5 過去
冬休み。健太が珍しく2人で遊びたいと言うから、俺の家でゲームすることにした。日が暮れてきて、「健太がそろそろ帰るね。」と言った後にこう付け足した。
「僕、里央のことが好きだよ。」
健太が言った言葉が信じられなくて、自分でも驚くぐらい間抜けな声が出た。
「は?」
俺の反応を予測していたかのように健太は笑いながら返す。
「ひどいなぁ。せっかく勇気を出して告白したのに。」
告白という言葉を聞いて実感する。きっとこの好きはLoveの方だろう。俺たちの関係が壊れるのが怖くて、茶化してしまおうかとも考えた。でも勇気を出してくれた健太に申し訳なくて、俺はきちんと告白への返事をした。
「ごめん。俺そういう風に考えたこt‥。」
「僕が男だから?それとも僕のこと嫌いなの?」
健太が俺の返事にかぶせてきた。急に両肩を捕まれて、壁に追いやられる。健太の初めて見る真剣な目にうろたえる。いつもの弟みたいなかわいさは消え、ドSが全面的に出てきている。なんだか責められているようで、思わず口ごもってしまう。
「いや‥。健太の事好きだし、男だからって言うか、まぁそうなんだけど、そうじゃないっていうか。なんて言うか。」
言うが早いが、健太が返す。
「でも里央ってそういうのに抵抗ないよね?前に3人で漫画とか読んだし。」
そうだ。俺は別に男同士の恋愛に批判的な考えは持っていない。むしろ裕也が昔、好奇心で買ったといっていた漫画を3人で読んだり、昔の友達に好きな子がいて妄想を聞かされたりしていたから、それに関する知識は豊富な方だ。でも自分が告白されるとなると話は別になる。
「抵抗はないけど、自分のこととなると別って言うか。」
はっきり言おうと思ったけど、健太の圧に負けて弱々しい声が出た。健太が尋ねる。
「それって里央が昔、女だったから?」