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ミーハー少女は推しを追いかけ回す

作者: 下菊みこと

「セルジュ様ー!」


「またきた…」


「セルジュ、せめて手ぐらい振ってやれよ」


「面倒くさい」


「お前なあ」


ナディア・ノエル・サロモン。サロモン公爵家の末っ子長女である彼女は、今一人の男性に夢中である。


セルジュ・ロジェ・テオフィル。テオフィル侯爵家の三男で、その実力から貴族学園に通う身でありながら魔術師団の第三部隊隊長を任されている。見た目も美しい彼を慕う者は多く、ナディアもその一人だ。


「ナディア様はセルジュと釣り合う家格だし、見た目も中身も可愛いし、お前にぞっこんじゃん。何が不満なわけ」


「ナディアが求めるのは〝セルジュ様〟だ。俺自身じゃない」


「捻くれてんなーお前」


平民出身の第三部隊副隊長ロベールは、素直になれない上司兼友人にやきもきしていた。だが、たしかにナディアのそれは愛や恋というより憧れに見える。それでも、ロベールはセルジュがナディア以外と添い遂げるビジョンが見えない。なんだか二人はとってもお似合いだと思うのだ。


セルジュはいずれ術師爵と呼ばれるこの国特有の特別な爵位を授与されるし、ナディアの家は珍しく恋愛結婚至上主義だし、二人とも今のところ婚約者がいないし。ロベールはセルジュの幸せを一友人として願っている。くっついてくれないかなーと今日も二人を見守っていた。


「セルジュ様!」


「ん」


「世界で一番愛しています!」


「そうか」


「その冷たい表情も素敵!もっとこっちを見てください!」


セルジュがナディアの方を向く。ナディアは胸を押さえて淑女らしからぬにやけ顔を晒した。


「好き!」


「そうか」


「愛してる!」


「ふーん」


「投げキッスして!」


してくれないだろうと思いつつもおねだりしてみたナディア。しかし意外なことにセルジュは投げキッスをしてくれた。単なる気まぐれである。


「あ、待ってキュン死する」


「キュン死ってなんだ」


「尊い…セルジュ様が尊い…」


「尊さならお前の方が上だろう」


「突然のデレ!」


きゃーきゃー騒ぐナディアと、なんだかんだ付き合っているセルジュはやはりお似合いである。ロベールは呆れ果てつつ癒されて…魔法銃を構えた。


「セルジュ!」


「わかった」


セルジュは素早くナディアを後ろに匿うと、突然襲いかかってきた反王族派のテロリスト達を魔法銃で次々と撃ち気絶させる。この魔法銃は死にはしないので遠慮なくバンバン撃てる。魔力が続く限りではあるが。


突然のことに追いつけないナディアだが、仕事モードのセルジュを初めて見て惚れ込んだ。セルジュはどんな時も美しいが、真剣な表情、しなやかな動き、場違いとはわかっていてもやはり尊い。


そしてセルジュとロベールの二人で大量に湧いたテロリスト達を捕縛した。二人なら勝てると思った彼らの負けである。


「しかしなんで俺達を狙ったんだこいつら」


「俺達ではなくナディアを狙ったんだろう。ナディアは王太子殿下の溺愛する可愛い従妹だからな。王太子殿下へのダメージを狙ったんだろう」


「うわあ卑劣ー。ナディア様、しばらく第三部隊の方で護衛しましょうか?」


「勝手に決めるな」


「是非!」


きらきらした目でセルジュを見つめるナディア。これはもう、セルジュがしばらくナディアの護衛をすることは確定である。そして、ナディアを本当の妹のように溺愛する王太子殿下からまたセルジュが意地悪されるのも確定である。


ついでに言えば、ナディアを溺愛する公爵家のご両親と兄達からも多分意地悪されるだろう。セルジュはため息をついた。ロベールは面白がって笑っている。


なんだかんだと危険も多い立場にいるナディアだが、セルジュがいる限りその表情が曇ることはないだろう。今日もナディアは推しであるセルジュを追いかけ回しては幸せを感じる。そしてセルジュは、困ったふりをしてそれを受け入れるのだ。

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