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2人のおかげで、本気で走ったらなんとか授業に間に合った。授業が終わって3人で教室に帰る。
「マジで助かった、ありがと。昼にジュースおごるな。裕也はコーヒーで、健太はイチゴオレで良い?」
「やった!ありがとー!健太もうけたな。」
「そーだね。でも僕、今日はココアの気分かな。」
「相変わらずふわふわな飲み物のむんだな‥。そんな飲み物ばっか飲んで太らないおまえが俺は怖いよ。」
裕也はそう言うと、大げさにおびえるふりをして俺の後ろに隠れた。裕也の姿に特に反応することなく健太が返す。
「いや、甘い飲み物のことをふわふわな飲み物って呼んでる裕也の方が怖いかな。里央もそー思うよね。」
俺は後ろに隠れている裕也をかばうこと無く健太に賛成する。
「確かに。ふわふわではないかな。」
「ひどい2人とも!俺を理解してくれないなんて!」
裕也が今度は大げさに悲しんでいるふりをした。健太はまたスルーして話を続ける。
「裕也が深夜に『オムライスって響きかわいいよな!』ってライン送って来なくなったら理解できる気がするな。あれのせいで僕は今日寝不足だよ。」
裕也は時々、訳の分からないことを話す。しかもそれを深夜に送ってくるから俺たちは、スマホの音に起こされる。昨日のラインで寝不足の俺は、またまた健太に賛成する。
「俺も昨日のラインは許せない。せめて健太との個チャでやれよ。」
「え!里央、僕を犠牲にするの?いやだよあんな悪質ラインに睡眠を邪魔されるなんて。」
「俺もパス。無視したら『マカロニと、エビフライと、かにクリームコロッケもかわいいよな!』ってメッセージと一緒にそれぞれの写真が送られてきたときは携帯割りそうになった。」
健太と俺は裕也のラインの相手をなすりつける。俺たちのこのやりとりは習慣化されたもので、その様子を楽しそうに見ている裕也は最後に笑いながら謝る。まぁ、お決まりってやつだ。
「ごめんって2人とも!あの事実に気づいたら、いてもたってもいられなくなって。次から控えるよ。あっそうだ。話変わるんだけど、おとしだまっておいしそうな響きじゃない?」
控えるどころか、また意味不明ことを言い出して「揚げ物とかにしたら、ふらいだまになるのかな。」なんていいながら、かき揚げの画像を調べている健太を横目に俺たちは呟く。
「だめだこれは。もう手遅れだ。」
「僕たちに裕也は救えない‥。」
お約束のように俺と健太はスマホを確認する。案の定、裕也からかき揚げの画像が送られていた。2人の声がそろう。
「「少しは、控えろ!!」」