騎士団長の苦悩①
騎士団本部東棟
「隊長!、大変です」
「どうした?カイン」
「これを...」
部下が私に見せたのは先程、議会で可決された内容だった。
「国を滅ぼしたいのか?議会は」
魔王軍に立ち向かう為、国内白金冒険者全員を雇い、彼らに先行し、魔王軍の偵察を行う。
そして、騎士団全軍を挙げ、魔王討伐を行う。
ざっくり読むとこんな感じだ。
「この国の最高峰冒険者10人居ます。魔王軍関連についての依頼は危険度が高いため、星6位上のランク付けがされてます」
「最高で星10だったな」
「これ、完全に星10関連ですよね?」
「まあ、ギルド協会がどう対応するかだな」
正直、ギルドと騎士団は中が良くない。統率を取りつつ、上の命令により、任務を遂行する騎士団。民間人から依頼を受け、その依頼を達成した後、報酬を得るギルド。考えて方も、信念もバラバラなのに、『協力』なんて出来るのかね。
「どうします?」
「命令ならば仕方あるまい。遂行するのみだ」
「隊長!」
「逆らって、反逆罪に問われるよりはマシだよ」
「…わかりました」
「ちょっと、出かけてくる」
「どちらに?」
「ギルド」
街を歩けば、大体そこがどういう所だかわかる。帝国の首都アーガラは一見、賑やかで華やか街に見える。だが、そんなの見てくれだ。
裏町の地下では亜人種の奴隷商売にクスリの販売。これらは全て、貴族の嗜みの一部になってる。見つけ次第、検挙はしているものの、数が多く、追いつかないのが現状だ。膿を出そうとしても、次から次へと湧いて出てくる。繋がりのある貴族もあるが、所詮は蜥蜴の尻尾切り。
嫌気が差す。
「ダメだな。このような場面ルルベルには到底見せられない」
「酷い顔ですね。いい男が」
目の前に栗色の髪に黄色い目をした女が立っていた。
「ファナか」
「お久しぶりです。ギルバートさん、妹は元気にしてます?」