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勘違いから始まる吸血姫と聖騎士の珍道中  作者: 一色孝太郎
白銀のハイエルフ

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第二章第22話 狩猟祭り(5)

2020/08/21 ご指摘いただいた誤字を修正しました。ありがとうございました

「あー! 応援呼んでって言ったのに!おまえどうして呼ばなかったんだー!」


ルーちゃんが会場の隅で既にお酒を飲んでいるザックスさんを指さしてプリプリと怒っている。


「え、いや、それは」

「あたしがせっかく助けてやったのにー! なんでお酒なんて飲んでるのよ! これだから人間は嫌いだ!」

「まあまあ、ルーちゃん。それで、ザックスさん、なんで戻ってきてすぐに援軍を呼ばなかったんですか?」

「そ、その、す、すいませんでした!」


ザックスさんとその取り巻きと見られる男二人が土下座する。


あ、こっちでも謝るときに土下座する文化あるのね。


「あの、謝ってほしいのではなくて理由を聞いているんですけれど……」

「おい、貴様! フィーネ様が理由を聞かれているのだ。素直に答えろ」


クリスさんが剣を男の鼻先にあてて脅迫し始めた。


「ええと、最初はそのつもりだったんですが、その、会場に入ったら獲物の査定が始まって、そしたらそのまま忘れちまいまして……」

「はあ、まあ仕方ないですね。ですが、クリスさんがいなければ死者が出ていたかもしれないのですよ? 気を付けてください」


幸いなことに、森に入った選手たちは全員無事に戻ってきたそうだ。


「それでは、グーテン町長、後を頼みます」

「はい。お任せください聖女様。ところで、その、もしよろしければゴブリンの魔石を浄化していただけないでしょうか? 相応の報酬はお支払いいたしますので」


うん? 何のことだ?


「魔石の浄化ですか? 魔石って付与のしやすい石ですよね?」

「はい。そのとおりです。フィーネ様。魔石というのは魔物の体内からとれるのです。ただ、魔物の体内にある魔石には瘴気が宿っていまして、長い間触れ続けると瘴気に侵されて体調を崩したり、邪悪な性格になると言われています」

「なるほど?」

「そして浄化して瘴気を取り除いた魔石は付与師や錬金術師の方が魔法の道具を作る素材として売られていきます。また、一部の魔石は宝飾品としても利用されることがあります」

「ああ、理解しました。構いませんよ」


私はゴブリンの死体の解体現場に連れていかれる。胸のあたりが開かれおり、くすんだ緑色の小さな石が積み上げられている。


「これで全部ですか?」

「ああ、そうだ。さっさとやってくれ」


エプロンをしたスキンヘッドの男がぶっきらぼうに言い放つ。


──── はいはい、浄化っと


積み上げられた石が淡い光に包まれる。そして光が消えた後、魔石の色は少しだけくすみのとれた明るい色に変化していた。


「これで完了ですね」

「ああ。じゃあもう用はねえからあっちいけ」


むむ。どうも失礼な人だ。もう少し言い方というものがあるんじゃなかろうか?


私はクリスさんと一緒に貴賓室へと歩いて戻る。


「やはり所詮はハンターですね。ハンター達は全員あのような粗暴な輩ばかりでして、礼儀もモラルも知らないのです。ご不快な思いをされたとは思いますが、どうかお気になさらないでください。彼らに怒っても意味がありませんから」

「はぁ。いつものクリスさんなら剣を向けていそうなところでしたもんね」

「はい。ですが、相手はハンターですので言うだけ無駄なのです」

「そうですか……」


クリスさんがここまで言うという事は相当なんだろう。そんなことを思っていると、スキンヘッドの男が誰かと揉めているような声が聞こえてくる。


「ちょっと、浄化済みの魔石は報酬に入っていません。勝手に持っていかないでください。横領です!」

「いいじゃねぇか、減るもんじゃねぇだろ?」

「あなたが持っていったら減ります!」


あー、ほんとだ。どうしようもない人なのね。


「クリスさん、理解しました」

「はい。どうかハンターには近づかないようお願いします」

「わかりました」


触らぬ神に祟りなし。くわばらくわばら。


****


「さて、ゴブリン乱入事件も無事に解決したところで、狩猟祭りの結果発表に移りたいと思います!」


日が沈み、かがり火に照らされた会場に歓声が響き渡る。私は表彰式のプレゼンターとしてグーテン町長の隣に控えている。



「まずは第三位の発表です! 第三位は、銀貨 6 枚で落札されたアカシカを見事狩ったロン選手! ロン選手には、クラウブレッツ特産の最高級豚肉 3 kg と記念盾を進呈いたします!」


会場内に歓声が響き渡る。ロンさんが三位の表彰台に登り、町長さんが目録を手渡す。私は記念盾をロンさんに手渡す。


「ロン選手。お見事でした」


ニッコリ営業スマイル。ロンさんは顔を赤くしてニヤニヤしている。


「続いて準優勝の発表です。準優勝は、銀貨 9 枚で落札された猪を見事に狩ったウィリアム選手です! ウィリアム選手には、クラウブレッツ特産の最高級豚肉 7 kg と記念盾を進呈足します!」


またまた大歓声だ。ウィリアムさんが二位の表彰台に登り町長さんから目録を受け取る。私も記念盾を手渡し、営業スマイルとともに一声かけてウィリアムさんの健闘を称える。ウィリアムさんもわかりやすいくらいに顔を真っ赤にしている。


ふふ、かわいいものだ。


「さあ、お待たせしました! 優勝者の発表です。第37回クラウブレッツ狩猟祭り、優勝に輝いたのは!」


ダララララララ、と表彰式でよく聞くドラムの音が響き渡る。


「金貨 1 枚で落札された猪を見事に狩ったヤース選手です! ヤース選手にはクラウブレッツ特産の最高級牛肉 10 kg と記念のクリスタルトロフィーを進呈いたします!」


大歓声と、それに混じって困惑の声も聞こえてくる。


あれ? あのザックスさんのほうが高値で買い取られていなかったっけ?


まあ、いいか。それにしても、ルーちゃんは結局ダメだったのね。さっきは捕まえた鳥を上機嫌に見せてくれていたけれど、そんなに高値で取引されるものでも無かったのかな? あの鳥、名前は何だったっけ?


「なお、金貨 1 枚と銀貨 2 枚で落札された猪を狩ったザックス選手は、狩猟祭り参加規程に違反したため、失格処分となりました!」


会場が一気にざわつく。ああ、なるほど。ゴブリンから逃げてきたのに報告しなかったのがいけなかったのかな? まあ、いいか。


少し異様な雰囲気の中、町長が目録を手渡す。続いて私の番だ。


「ヤース選手。優勝おめでとうございます。折角ですので、こちらのトロフィーには私より祝福を授けましょう」


私は浄化の魔法を付与してトロフィーをヤースさんに営業スマイルで手渡す。クリスタルに付与するのは初めてだったが上手くいった。【付与鑑定】によると、どうやらクリスタルはガラスよりも付与の相性が良いらしし、実際トロフィー全体が淡く白い光を放っている。これなら何年かは付与の効果がもつんじゃないかな?


会場が大きくざわめく。ヤースさんは呆然とトロフィーを眺めている。


「な、な、なんとーッ! 聖女様が優勝トロフィーに祝福を授けてくださったーッ! ヤース選手、最高の栄誉を手にしました! これはヤース選手の今後の人生において誇りとなることでしょうッ! そして、この素晴らしい瞬間に実況として立ち会えたことを誇りに思いますっ! さあ、お集りの皆さん、盛大な拍手をお送りください。これにて! 第37回クラウブレッツ狩猟祭りは閉幕となります!」


会場が割れんばかりの拍手に包まれる。


あれ? ちょっとやりすぎたかな?


私たちは厳重な警備の中馬車で会場を後にし、ホテルへと戻ったのだった。


****


「姉さま、絶対査定おかしいです! ポトポト鳥が猪より点数低いとか、絶対あり得ないですっ!」


ホテルに戻ってからもルーちゃんは怒り心頭の様子だ。あまりにも怒っているのでホテルのシェフに聞いてみたところ、シェフも見たことがない鳥だそうでゲテモノ扱いされてしまった。


一応、ルーちゃんの名誉のために言っておくと、料理してもらったポトポト鳥は天にも登るほど美味しかった。あまりの美味しさにいつもはそんなに沢山食べない私もついお代わりしてしまった。正直、また食べたいので野宿する機会があったらルーちゃんにお願いしたいと思う。


うん、ルーちゃん残念だったね。時代がルーちゃんに追いついてないのだ。


悪は栄えず、といったところでしょうか。表彰台はモブの皆さんが独占しました。

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