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勘違いから始まる吸血姫と聖騎士の珍道中  作者: 一色孝太郎
花乙女の旅路

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第三章第39話 それはとっても意味不明

2020/05/21 ご指摘頂いた誤字・文章を修正しました。ありがとうございました。内容に変更はございません

2020/08/29 ご指摘いただいた誤字を修正しました。ありがとうございました

「何故私の種族をそれほど気にするのですか? 私は私です。それではいけないのですか?」


私はベルードに問い返す。正直、ここまで気にされる理由が分からない。吸血鬼と素直に答えて良いのか、それとも何か別の意図があるのか、ここで失敗はできない。


何しろ私だけじゃない、三人の命もかかっているんだ。


「何故か、だと?」


少し怒気をはらんだような、答えが得られない事に対する苛立ちがあるのかもしれない。


あ、これはもしかして言葉選びに失敗した?


「貴様のような意味不明な存在を見れば気になるのは当然だ。最初はその服を見て人間の聖女かと思った。だがその耳を見れば人間でないことは明らかだ。かといってエルフやハーフエルフにしては耳が短いうえにその形も違う。そしてよくよく観察してみると貴様からはどことなく闇の眷属の匂いがするではないか」


お、そこまで分かっているのか。やはりベルードは只者ではないようだ。


「だが俺は貴様のような魔族を知らんし同族の雰囲気を感じない。それにはぐれの魔族が人間に紛れて聖女になったという話も聞かんしな」


ええ? 魔族って雰囲気で同族かどうか識別できるの? 何それすごい。


「そして喋っている時に見えるその犬歯を見て吸血鬼かとも思ったが、すると今度は貴様の瞳、そして太陽の下で何不自由なく動いているのも、聖女の証であるその聖衣とロザリオを身に着け、あんな大がかりな聖属性の魔力を使っていることがおかしい。貴様という存在はこの世のどんなものにも当てはまらん! そんな意味不明な存在を見て何者か、と問うことはそれほどにおかしいことか?」


ベルードが一気に捲し立てるようにその理由を説明してきた。


なるほどねぇ。私ってそんなに意味不明なのか。


あ、いや、うん。まあ、確かにそれはそうか。


「だから、貴様は部下と一緒では話しにくい事情があるのかと思い遠ざけるのを許可したのだ。さあ、答えてもらうぞ。貴様は何者だ?」


そういうことか。理由は納得したが、はたして信用してくれるのか。


「うーん、分かりました。私は吸血鬼です。たぶん……」

「多分?」

「その、今ベルードの言った理由と同じです。最近自分が本当に吸血鬼なのか自信がなくなってきまして……」

「……」


何だか呆れたような目で見られている気がするのだが気のせいだろうか。


「それで、貴様の瞳は何故縦長ではないのだ? 吸血衝動はどうした?」

「眷属を作らないからです。吸血衝動はありますが、たまにしか感じません。どうしようもない時は主に騎士の彼女が血を分けてくれます」

「なるほど。だが、貴様ら吸血鬼にとって人間など食料でしかないはずだ。何故そんなことをわざわざしている?」

「何故、と言われても理由はありません。私は他人を襲って無理やり奪うことなどしたくありません」


ベルードは「なるほど」と呟いてから少し考えると、次の質問を私にぶつけてきた。


「ではなぜ貴様は太陽の光に焼かれて灰にならないのだ?」

「生まれつき太陽の光を浴びると元気になる吸血鬼だからです」

「……なぜ貴様はその忌まわしい聖衣と聖なるロザリオを身に着けていながらその身を焼かれないのだ?」

「生まれつき聖属性の魔力を吸収して元気になる吸血鬼だからです」


なんだかベルードがイライラしているように見えるのは私の気のせいだろうか?


「……なぜ貴様は【精霊召喚】が使えるのか?」

「生まれつき【精霊召喚】のユニークスキルを持っていたからです」

「……バカにしているのか?」


あ、怒った。ちゃんと正直に事実を答えたのにこの反応はあんまりだと思う。


「私はちゃんと事実を話しました。それに納得するかどうかはあなた次第です。私はそういう存在なんですよ」


ベルードは私の言っていることを咀嚼しようとしているのか、無表情で押し黙っている。


これ以上この会話を続けても私はベルードにすんなりと納得できる答えを与えることはできないような気がする。ここは話題を切り替えたほうが無難かもしれない。


それに、例の厨二病のように意味不明な診断をされたらたまったものではない。


「ベルードは、この村の出身なんですか?」

「……昔、三年だけだが住んでいたことがある」

「この村は、魔族の村だったんですか?」

「いや、違う。魔族もいたが、色々な種族が住んでいた。人間以外が、だがな」

「じゃあ、あのお墓は……」

「俺の母親代わりだったダークエルフの女性の墓だ」

「そうでしたか。お参りしても良いですか?」

「……何故だ?」

「私たちの命の恩人のお養母様かあさまのお墓であれば、お参りする理由としては十分ではありませんか?」

「……そうか。好きにしろ」

「それでは」


私は自力で起き上がる。ぽかぽかな日差しの中で横になっていたおかげか、自力で歩ける程度には回復した。


「体はもういいのか?」

「はい。日向ぼっこをするとやはり元気が出ますから」


あ、しまった。ベルードが胡乱気な表情を浮かべてこちらを見ている。


「では、お参りに行ってきますね」


私はそそくさとベルードのもとから離れるとお墓の方へと向う。


「フィーネ様、お話は終わりましたか?」

「はい。大丈夫です。何もされていませんから安心してください」

「それは何よりです。どちらへ?」

「あそこのお墓にお参りをしようかと思いまして。あのお墓には彼の母親代わりの女性が眠っているそうですよ」

「なるほど。お供します」


私たちは墓標の前に跪き、祈りを捧げる。


「エルザさん、あなたの息子のベルードのおかげで私たちは恐ろしい魔物より命を救われました。あなたの息子さんは立派な男性に育っていますよ。ですから、天国で安らかにお眠りください」


命を救ってもらったことは事実なので、私は声に出して感謝の言葉を述べた。そしてベルードに善意から提案してみる。


「ベルード、エルザさんがアンデッドとなって迷わないようにお送りしましょうか?」

「……ああ」

「はい。それでは」


私はお祈りの姿勢のまま、今考えたそれっぽい呪文を唱える。


ついの眠りの時を迎えし者よ。我、フィーネ・アルジェンタータの名において、汝エルザの魂に救いを与えん。汝に天の祝福と永遠とわの安らぎを」


──── 葬送! それからついでに浄化も!


私はお墓に葬送魔法と浄化魔法をかける。ほとんど手応えが無かったのでもうこのお墓に魂は残っていなかったのかもしれない。だが遺体の浄化はきっちりできたはずなので、もうゾンビとなって出てくる恐れはないだろう。


ふと顔をあげるとクリスさんとシズクさん、それにベルードまでもが驚いた表情で私を見ている。


うん? 私また何かやらかした?


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