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イングラム侯爵の裏切り

 クリストフ殿下の嗚咽が響く。

 そこへ後方からイングラム侯爵と私兵の方たちがやって来た。

 どうやら気絶から目が覚めたようだ。

 

「殿下、いかがなされましたか。災厄の魔物は?皇女様の姿がお見えになりませんがいずこに?」

 イングラム侯爵が皇太子に駆け寄る。

 皇太子の矜持かクリストフ殿下は涙を拭いて立ち上がった。


「妹は、レナーテ皇女は聖女としての役割を全うして見事災厄の魔物を浄化し、この国の守り神であった水神と共に去って行った。そう皆に伝えよ」

「は?申し訳ありません、もう少し詳しくお願いいたします」

 そうか、気絶していたからイングラム侯爵たちは災厄の魔物が実は守り神だったことを知らないのね。

 皇太子が事の始終を侯爵に述べている間、私たちは離れた場所に避難した。


 ここから先はカーラ帝国が決めることであって、私たちが立ち入るべきではないからだ。

 私たちは私たちでこれからの事を話し合う必要がある。とは言っても私たちがする事といえばあとは帰国することだけなのだけれども。


 避難中レオとアーサーの怪我の具合を見るけれど、二人とも擦り傷程度で大したことはないようだった。

 

「アーサー、君の愛馬はどこだ?」

「俺のは崖の上だな」

「そうか、私の馬は近くには見当たらないし探すのは少し苦労しそうだな。さて、どうやってここから脱出しようかな」

 脱出?普通に帰路を行けば良いんじゃないかしら。

 帝国軍と一緒に。それが一番安全よね。


「少し乱暴だけどその辺りにいる生き残った馬を拝借して自分の馬を探すのが一番かな。でもそうするとディアが一人になってしまうな。そういえばディアはここまでどうやって来たの?」

「え、(神)馬で」

「その馬は?」

 今は上空を飛んでます。

「さ、さあ。ちょっと近くには見当たらないわね」

「そうか、じゃあやはり3頭は必要だね。ディア、私とアーサーとどちらと一緒に行動する?時間があればアーサーの馬を手に入れてから私の馬を探しに行くのだけれど、それぞれバラバラになって自分の馬を取り戻してから合流した方が速いからね」

「レオを一人にするつもりはないぞ」

「アーサー、時間がないんだ。これから帰国するのに出来るだけ良い馬がいた方が良い。君の愛馬はそれだけの価値があるだろう。場所が分かっている分君の方が早く動けるだろうから、ディアはアーサーと一緒に行動してくれ」

 待ってよ、レオを一人にするつもりは私だってないわよ。


「そんなに急ぐ必要はないでしょう?もう危険は去ったのだから」

「どうかな、むしろこれからの方が危険だと思うよ」


 ?


「君には一人で飛び出してしまったこと、それと先ほどでの水霊での会話など色々聞きたいことが山のようにあるからよく覚えておくように」

 ぎっくぅ。


「わ、私だってレオに聞きたいことが山のようにあるわよ!」

 なんでレオがレナーテの水霊の存在を知ったのかとか、災厄の魔物がなんで水属性だと分かったのかとか。なんでレナーテの水霊が本体だと分かったのかとか!


「そう、じゃあ後でたっぷり二人だけで話をしようか」

 ゆっくりとねとレオが囁く。


 あ、いや。それは遠慮したいかな~。


「アーサー、馬を盗(と)りに行くぞ」

 堂々と盗む宣言しちゃう王子もどうなのかしら。

 アーサーも嬉々として従っちゃうし。まあ、私も付いて行くけどね。三人ではぐれた馬を確保しに行くと、イングラム侯爵が私兵を引き連れて近づいて来た。

 

「ルーカス殿、この度はご活躍でしたな。貴殿がいてくれたおかげで助かりました」

 イングラム侯爵の登場に一瞬だけレオが眉をひそめた。が、すぐに胡散臭い笑みを浮かべて応対した。 


「いいえ、侯爵のおかげですんなり街も出れましたし、実際の所私はさほどお役に立てておりませんよ」

「ご謙遜を!帝国人であるワシでさえも知らない忘れ去られた道を知っていて、ここまで最短距離で駆け抜けてきたことだけでも大したことです。ぜひどこであの道を知ったのか教えて欲しいものですな。どうです?インディア国などに戻らずに、ワシの養子になりませんかな?」

 あら、レオ。凄い気に入られようね。

 しかしレオは丁重に断った。


「非常にありがたいお申し出ですが、私には勿体ないお言葉ですので」

「そうですかな?それは実に残念です。ところでその馬たちをどうするおつもりですかな?それは帝国軍の軍馬ですが」

「ああ、帰りには出来るだけ馬がいた方が良いと思いまして、はぐれそうになっていた馬を逃げない様確保していたのですよ」

「ほぉ、てっきりワシは逃げるおつもりなのかと思いましたぞ」

「ははは、なぜ私たちが逃げなければならないのです?」


「それは聡い貴殿でしたら簡単に想像がつくのではありませんかな。ワシの力を借りる時このような可能性も当然考えられたでしょう」

「・・・諸刃の剣でも背に腹は代えられませんでしたからね」

「大人しくしてくだされば手荒な真似は致しませんよ」

「どうでしょうね、大人しく捕まったが最後即座に殺されるのではないですか」

「ふはははは、本当に殺すには惜しいですな。大人しく私の養子にでもなれば助けてあげないこともありませんぞ」

「一生牢獄の中でですか?」

「さあ、それは貴殿の態度次第ですな」

 

 二人の会話についていけない。

 どうしていきなりイングラム侯爵は私たちを殺すこと前提に話をしているの?

 つい先ほどまであんなに好意的だったのに。


「クラウディアはあなたの知り合いの孫娘でしょう。彼女には手を出さないでしょうね」

 レオの言葉にイングラム侯爵は私の方を見た。


 私?


「そうですな、大人しくカーラ帝国で一生を終えると約束するのであれば命は保障して差し上げましょう。聞くところによると癒しの術が使えるらしいですからな。いなくなったレナーテ皇女の代わりに聖女に祭り上げるのに丁度良い。なんなら我が家が後見となりクリストフ殿下の第二夫人にでもして差し上げますよ」


 はあ!?何、第二夫人って!

 第一夫人だってお断りなのに。第二夫人なんて砂掛けて返してやるわよ。

 

「クリストフ殿下!これは一体どういうことですの!?」

 大声を出して遠くで指示を出していたクリストフ殿下に文句を言う。


 殿下は私たちの不穏な様子に気が付いてこちらに駆けてきた。


「侯爵、何をしている?なぜ彼らを包囲しているのだ?」

「殿下、この者達を帰国させてはなりません。この者達の口から我が国の守り神と聖女が消えたことが知れれば、我が国は他国から狙われます。ここで命を奪うか一生牢獄に入れるかしないといけませんぞ」

「何を申しておるのだ、侯爵。この者達はインディア国の筆頭令嬢とそれに準ずる子息たちだぞ。無事に返さねばその方が戦争の火種になるであろう」

 そうそう、その通り。

 ほんのちょっと前まで侯爵の事良い人だと思っていた自分がバカみたいよ。侯爵がこんなに自分勝手な思考の持ち主だったなんて。


「ならばその罪は全てワシが被りましょう。この者達を殺した後でワシの首をお刎ね下さい。表向きは災厄の魔物に殺されたことにして。なに、遺体は燃やしてしまえば死因など分かりはしません。インディア国にはこの国の保護者であるワシの首一つ持って謝罪をすれば、大貴族の子供といえど所詮は爵位のない子供。それ以上はインディア国もこちらを責めてはこんでしょう」

 

 バカ言うんじゃないわよ、レオはインディア国が誇る完璧王子なのよ、引退間際の老いぼれお爺さんの首が千個あったって釣り合いなんか取れないわよ。

 本当のことを言いたいけれど、言っちゃうと余計レオが危なくなるから言えない。


「いい加減にしないか、侯爵!そもそもこの者達は妹(レナーテ)の友人なのだぞ。彼らを我欲で傷つけたとあらば余はレナーテに顔向けできん」

「皇太子殿下は何も知らなかった。それで結構です。これは全てワシの独断。この老いぼれ一つの命でカーラ帝国が救われるのでしたら喜んで差し出しましょうぞ」

 私たちの命は差し出さないわよっ!


「私たちはレナーテのおかげで助かったのよ。そんな私たちがレナーテが守ったこの国の不利になることを言うわけがないじゃない」

「御嬢さん、あなたはまだ世の中というものを何も分かってはおらない。少しでも弱点を見せれば噛み付く輩はどこにでもいるもの。たとえインディア国が攻めてこなくとも不安を煽り内部崩壊を目論む者が現れたり他国が攻めてこないという保証はどこにもない。ワシはこの国を愛しておる。この国が危険に晒される芽はどんな小さなものでも摘み取らねばならん。幸いここにはワシら以外はいない。いかようにも言い逃れができる」


 侯爵の合図で私たちを囲んでいた私兵たちが輪を狭める。

 レオとアーサーが剣を抜いて構える。

 ああ、私も剣が欲しい。

 二人に後ろに追いやられて庇われる。


「侯爵、止めないか!第一クラウディア嬢は余の妻となる女性だ。そのような心配は傍から必要ない!」

 コラコラ、皇太子殿下どさくさに紛れて何勝手なこと言っちゃってるの?

 しかしそれを聞いた侯爵はほうっと相槌を打った。


「そうでしたか、殿下もそのおつもりでしたとはそれは都合の良い。それではクラウディア嬢だけは生け捕りに致しましょう。私も昔の知己の孫娘を殺すのは些か心が痛みますからな」

 嘘つけ!殺す気満々だった癖に。

 

「さあ、皆の者。あの二人を捕えるのだ。抵抗すれば殺しても構わん!」

 侯爵の合図で生き残った大勢の私兵がレオとアーサーに襲いかかっていく。


 一人また一人と確実に二人は敵を倒していくけれども、なにぶん人数の差が大きい。


「お前たち止めないか、皇太子命令であるぞ!剣を引けっ!侯爵、止めろと言っている!」

 皇太子殿下も止めようと頑張るが、そもそもがイングラム侯爵の私兵なのでいくら皇太子が止めようとも止まらない。それどころか侯爵の私兵によって遠ざけられてしまう始末。


「こいつら強いぞ、個人で行くな!囲め、同時に攻め込め。二人を分断しろ!」

 私兵の中でも上の立場であろう兵士が指示を出す。

 それを聞いた者たちがぐるりと二人を囲んだ。


 私も二人を助太刀しに行きたいのに、いつの間にやら私の背後に回った私兵の一人が私を後ろから羽交い絞めして二人から引き離されてしまった。

 レオやアーサーがそれに気づきこちらに助けに来ようとしてくれているのだが、その前に大勢の敵に襲いかかられて身動きが取れない。


 ええい離せ、このぉ。


 痴漢、変態、ロリコン、髭もじゃのくせに頭つるっぱげ野郎!!

 しかしどんなに頑張って暴れても、兵士の腕から抜け出すことは出来なかった。

 せめて足でも踏んでやろうと右足を上げた瞬間、視界の隅に赤い光が散った。


 レオの眼前で炎の魔術がさく裂したのだ。

 魔術師もいたのね!

 思わず目を瞑ったレオの背後から敵の兵士が剣を突出し、レオの右わき腹を貫通した。

 レオの身体がぐらりと揺れる。

「レオ!」


 アーサーが敵を打ち払いレオの傍に駆け寄る。

 アーサーに支えられながら、レオは襲いかかる敵を振り払っていた。

 脇腹からは赤い血がどんどん滲み出していく。

 

 アーサーもレオを庇いつつ動くせいで敵から攻撃を受ける回数が増えている。

 剣だけなら人数差があっても互角以上に戦えるのに、魔術師がところどころで火魔法を使ってくるせいで二人の傷が増えていく。

 アーサーも変わらず敵を倒していくが、振り回す腕や足から血がとめどなく流れている。


 やばいわ、このままだと確実に二人がやられてしまう。

 私がなんとかしないと。


 私は足の力を抜いて倒れ込んだ。私を羽交い絞めにしていた兵士が慌てて私を抱き起こす。

 私は潤んだ瞳で訴えた。


「ここは怖いわ。私はクリストフ殿下の将来の妃ですのよ。こんな怖いところに一人でいるなんて耐えられません。あなた、私を殿下の傍に連れて行って下さいませんこと?きっと褒美の品が出ましてよ。私からも良かったらこれを差し上げますわ」

 付けていた指輪の一つを差し出して握らせる。

 賄賂が効いたのか兵士は少し逡巡した後で私の肩を抱いて殿下の傍まで歩いて行った。

 

 よし。

 

 私は出来るだけか弱いふりをしてヨロヨロと歩く。

「殿下、ご令嬢をお連れ致しました!」

 兵士は自分の手柄とばかりに大声で報告する。

 殿下は侯爵に向けて制止していた声を上げるのを止め、こちらに向き直った。


「おお、クラウディア嬢。よくぞ連れて来てくれたな」

「はっ!」

「殿下」 

 私はフラフラと倒れんばかりに皇太子殿下の胸の中に崩れ落ちた。

「怖かったであろう、何こんなもの余がすぐに止めさせるから少し待っているのだ」

 ぎゅっと抱きしめられる。

「はい、殿下」

 私を捕まえていた兵士は殿下に引き渡すと私から離れた。


 私は殿下の胸にしなだれかかりながら、左手で殿下の腰に差してある剣を引き抜き、殿下の脇をくぐって素早く背後に回った。


「皆止まりなさい!イングラム侯爵これが見えないの!?」

 私は殿下の首に剣を突き付けながら叫んだ。


「なっ、貴様何をしている!」

「誰も動かないで。レオとアーサーから剣を引きなさい。引かないならあなたたちの大事な皇太子殿下はここで死ぬことになるわよ!」

「ク、クラウディア嬢?」

「ごめんなさいね、クリストフ殿下。二人が無事解放されたらあなたを解放しますから」

 小声で殿下に告げる。


「さあ、どうするの?イングラム侯爵!」

「ふん、剣を持ったこともない小娘が格好だけつけたところで何が出来る!」


 私は無言で剣を後ろに薙ぎ払った。

 こっそり私の後ろから近寄ろうとしていた先ほどの私兵がどうっと倒れた。


「残念ね、侯爵。私剣の覚えはあるのよ。甘く見ていると次はあなたの大切な皇太子殿下が同じ目に合うわよ。さあ、二人から剣を引きなさい!」

 それでも動かない侯爵に私はクリストフ殿下に向かって剣を振り上げる。


「待て!お前たち引けっ、引けっ!」

 侯爵の合図で二人を囲んでいた私兵たちが引いて行く。


 その後には血で真っ赤に染まった二人が見えた。

 二人とも立っていられるのが不思議なくらいの傷の量だ。


 レオ!!

 アーサー!!


 クリストフ殿下の首に剣を突き付けながら侯爵に要求する。

「馬を2頭ここへ用意しなさい」

 侯爵が兵に命令し馬が用意される。


「二人をその馬に乗せて。早くっ!下手なことをしたら皇太子殿下の命はないわよ。乗せたなら全員この場から離れなさい!もっと、もっとよ。そう、そのままそこから動かないように。神馬!」

 空で人間たちの醜い争いを傍観していた神馬を呼ぶ。

 神馬はゆっくりと旋回して地上に降りてきた。


『何だ』

「私と殿下を乗せて」

『・・・よかろう』

「さあ、殿下。この馬に乗ってください」

「この老馬は一体どこからやって来たのだ?乗れと言うが、こんな老馬に二人も乗ったら潰れるのではないか?」

「大丈夫です」

 恐る恐る乗る殿下の後ろに素早く私も乗る。


「待てっ!要求は呑んだのだから殿下は置いていかんか!」

 侯爵が遠くで吠える。

 私は鼻で笑ってやった。


「返したらその場であなたは私たちに襲いかかるでしょう。大丈夫、あなたたちが大人しくここで待っていればちゃんとあなたたちの大切な皇太子殿下は返して差し上げるわ。戻って来るのを大人しく待ってなさい。その代わり約束を破って私たちの後をついてきたらその場で殿下を殺すわよ」

「侯爵、言うことを聞くのだ。良いな!」

「はっ」

 悔しそうに私を睨む侯爵を後にして私たちは出発した。

 レオとアーサーは乗っていることだけで精一杯だったので、神馬に頼んで二人の馬を誘導してもらった。

「むちゃを・・・するな」

 アーサーが弱弱しく諌めてくる。

 それはこちらのセリフよ!

 レオはすでに顔が真っ青で息も絶え絶えだ。

 急がないと。


 侯爵たちの姿が完全に見えなくなった所で、皇太子殿下が口を開いた。

「すまなかった」


「殿下のせいではないことは分かっています。それに私も殿下を人質にしてますから殿下を責められる立場ではありません。ご無礼をお許しください。こうでもしなければ二人を助けることが出来なかったものですから」

「構わない。そもそもが余の実力不足によるものだ。レナーテを犠牲にしなければ災厄の魔物も退けられず、さらに臣下を従わせることも出来ないなど皇太子として失格だ」

「殿下はこれからのお人です。殿下を慕って忠誠を誓う臣下もこれから出て来ることでしょう」

「そちに傍にいて欲しいと言うのは無理か」

「無理ですね」


「そうか」

「すみません」

「構わぬ。レナーテを失ったショックがでかすぎてそちにふられたことなど些細なことにしか思えん」

 殿下がやせ我慢をして笑っている。半分は本気でしょうけれど、なにせ兄バカだったから。


 遠目に白馬と黒馬が見えた。


 あれは、レオとアーサーの愛馬だわ。

 

『我が呼んでおいた』

 まあ、神馬なんて気が利くの!


「レオ、アーサー二人の馬がいたわよ!」

 私が声を掛けるが、二人から返事は来ない。


「レオ」

 振り返るとレオの身体がちょうど馬からズリ落ちるところだった。それを支えようとして手を伸ばしたアーサーの身体も一緒に地面に落ちた。


「レオ!アーサー!!」

 神馬を止め二人の元に駆けて行く。

 二人の身体は血で真っ赤に染まり顔色は青白い。今にも死にそうだ。


 出血多量だわ。

 早く回復魔法を掛けないと。

 ここまで来ればたとえ侯爵が追いかけて来たとしても魔法を掛ける時間位稼げるだろう。


 私は二人の間に入り、同時に回復魔法を掛けた。


『前にも言ったがそなたの魔力で瀕死の者を治せるのは一人だけだ。同時に回復魔法を掛けてもこのままでは二人とも治る前にそなたの力が尽きて二人共死ぬぞ。そなたは選ばなければならぬ。どちらを助けるのかを』


 神馬が私の前に来て告げる。


 どちらを助けるのかですって?


 そんなの決まっているわ。

 私はアーサーからもしもの時はレオを助けろと言われた。

 私もアーサーにレオを助けると約束した。


 だから私はレオは絶対に助ける。


 それこそ私の命を懸けてでも。

 私の魔力で両手が銀色に光り輝く。

 

『よせ、何をしている!』

 神馬が私のしていることを察して止めようとしてくる。


『馬鹿者!死ぬ気か!』

 なんと言われようとも私は止めるつもりはない。

 

 私一人の魔力では一人しか助けられないと言うのであれば、私の命を魔力に変えよう。

 私の全てを魔力に変えて、二人のことを助けてみせる。

 

 私の命が力となって指先から二人に注がれていく。

 みるみるうちに二人の傷が塞がれていく。


 レナーテがバカねと笑っている姿が見えた気がした。

 ええ、そうね。私はバカだわ。

 こんなギリギリになってもやっぱりどちらも選べない。 


 だって私は二人のことを愛してるから。

 よくばり結構、我儘上等!


 私は二人共助けてみせる!


 全身が熱く燃えた後、ポロポロと空に向かって私の身体が剥がれ落ちていく感覚がした。


 魂が崩れ落ちて空に溶けて行く。

 手が空を掴む。その掌が指先からポロポロと崩れていく。


 私は全ての力を使い果たすとゆっくりと地面に倒れた。


 私の両脇では死の気配が去った二人の身体が横たわっている。


 ああ、この格好子供の頃三人で夜空を見上げた時と一緒ね。

 

 ねえ、見て。レオ、アーサー。星があんなにも近くにあるわよ。手を伸ばしてみて、きっと今度は届くはずだから。 


 私はほほ笑みながら目を閉じた。




添削しまくっていたら投稿が遅れてしまいました<m(__)m>

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