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勘違いから始まる吸血姫と聖騎士の珍道中  作者: 一色孝太郎
白銀のハイエルフ

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第二章第10話 ブルースター共和国へようこそ

2020/04/22 細かな助詞、句読点の修正をしました。

2020/06/07 ご指摘頂いた誤字を修正しました。ありがとうございました

「姉さまは本当に練習熱心ですね!」


ルーちゃんが付与しては小石を投げ捨てる私の姿を見てそう言ってきた。


「そうですか?」


ポイッ


私は付与の終わった小石を投げ捨てる。


私たちはイルミシティを出発し、ブルースター共和国との国境へと向かっている。国境、といってもホワイトムーン王国とブルースター共和国の仲は悪くないらしく、交易のための馬車がそれなりの頻度で通っている。とはいえ旅客は多くないらしく、この乗合馬車の客は私たちだけだ。国境は山脈を越えるので、ブルースター共和国側に入ると少し涼しくなるそうだ。ブルースター共和国は美食の国とも言われているそうなので、実は楽しみだったりもする。


「姉さまは、どうして聖女様なのに付与師の職業も持っているんですか?」

「行きがかり上ですね」

「へ?」

「レベルアップしたくて勉強をしていたら、こうなったんです」


私はルーちゃんに親方へしたのと同じ説明をした。


「――と、いうわけなんです」

「なるほど~、魔法薬師になるための修業だったんですね! それにしても姉さまの王都でのご両親的ポジションの人かぁ、会ってみたいなぁ~」

「王都に行けば会えますよ」


ポイッ


私はルーちゃんと話をしながら付与した小石を投げ捨てる。


「姉さまのその【付与】って、何ができるんですか?」

「何かに魔法の力を与えられます。今やっているのは、小石に聖属性の浄化魔法を込めていますね」

「すご~い。【付与】って、どんなものにでもできるんですか?」

「そんなことはないですよ。宝石とか、金属なんかがメインですね。あとは、一部の特殊な魔物の素材にもできることがあると本で読みました。ただ、基本的に生物には付与できません」


それに、素材によって付与できる魔法の強さや付与のしやすさ、再利用できる回数などが異なる。もちろん、高レベルの付与ができて付与のしやすい素材は非常に高価で希少なものばかりだ。


「あとは、強い魔法を付与しようと思ったら、【付与】のスキルレベルをその魔法のスキルレベルと同じまで上げる必要があります。例えば、私が前に治療に関わった病気にミイラ病というものがあるんですが、それの治療ができるマジックアイテムを作るには【付与】と【回復魔法】のスキルレベルを 4 に上げる必要があります。あと、ただの石ころではダメでもっと高価な素材を使う必要がありますね」



実はこれがマジックアイテムが高価な理由だったりする。そもそも、こんな人材はまず出てこないだろう。王都の神殿でも【回復魔法】のスキルレベルが 4 の人は少ない。そのうえわざわざ【付与】を追加で鍛える人はまずいない。だって、【回復魔法】だけで十分に目の前の人たちを救えるのだし、【付与】に経験値を割り振るより【回復魔法】を上げたほうがより重症の患者さんを救える。


これが、親方の言っていた『頭のおかしい奴』という意味だ。私だって、最初から【回復魔法】が MAX になっているんじゃなければこんなことやらないだろう。


ちなみに、今までの説明で分かると思うが、この世界に付与師はほとんどいないそうだ。理由は簡単、強力なマジックアイテムを作りたかったら、その魔法のスキルレベルも上げなければいけないのだ。優秀な属性魔術師や治癒師になれたのに、わざわざ二倍の努力をして裏方の仕事をしたい人はまずいない。前線で戦えなくなった属性魔術師が、第二の人生で細々と小遣い稼ぎに作っているぐらいが実情らしい。


「ルミア。この想いこそ、フィーネ様が聖女たる所以なのだ。フィーネ様はご自身が救済の手を差し伸べられない者たちに道具や薬をお与えになることで、例えその場にいなくとも救済の手を差し伸べようとなさっておられるのだ」

「 姉さま! そうだったんですね! さすがです!」


ルーちゃんがものすごくキラキラした目で見てくる。


いや、そんな立派なもんじゃなくてレベル上げて魔物相手に無双したいだけなんだけどね。


****


「検問を行う! 乗客は馬車から降りて一列に並べ!」


ついに国境に辿りついた。この検問を抜ければブルースター共和国だ。


「む? 今日は随分と少ないな。ではそこの者から順にって、その服はまさか?」

「私は聖騎士のクリスティーナ。そしてこちらにいらっしゃるお方が聖女フィーネ・アルジェンタータ様、こちらが仲間のルミアだ。極北の地に住まう白銀のハイエルフの里を目指して旅をしている途中だ。入国許可を願いたい」

「おおおお! あなた方が! お噂はかねがね! たいちょー! たいちょー!」


大慌てで警備兵が走っていった。


「どうやらブルースター共和国にもフィーネ様のご活躍の噂は届いているようですね」


そしてこの後、検問所の警備隊長を名乗る男が出てきて散々に礼賛された挙句、ブルースター共和国観光案内本なるものまで渡された。


「こちらは、我がブルースター共和国の各都市の名産、見所などをまとめた書物です。大統領府より聖女様がお通りの際は是非献上させて頂きたいと仰せつかっております。どうぞお納めください」

「は、はぁ。では遠慮なく頂いておきますね」


本は高いはずなのにいいのか? それともこの国では本は安い? っていうか、大統領?


疑問を覚えつつも私は渡された本をクリスさんに預けると再び馬車に乗り込む。


「やはりこれもフィーネ様の人徳の賜物ですね!」


そう言って嬉々としながら馬車に乗り込んでくるクリスさん。ルーちゃんもそれに続く。


私の人徳がどうというよりも聖女という偶像を使ってブルースター共和国が何かしたいようにしか見えないけどなぁ。


なんとも微妙な居心地の悪さを感じつつも、私たちはブルースター共和国へと入国したのだった。


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