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勘違いから始まる吸血姫と聖騎士の珍道中  作者: 一色孝太郎
白銀のハイエルフ

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第二章第32話 白銀の里

2020/05/18 誤字を修正しました

「ふむ。同胞を助けてくれたこと。感謝しよう。聖女候補のフィーネ・アルジェンタータ殿と聖騎士のクリスティーナ殿。儂はこの白銀の里の長老インゴールヴィーナ、こっちは息子のビョルゴルフルじゃ」

「フィーネ・アルジェンタータと申します。こちらから順にクリスティーナ、リエラ、ルミアと言います。よろしくお願いいたします」


とんでもない美女が自分のことを長老、と言って自己紹介してきたのだが、さすがに違和感は拭えない。そして私たちに射掛けて来たイケメンは長老の息子らしい。エルフというからにはご長寿さんなんだろうけど、一体何歳なのだろうか?


「リエラ、それにルミアよ。帰る里がないのであれば、この里での居住を許そう」

「ありがとうございます」


よし、とりあえずの目的は達成できた。あとは自分の目的だけだ。


「フィーネ殿とクリスティーナ殿には客人としてこの里への滞在を許可しよう。他に何かして欲しいことはあるか?」

「はい。ルミアより聞いたのですが、精霊との契約に興味があります」

「ふむ。なるほど。フィーネ殿は【精霊召喚】のユニークスキルを持っておる、という事で良いのじゃな?」

「はい」

「じゃが、この地で生まれ育っていない者が精霊と契約することはかなり難しいのじゃ。そして、そなたは少なくとも純粋なエルフ族ではないじゃろう? はたして【精霊召喚】を持っておったとしても契約できるかどうか。のう? フィーネ殿。そなたは何者なのじゃ?」


何者、か。難しい質問だな。私は少し考えてから回答する。


「私は吸血鬼なのですが、何故か成り行きで聖女候補なんてものをやっています」


きちんと話しておいた方が良いだろうと思って真実をしっかりと告げた。


だがその瞬間、インゴールヴィーナさんとビョルゴルフルさんが少し目を見開いて口を開け、そして顔を少し前に突き出す。「ハァ?」とでも言いたげな表情だ。


そしてこっちを呆れた目で見てきた後に二人で顔を見合わせている。


そして、少し苛立ったような様子でインゴールヴィーナさんが口を開く。


「ははは、そなたは随分と冗談が得意と見えるのう。闇の種族である吸血鬼が昼間から太陽の下を歩いて無事なはずがなかろう。それにその聖衣も吸血鬼には猛毒のはずじゃ。フィーネ殿、そなたは人間どもに何をされたのじゃ?」

「ええと、何をされた、とは?」

「ふむ、違うのか。ときに、そなたは【容姿端麗】のユニークスキルも持っておるじゃろう?」

「はい」

「その少し短いが尖った耳、そしてエルフ族のユニークスキルである【精霊召喚】と【容姿端麗】を神より与えられておる。つまり、それはそなたにエルフの血が流れている何よりの証拠なのじゃ」


なるほど。【精霊召喚】と【容姿端麗】はエルフ族のユニークスキルだったのか。そういえば【精霊召喚】はそうだってルーちゃん言っていたような気がするな。


「そして、そなたは我が里のハイエルフ達と同じ色の髪と瞳を持っておる。つまり、じゃ。そなたの先祖のどこかに我が里のハイエルフがおり、そなたは先祖返りした、ということで間違いないじゃろう」


あーあ、ここでも先祖返り認定された。って、あれ? ということは?


「ええと、もしかして私の髪と瞳の組み合わせのエルフはこの里にしかいない、ということですか?」

「うむ。その通りじゃ。なかなか聡いのう。それに、百歩譲ってそなたが特殊な吸血鬼だったとしてじゃ。そなたがその瞳を保っているということはあり得ないことなのじゃ」


うん? どういうこと?


私は首を傾げる。


「ふむ。吸血鬼のことも大して知らぬようじゃな。冗談でも吸血鬼を名乗るならもう少し知識をつけることじゃ」

「すみません。どういう事でしょうか?」

「吸血鬼はのう、産まれたばかりのころは我々エルフや人間どもと同じような瞳を持っておるのじゃ。そして吸血をして眷属を作ることで覚醒し、猫や蛇のような縦長の瞳に変化するのじゃ。吸血鬼は吸血せずに生きることは出来ぬ。おそらく一週間ともたないはずじゃ。吸血鬼は必ずやその衝動に流されて人の首筋に噛みつき、その者を眷属としてしまうのじゃ」


そういえばクリスさんを無理やり襲いたくなって、吸血衝動を無理やり我慢したらそのまま失神したことがあった気がする。


「儂の知る限り、そなたは 1 年以上に渡り人里に暮らしておるのじゃろう? つまり、そういう事じゃ。そなたは吸血鬼ではないのじゃよ」


どうしよう。ぐうの音出ないほど論破されてしまった。


「何、安心するのじゃ。そなたの過去に何があったのかは知らぬが、ちゅーにびょー、じゃったか? 無理せずゆっくりと治していけば良いのじゃ。エルフの血を引くそなたには長い時間が与えられておるのじゃからな」

「ええぇ」


なぜ教皇様から下されたその屈辱の診断を知っているのか。ぐぬぬ。


ただ、インゴールヴィーナさんも良い人だということはわかった。


でも、どうしよう。チートしましたなんて初対面の人に行っても信じてもらえないだろうし、論破された後だから余計に言い訳に聞こえるだろうし。


うーん、困った。


「さて、話を戻そうかの。儂が何者か、と問うたのはそなたはどこからきて何故精霊との契約を望んているのか、といったことを聞きたかったからなのじゃ。それが分からなければ儂はそなたを精霊との契約に挑戦させるわけにはいかぬのじゃよ」

「どうしてですか?」

「失敗したらやり直しができないからじゃよ。精霊樹に祈りと魔力を捧げ、そして精霊樹が認めた場合にのみ、生涯のパートナーとなる精霊を授けてくれるのじゃ」

「もし認められなかった場合、どうなるのでしょうか?」

「もう二度とここの精霊樹に近づくことはできぬじゃろうな」

「つまり、人生で一度きり、ということですか」

「うむ。その通りじゃ。そして、儂は今のそなたが精霊樹に認められるとは思えぬのじゃ」

「それじゃあ、自然に暮らしている精霊と契約することはできないんですか?」

「無理じゃ。精霊が契約できるのは一度だけ、精霊樹から生まれた直後のみなのじゃよ」


うーん、困ったな。どうすれば良いのだろう。


「急ぐ理由があるのなら、少しこの里の仕事を手伝ってみぬか?」

「お仕事、ですか?」

「うむ。そなたは聖女候補としては別格と言って良いほどの力があるようじゃしのう。その仕事が認められたならあるいは精霊樹に認められるかもしれぬ」


なるほど。この土地に貢献すると認めてもらいやすくなる、ということか。


「わかりました。やらせてください」


こうして私は里の仕事を手伝うこととなったのだった。


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