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勘違いから始まる吸血姫と聖騎士の珍道中  作者: 一色孝太郎
白銀のハイエルフ

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第二章第28話 温泉を探せ

2020/05/18 誤字を修正しました

2020/05/20 ご指摘頂いた誤字を修正しました。ありがとうございました

私たちは極北の地の玄関口であるシルバーフィールドの港町にやってきた。


ここ極北の地はどの国にも属していない大きな島で、シルバーフィールド以外にはいくつかの小さな村が点在しているだけなのだそうだ。


産業としてはほぼ漁業のみ、トナカイやアザラシを狩って食べることもあるそうだが他にこれといった産業はない長閑な場所だ。


そしてまだ 9 月末だというのに山並みは白く染まっている。なんでも、もう雪が降る日もあるそうで、あとひと月もすれば犬ぞりが必要になるらしい。


そして、11 月になると港は氷で閉ざされてしまうそうなので、閉じ込められる前に用事を済ませたいところだ。


「「「陸だー!!!」」」


船酔い三人組は無邪気に喜んでいる。普段真面目なクリスさんまであの調子ということはよほど船酔いが辛かったのだろう。


「聖女様がた、どうかご無事で。旅の成功をお祈りいたします」

「こちらこそ、ここまで送っていただきありがとうございました。目的を果たしたらまた戻ってきます」

「またのご乗船、お待ちしております」


私たちは船長さんに別れを告げて港町へと入る。


「ほら、そんなところで仲良くしていないでまずは宿を探しましょう」


私は(はしけ)に並んでお揃いのポーズで伸びをしている三人に声をかけると町へと()を向ける。


この町では特に歓迎の出迎えなどは無いようだ。


やはりブルースター共和国が過剰、じゃなかった特別だったのだろう。旅費の心配がないのはありがたかったが、あそこまで騒がれるのも困りものだ。


ただ、そのおかげでリエラさんを救出できたようなものではあるから、有名であるということは上手く使えばしっかりとプラスになる。


またブルースター共和国に用事ができた時は容赦なく使わせてもらおう。


ありがとう、ブルースター。またよろしく!


****


クリスさんが聞き込みをしてくれて、この町で一番高い宿()に泊まることになった。


そう、ホテルではなく宿だ。なんと、この町には VIP が宿泊するような高級なホテルが無いそうで、あるのは酒場併設の宿か、民宿になるそうだ。


その中でも一番設備の良い宿のツインルームを二部屋借りることになった。


私はクリスさんと、ルーちゃんはリエラさんと同室だ。やっぱりしばらくは親子で過ごさせてあげたいしね。


「これは、パイプヒーター、ですかね?」


金属の管が部屋の中をうねうねと通っている。


「なんでも、この町には熱いお湯が湧き出している場所が複数あるらしく、そこからお湯を引いて暖房や家事に使っているそうです」

「温泉!?」

「お、オンセン、ですか?」

「ええ、そうです。温泉です。クリスさん、もしかして、温泉を知らないんですか? 自然に湧き出た暖かいお湯に浸かって体を清潔にして、疲れを癒すんです」

「ええと、湯浴みのようなものでしょうか?」

「うーん、まあそんな感じですね。それで温泉から出たら牛乳かコーヒー牛乳を飲むんです」

「こ、こーひー?」

「フルーツ牛乳がいいという人もいますけどね。さあさあ、露天風呂を見に行きましょう!」

「ろ、ろてん?」


どうしたことだろう。なぜこうも話がかみ合わないのか。


「さあ、バスタオルを持っていざ出発です!」

「あの、バスタブのある宿はございませんでした。湯浴みでしたらそちらのお部屋で。お湯を貰ってまいります」

「うん?」

「ええ?」

「もしかして、共同浴場的なものはない?」

「はい」


な、何という事だ。これが孔明の罠というやつか。はめられた。


「じゃあ、町中にそういった施設は?」

「無いと思いますが、調べて参りましょうか?」

「いえ、調べに行きましょう!」


折角温泉が湧いているのに、温泉に入れないなんて、そんなバカな話があってたまるか!


私たちは町へと繰り出した。


「すみません。この辺りで露天風呂ってあります?」

「ろてん? なんですかそれは?」


話が通じない。露天風呂という単語は一般的ではないらしい。


「すみません。この辺りで共同浴場ってありますか?」

「共同? ん? あ、そんな身なりをしてそっち系の人? 悪いけど嫁さんいるからね。他の男を当たってくれ」


いやいや。春は売ってませんから。


「すみません。温泉に入れる場所ってありませんか?」

「オンセン? 何だいそれは?」

「ええぇ」


どうやら想像しているような温泉は存在しないようだ。日本だったら絶対に温泉観光が一大産業になっていそうなのに!


ぐぬぬ、かくなる上は。


「クリスさん。どうやら無いようですので作戦変更です。丁度いい源泉を探して野天風呂と洒落込みましょう」

「の、のてん?」

「そうです。住民の人が使っていない源泉を借りてお風呂に入るんです」

「え? いけません。そんな、若い女性が屋外で肌を晒すなど、はしたないですよ!」

「いえ、健康にいいし気持ちがいいんですよ? クリスさんも一度入ってみれば気持ちよさがわかるはずです!」

「そ、そうでしょうか?」

「そうです。それにお肌もすべすべになりますよ?」

「は、はあ……」


クリスさんが気の抜けたような返事をしている。


そんなクリスさんを連れながらも私たちは町の人達に聞き込み調査を終え、そして宿へと戻ってきた。


その結果、町中にもいくつか源泉はあることは分かったが、すでに別の目的で利用されているためそこに入ることは難しそうだった。


というわけで町の外、それも少し離れた場所の温泉に行くことにした。源泉は割とそこら中にあるらしく、近くまで行けば湯気が立ち上っているのですぐにわかるとのことだった。


「それじゃあ、温泉目指してしゅっぱーつ♪」

「「「おー」」」


三人のテンションが低いのは何故だ。解せぬ。


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