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アブノーマル  作者: 白菜


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3/7

慣れるしかない

 柴は笑った。世界が変わると。俺はもう理解することを放棄した。柴が手を差し伸べ、俺に言う。

「僕らのとこに来ないか?」

「…来ないって言ったらどうする?」

「……君にその選択肢はほぼないと思うよ。僕らは君を捨てれるんだ。捨てられた後はどうする?友達や家族は助けてくれるか?アブノーマルとなった君にはもう居場所はここしかないんだよ。」

「チッ、殺しといてそれかよ!」

手を掴み、立ち上がる。なぜだろうか。ふつふつと湧き上がる高揚感とこれからの不安が心臓を鼓動させるような気がした。

「ふふっ、ようこそ!小規模ギャング『locker(ロッカー)』へ!」

「……ん?ギャング?あの悪いことするギャング?」

「そうだよ?」

「は!?聞いてないんだけど!!」

「…じゃあ捨てるか。」

「おい!待てよ!!!」

俺がうるさく怒鳴ると柴が人差し指を俺の唇につけ、シーと言った。ムカついた俺は柴に殴りかかった。


 ───なんやかんやあって落ち着いた。そして色々詳細を聞いた。どうやら表の顔は喫茶店『Keychain(キーチェーン)』を営みながら地下で私立探偵をやっているらしい。しかし裏の顔はアブノーマルしかいないギャング集団『locker(ロッカー)』で汚れ仕事をやっている。

lockerのメンバーは俺含め6名。一人目、柴夏生(しばかせい)。現在16歳の柴は私立探偵とlockerのリーダーをやっている。scienceCodeの会員だった彼はある日、自分の研究結果や論文をすべて燃やして逃げ出した。そしてkeychainに身を隠してきて、今に至るらしい。彼のメリットは『万能(ばんのう)』。簡単に言えば()()ってこと。そして彼は()()()()()()()()。そんなアブノーマルがいるんだと思ったが、声には出さなかった。

二人目、萩乃百舌(はぎのもず)。今年18歳のサイコパス。俺を殺したのはコイツって聞かされた時はびっくりした。こんな美貌に殺されたのならありかもしれない。彼女のメリットは『記憶愛体(きおくあいたい)』。自分に傷を負わせた者の姿を体が記憶し、クローンとなれる。クローンのまま本体を殺すと本体の記憶を受け継ぐ。デメリットは『自傷癖(じしょうぐせ)』。傷や血を見ると自分を傷つけてしまうとかなんとか。これは本人次第でなんとかなりそうだが、きっとそうはいかないのだろう。

三人目、キーマスター。優しいおじさんの姿が仮で本体は意思を持った()()()()()()()()。普段はKeychainの店主でカフェモカが美味しいで有名だ。彼のメリットは『ロック』。対象を一つだけ固定する力。しかし、能力を使うと左腕が機能しなくなるのであまり使わないらしい。デメリットは『人化(ひとか)』。そのままの意味で人の姿になる。しかし、眠くなったりすると鍵の姿に戻ってしまうから大変だってさ。

四人目、羽京空楽(うきょうくうら)。lockerの主戦力の一人。いつもは外をふらついているらしいが任務や柴から出動命令が出た時に来る隠し球のような存在。写真を見たけど舌に変な傷があってあまり関わりたくないな。彼のメリットは『音速』。力をこめて動くとスピードが音速になる。柴曰く、ブレーキする時は力をいきなり抜くから止まれず、怪我してしまうらしい。デメリットは『喋れない』。単純かつ、ダメージがでかいデメリット。コミュニケーションが出来ないことがどれだけ辛いか想像出来ないが、柴は笑いながら「慣れだよ慣れ」って言った。そうだ。()()()()()()()。もうlockerの空気感に慣れてきている自分がいる。案外、馴染みやすかったのかもしれない。

五人目、(かげ)。もう一人の主戦力であり、最終兵器だと柴は言っていた。彼のメリットは『潜影(せんえい)』。影に潜ったり、潜らせたりできる。柴も百舌も口を揃えて「もう影の中に入りたくはない」と言うほど影の中は最悪らしい。デメリットは『不老』。彼は12歳でアブノーマルとなってから歳をとっておらず、いつ生まれたのか分かってないから最年長かもしれない。

「そして、俺が六人目と…」

「そんな感じ。これからは君のメリットとデメリットを調べなきゃかな。」

一階のkeychainでキーマスターのカフェモカをいただく。不安で心が押し潰されそうだ。カフェモカの冷たさが不安を煽るようだった。上のクリームをちまちま食べてるとキーマスターが外に出た。柴はハッとして俺を急かした。

「土曜日は11時半から開店なんだ!早く飲んで!」

ボチャッ…

「あ……あっ…な…なんだよこれ!!は、()()()()()()()()!!!!」

「うっ…ホラー映画を見てる気分だな……」

下半分しか見えなくなったが変な音がしたコップを見てみる。割れた片目がクリームの上にトッピングされていた。いや、違うな。これは、()()()()()()()()()()()()。全員唖然としているとキーマスター戻ってきた。

「もうすぐお客さ…まが来ますよ。」

顔が見えないが一瞬言葉が詰まった。きっと異物が自信作に入っていて怒っているのだろう。

「客も使うからコップを地下には持ってけないし、これどうする?」

「……()()()()()()()()。」

「……え?」

コップを掴み、大量のクリームと一緒に異物を一気に口に運んだ。

グにゅグにゅ。ミチャミチャ。。

クリームと一緒に食べたから甘さがより気持ち悪さを強調している。食べたことがない不思議な感覚で一生のトラウマだろうな。ある程度口の中で砕いたら液体と共に体内へ。

っ、!ゴクッ!

「うぇ、食感がキモすぎる、。」

「…だから君はいじめられるんだな。」

「……………それは、俺が弱いから。俺が身も心も弱いから利用されるんだ。」

「うーん、それは違うな。君は力があるよ。僕だって君と本気で戦いたくない。」

柴はそう言って地下室に行った。俺に力?ある訳がない。柴の言葉の意味を考えながら彼に着いていった。


 カランコロンと音が鳴り、ドアが開く。艶やかな髪と光が反射し、キラキラと輝く瞳。客がざわざわする美貌の持ち主がやってきた。私ももちろん虜に。神は私にこの子を(あい)せと言っているかのような奇跡の出会いに手が震えた。

「すみませーん!」

「あっ、はい!」

彼女が私を呼んだ。胸の高鳴りを感じ、呼吸が荒くなる。彼女の近くに立つと美しさが二乗され、気絶してしまいそうだった。

「ご、ご注文をお伺いします!」

「えっと、ミニランチセットを一つお願いします。」

「……あ、ミニランチセットですね。かしこまりました。お飲み物はどうされますか?」

「カフェモカで。」

「か、かしこまりました。少々お待ちください。」

すぐさまキーマスターがいるカウンターに行き、丸まった。彼女に見られてないか心配だが、そんなことより心を落ち着かせたかった。

「萩乃さん、しっかりしてくださいよ。」

「いやいや!!あれ人間なの?宝石でしょ!いやもう無理無理無理!顔見て接せないって!!」

キーマスターは深くため息をして彼女を見た。すると、キーマスターは屈んで小声で話してきた。

「……彼女、制服ですね。」

「…え?」

「校章を見る限り、宝学(ほうがく)ですよ。」

「…嘘!?」


─────────────────────────

宝学 宝咲高等学園(ほうさきこうとうがくえん)の略。レベルの高い教育と質の良い環境で生徒の成長を促す名門私立校として1986年5月20日に開校した。

在校生482名。教員28名。その他係員47名。(2006年8月14日記載)


(略語検索サイト『りゃくしらべ』の内容をそのまま記載)

─────────────────────────


宝学……。最高傑作の集まりであり、(あい)したい人が沢山いる場所。彼女もリストの1人になってしまった。望んでいなくても一方的な愛を押し付ける。それが私。萩乃百舌という女なの!

「連絡先交換してくる。」

「……責任は自分で取ってくださいね。」

「あははっ!絶対に嫌!」


 地下室にて。赤をメインとした部屋におしゃれな雰囲気が漂い、澄んだ空気が肺を通る。

「君はアブーノーマルについてどこまで理解している?」

柴は俺を睨みつける。試験官のような目つきで椅子に座る。机に足を置いて俺を見下す。正直、このガキを殴り飛ばしたいが視界が半分じゃ何もできない。

「えっと……人に嫌われていること?あと、能力があることぐらい?」

「じゃあ、お勉強の時間にしようか。」

「あっ、はい。」

「アブノーマル誕生の仕組みの話をしよう。人間は生まれた時から超常的な力は持っている。ただ、力の引き出し方が分からないまま成長する。そして、成長すると力の使い方は段々と忘れていくものだ。……きっかけが無いと人間は変われないんだよ。本当に不便だね。」

「え、?でも映像記憶の持ち主とかテレビでよく見るけどあれは力の使い方をわかっている人なの?」

「いいや。違うね。それは()()()()()()()()なんだ。幼い頃にメリットは使えないが、デメリットは何故か使える。デメリットが自然に使われたらそれを才能として体、脳が記憶する。思ったより体と脳みそは単純なんだよ。しかし!死ぬ事によって本来の力の使い方を体が思い出す!『死』は『終わり』ではなく、『始まり』であるんだ。死ぬ事で体は強く刺激される。ほとんどの人間はそこで終わるが、アブノーマルはその後、回復しようとする。その回復する為のエネルギー、コイツのせいで思い出すんだ。本来の在り方。生物の頂点としての機能。奥底に閉まったはずの魂が蘇る。体が回復エネルギーを消費する時にメリットとデメリットを微小ながら使用する。別のことにエネルギーを使ってしまうから目覚めた。これがアブノーマル誕生の仕組みってわけ。」

理解が追いつかない。天才と凡人の差をこの身で感じた。

「……そして、君は『()』を感じ取らなきゃ意味が無い!!」

「……え?」

「ってことで〜十合先生の盾になってくれない?」

「いやいや!待てよ!話が全然わかんないって!」

「もう契約しちゃった^ ^」


 結局十合のところに向かわされ、十合担当の診断室で十合と話している。

「絶対アイツ殺す!!もっとわかりやすい説明が無いのかよクソが!!」

「……尾座田くんの言うこともわかるけどアブノーマルについてはまだわかって無いんだよ。夏生の話も彼の憶測にすぎないんだ。」

「はぁ……んだよ。…ところで十合さん、『気』ってなんですか?」

十合は目の前のパソコンとにらめっこをして考える。そして、一個の結論を出した。

()()()()()()()()()()()()()()()()。それが『気』だと思うよ。君はほぼ目が見えないし、これを習得すれ君のデメリットはカバー出来ると思うよ。」

「なるほど、柴はこの力がないとダメだって言ってたのか…。まぁいいや。それじゃあ十合さん、本題に入りましょう。」

十合は頷き、スマホを手に取った。そして一枚の写真を見せた。そこにはクシャクシャの紙に『()()()()()()』と書かれていた。子供が書いたような筆跡で俺はイタズラだろうと思った。しかし、気づいてしまった。

「…!?これ……()()()?」

「ああ。成分を調べたところ、そこら辺にいるカラスの血だったんだ。警備の人がカラスの死骸をかなり見たって言っていたし、間違いはないだろう。」

「あー、つまり…この脅迫文を送った犯人を見つけてくれってことですね。」

「…話が早くて助かるよ。」

「ほぼ目が見えないってのに、探偵ごっこか…………見つけたら寿司食べさせてくださいよ。」

「ははっ、いいよ。」

「…………ちなみに、()()()()()()()()()()()()。」

「…違うよ。誓える。」

「ふーん。」

柴に無理難題を押し付けられたような気がするが、これほどアブノーマルの人生は辛いって遠回しに伝えてるのかもしれない。前の自分じゃ目を背けてただろうな。でも今はワクワクしている。俺が狂ってしまったのか。環境が変わったからなのかわからない。ただ、この熱に身を任せ、思いのままやってやる。さぁ、()()()()()()()()()()

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