買取所は、事実上の納税所なのである。
Fランクは0%、Eランクは5%、Dランクは10%、Cランクは20%、Bランクは30%、Aランクは50%、そしてSランクは70%である。
これが、新人の叫びとは別の、もう一つの酒場の風物詩である年度末の二極化につながっているのだ。
次の年ランクが変わりそうもない者は税率を下げるためにサボり、酒場に入り浸る。
確実に上がる者は、開き直ってランクの低い今年の内に稼いでしまおう、と張り切ってダンジョンに赴くのだ。
そう、それがここ、ダンジョン入口換金所併設酒場の、風物詩なのだ。
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