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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

百合短編

言葉にするには、あまりにも

作者: 転生新語

他サイトでの企画で、777字ジャストの百合短編を書いてみました。

 自分の(くせ)()(きら)いだ。すぐに(から)まって(ほど)けなくなる。なら髪を伸ばさなければ手入(てい)れも(らく)なのに、そうしたくないのだから(われ)ながら(おろ)かしい。

 たぶん私は、背伸(せの)びをしたかったのだ。大人のような恋愛に昔から(あこが)れていて、()(たけ)()わないヒールを()いて。そして全力で走っては(ころ)ぶような恋ばかりで。そんな失恋のたびに、本当にベタだけど、よく髪を切っては泣いた。

 面倒(めんどう)な私の恋も髪も無くなってしまえばいい。そう思っては、また(おろ)かしい恋を()(かえ)す。そして今日も、やはり私は髪を切ってもらいながら泣いていた。


「まだ泣いてるの? ちょっとウンザリなんですけど」

「……(だれ)のせいだよ」


 私の(くせ)()(あざ)やかに切る、彼女は美容師だ。(おんな)()きで、これまで複数の客に手を出しては泣かせてきた。今は私が泣かされている。


「泣くような、(たい)したカットはしてないでしょ? 式は一か月後なんだから。当日は私が、素敵(すてき)な髪型にしてあげる」

「いいよ、気張(きば)らなくて。私の髪、貴女(あなた)みたいに綺麗(きれい)じゃないから」

「何、言ってるの! 私から見れば、貴女(あなた)(くせ)()の方が()きやすくて()えるんだから。美容師の結婚相手が、みすぼらしい髪型だなんて(ゆる)さないからね。私の(となり)に立つんだから、最高に(かがや)いてもらうわよ!」


 数多(かずおお)くの女子を泣かせてきた彼女が、最終的に(えら)んだパートナーが、なぜ私だったのか。彼女いわく、「貴女が一番、(あきら)めが(わる)かったから」だそうだ。何だよ、それ。もっと格好(かっこう)よく()かれたかったよ。


「あー、また泣いちゃって。ほらほら、(かがみ)の前で笑ってごらん。ただで髪を切ってくれる、こんな素敵(すてき)な私と(むす)ばれる感想は?」


 私は、これまでの恋を思う。(から)まっては(ほど)けなくなる、恋も(くせ)()も。(すべ)ては彼女に愛されるため、必要だったのかな。彼女に振り回されて腹立(はらだ)たしくて、そして(うれ)しくて(うれ)しくて。


「……ぐちゃぐちゃだよぉ」


 (から)まる私を彼女が(ほど)く。この幸福は、とても言葉にできない。

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