男騎士、地獄を見せる
「えっ?」
それを発したのは切られたはずの女であった。
「ど、い、う、こ、と、…、…」
8回、たった5文字の言葉を話す間に切られた回数である。しかも、その全てが均等なバラバラ加減で。
そして、段々と恐怖と痛みが味わってきたのか、言葉すら、いや悲鳴すら上げる事が出来ずに今も切られ続けられている。
「レ、レナ!」
同僚の女性の一人が切られている女性に駆け寄ろうとしたが、
「やめろ。」
そんな女性を止めたのはダンテだった。
「離してください。ダンテさん。なんなんですか?あれは?私達は何を見ているのですか?レナはどうなっているのですか?」
今もレナの身体はバラバラになったと思ったら、元通りになっている。そして、また一瞬にしてバラバラになる。そんなどう見ても異常な事が起きていた。
「これは幻術ですか?」
今度は同僚の男性が質問した。
「あみゃあーも獣人にゃら分かるはずにゃ。これは現実にゃ。かすかに香る血の匂いもにゃ。」
それに答えたのは同じ獣人であるペルである。
感覚の鋭い獣人しか分からないぐらいかすかな血の匂いがどんどんと濃くなっているのだ。まるでどんどんと怪我人が搬送されてくる病院にいるような不思議な感覚である。
「じゃあ一体!この光景はなんなんですか?!」
おかしな光景を見せられ続けられている状態にこちら側もおかしくなりそうになっていた。それは前の3人を除いた全員がそうなっていた。
「ただ切って治しているだけよ。」
「え?」
「だから、切って治している。それだけなのよ、これは。」
3人で最後にエルフのメリーが衝撃の事実を教えた。
理解できなかった。いや、言葉の意味は分かる。だけど、そんな事が出来るのか?出来たとしてこんな連続で可能なわけがない。もう既にこれが始まって5分は経った。ほぼ一回1秒で行われている。単純計算で三百回切って治していることになる。
「あり得ない……」
「そうよ!そんな事出来るわけないわ!」
その事実に3人以外の人達が言葉を失い、否定し始めた。
「だが、事実だ。」
「アレンはにゃ。私たちの中で一番の天才にゃ。」
「エルフとしてそれなりに長生きしてきた私でもここまでの化け物じみた事が出来る天才はいなかったわ。」
この冒険都市で最高戦力であるSランク冒険者の3人が肯定した。それでも、この事実を受け入れなかった。
「レナは大丈夫なのでしょうか?」
流石に色々と修羅場を乗り越えてきたのだろう偉い人は一番最初に事実を飲み込み、部下の安否を心配した。
「大丈夫?って言っていいんかな?はぁ、結構気に入っていたのだけどな。」
ダンテが曖昧に答えた。
「まぁ、心も体も怪我はないわ。二度と娼婦の仕事は出来ないでしょうね。」
メリーは断言した。
「ただ、二度とボスに逆らう事は出来ないにゃ。それが例え地獄への片道切符だとしてもにゃ。」
ペルは少し詳しく言って締めた。
自分の店で働いている子が二度と働けなくなる。でも、心にも身体にも異常は発生しないのになんでと思っている間に地獄は終わった。
「おい、今日はもういい。3人以外は帰れ。後お前らこいつの始末はいつも通りにあいつら頼め、いいな。」
「「「了解。」にゃ。」よ。」
それだけ言うと男の子は部屋から出た。




