1
妄想に妄想が詰まった作品なので、深く考えずに暇なときに読んでほしいです。
「一番、性別にこだわってるのは里央なんじゃない?」
あぁ、またこの夢だ。
この言葉が頭から離れない。
「そうだけど。そうじゃないんだ。いやそうなんだけど‥。うわぁ~~!」
モヤモヤする。部屋の中で1人叫んでお気に入りのクッションに顔を埋める。この言葉を聞くたびに考えてしまう。俺の勇気は報われないのか。そして、嫌でも思い出してしまう。
俺になった日のことを・・・。
大きなため息をついて思考をリセットする。暗いことばかり考えていては第2の人生が台無しだ。時計を確認する。学校に行く準備をする時間は5分しか残っていなかった。俺は、急いで準備を終えて学校に向かう。
「里央おはよー!」
教室に入ると、先に席に座っていた裕也が笑顔で挨拶してくれた。相変わらず乙女ゲームに出てきそうな顔と声をしている。
「ちょっと食パン加えて出直してくる。」
「え?」
間違えた。昔、友達とした乙女ゲームの知識がこんなところで仇となるとは。裕也がかっこよすぎて恋愛フラグを立てる準備をしてしまうところだった。どうにかしてごまかさなくては。
「いや、今日アンパン○ン見てきてさ、食パン食べたくなって。」
「確かに。アンパンマンって見てるとおなかすくよな~。」
危なかった。まさか、しょくぱん○んに助けられる日が来るとは。っていうか、裕也の返事やばすぎるだろ。アイツ絶対、水族館の後に寿司食べに行くタイプだ。そんなことを考えながら、裕也の1つ後ろにある自分の席に座った。すると裕也は俺に向き合う形で背もたれを抱き抱えて座り直した後、俺の顔をのぞき込んで言った。
「どうしたんだよ、にやにやして。なんか良いことでもあったのか?」
良い事なんて特になかったが、裕也と話すと安心して顔が緩んでしまう。今日は時間ギリギリに起きたせいで登校中もあの夢がちらついていたので、いつもの何倍も安心する。裕也がかっこいいのもあるが、ニヤニヤは多分安心したせいだろう。そう伝えても良いけど、夢の話はしたくない。不思議そうな顔をしている裕也をごまかすために俺は答えた。
「いや~。アンパン○ンが神回でさ。」
「あっ、1375話見てきただろ!あれは神回だよな~。」
裕也は「あ~おなかすいてきた。」と付け足して、俺の机にあんぱんの絵を描きはじめた。
こういった何気ない普通(?)の日常が嬉しい。俺はフツウなんだ。
幸せをかみしめていると後ろの席の椅子が引かれる音がした。