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勘違いから始まる吸血姫と聖騎士の珍道中  作者: 一色孝太郎
花乙女の旅路

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第三章第11話 三日月泉の危機

砂漠の旅も六日目に入った。真冬とはいえ昼間はたぶん 10 ~ 15 ℃くらいあるので暖かいのだが、夜中は何度なのかわからないほどの凄まじい寒さに凍えることになる。寝袋に入っていても寒いので革袋の水筒にお湯を入れて湯たんぽ代わりにしたほどだ。


「お、フィーネさん、あれがオアシス、三日月泉ですよ」


マルコさんが指さした先を見ると、確かに何かの建物が見える。


「あそこには、二家族が住んでいるんだ。そこに六歳の女の子と三歳の男の子の二人の子供がいるんだが、なかなかかわいい子でな。名前は確かウルファちゃんとダーギルくんと言ったかな」

「それは会うのが楽しみですね」


そんなことを話していると、徐々に建物が大きくなってきた。レンガ造りの家が 5 軒ほど建っていて、その建物の向かって右側に畑らしきスペース、そして三日月形をしたオアシスと並んでいる。


そして、私たちは集落の入口へと到着した。


「おかしいな。いつもなら出迎えがあるはずなんだがな。おーい、ハーディー! ヤザン! マルコだー!」


呼びかけるも返事がない。


「おーい! ラシードー!」


マルコさんが呼びかけるも返事がない。


「おかしいな。フィーネさん、ちょっと降りて手綱を握っていてくれるかい? 俺は中の様子を見て来よう」

「わかりました」


私はラクダさんにお願いして座ってもらうと地面に降り、そしてマルコさんが握っていた手綱を受け取る。


「じゃあ、ちょっと待っていてくれよ」


そう言ってマルコさんは集落の中へと走っていき、そしてすぐに血相を変えて戻ってきた。


「フィーネさん、聖職者だったよな! ちょっとこっちに来てくれ!」

「何かあったんですか?」


私はマルコさんに案内されて集落内の建物へと連れていかれる。すると、そこにはベッドに臥せる人たちの姿があった。


「これは……?」

「この集落の住人たちなんだ。なあ、助けることはできないのか? お金だったら俺が――」

「いえ。大丈夫です。マルコさんにはお世話になっていますし、やれるだけのことはやってみましょう」


私は一番近くのベッドで寝ている男の子を診る。明らかに息が荒く呼吸が浅い。熱もかなり高いように見える。


風邪か、インフルエンザ的な奴かもしれない。全員まとめて臥せっているという状況が妙ではあるが、とりあえずは病気治療魔法を試してみよう。


──── この子を蝕む病原菌よ、消え去れ。病気治療!


一瞬光に包まれるがまるで手応えがない。


「うーん、病気ではなさそうですね。この建物の人が全員この状況ということは、毒かもしれませんね」


──── 解毒!


お、効いた。あっさりと解毒できた。


「うん、やっぱり毒でした。じゃあ、全員まとめて解毒」


この建物で寝ている人たちにまとめて解毒魔法をかけて解毒してあげる。すると臥せっている人たちのみるみる顔色が良くなり、呼吸も落ち着いてきた。


「これでもう大丈夫ですよ」


私はニッコリ営業スマイルでマルコさんに声をかける。治療後の営業スマイルはもはやクセになってしまったらしく、意識しなくても自然とやってしまう。


「え? あ、はい。フィーネさん、すごいですね」

「それはどうも。他に患者さんはいませんか?」

「あ、多分あっちの家にも……」


こうして私はもう一軒の家の住人達の治療も行った。


****


「何とお礼を申し上げたら良いか。フィーネ・アルジェンタータ様」


私の前に集落の皆さんが土下座している。ここでも土下座文化なのか、と何とも不思議な気分で私はその光景を眺める。


「頭をあげてください。そんなことより、皆さんは毒に侵されていたようですが一体何があったんですか?」

「それがですね、昨日の昼過ぎくらいから突然バタバタと倒れる者が出てきまして。我々にも何が何だか……」


うーん、解毒魔法であっさり治ったということは毒を摂取した、ということで間違いないと思うのだけれど。


「昨日のお昼は同じものを食べましたか?」

「はい。我々は見ての通り小さな集落ですので食事は全員同じものを食べております」

「メニューは何でしたか?」

「ええと、肉と野菜を炒めたものでした」

「そのお肉と野菜はまだありますか?」

「はい。肉も野菜も干して保存しているのでいつも食べているものです。昨日の昼だけ特別になにか、ということはありません」


うーん、それだと毒が混ざりそうな余地はなさそうだけどなぁ。


「ちょっとこの辺りを見て回ってもよろしいですか?」

「もちろんでございます」


私は家を出ると集落の散策を開始する。


「ルーちゃん、どう思いますか?」

「え? ええと、あたしは、うーん? そうだ! リーチェちゃんなら何かわかるかもしれませんよ?」

「リーチェが?」


私はリーチェを呼び出す。


「ねえ、リーチェ。この集落に住む人が突然毒で倒れたみたいなんですけど、何かわかりませんか?」


リーチェが首をこてんと傾げ、それからあたりをキョロキョロと見回す。そして頭に手を当てて何かを考える仕草をしている。


そんな仕草もかわいい。やっぱりリーチェは世界一かわいいんじゃないだろうか?


そしてリーチェは泉のほうを指さしてから私に身振りで着いて来るように合図をする。


そうして泉のほとりに辿りついた私たちが見たものは、腹を出して魚が浮かぶ死んだ泉の姿だった。



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