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レオの作戦

 それにしてもレオは一体どこから帝国軍を調達してきたのかしら。そう思っていたら、後ろからイングラム侯爵が大声を上げながらやってきた。

 なるほど、イングラム侯爵の私兵ね。


「皇太子殿下をお救いするのだ!我に続け!」

 昔取った杵柄がうずくのか、兵士を率いて敵陣に突っ込んでいる。


 はっ、そうだ。レオに伝えないと。

「このまま突っ込んで行ってはダメよ。あの人たちは災厄の魔物に操られているらしいの。うかつに近づくと感染するらしいわ」

 レオは私の言葉に馬の足を止めた。

 ふーんと前方を見つめている。


「それでその肝心の災厄の魔物はどこにいるんだい?」

 え、知らないわ。

 レナーテを見つめるけれど、レナーテも首を横に振った。


「私たちがここにたどり着いた時にはすでにあの者たちが操られていて襲いかかってきたのですが、災厄の魔物の姿は誰も見ておりません」

「そう。でもこれだけの人数を遠隔操作するのはさすがに難しいんじゃないかな。姿を見せないだけで案外近くにいるかもよ。試してみようか。イングラム侯爵!」


 レオは馬の頭を変えて、まだ声を張り上げている侯爵の元に行った。


「災厄の魔物をあぶりだしましょう。手配していた者たちの準備は良いでしょうか?」

「言われた通り準備は万端ですぞ。すぐにでも発動できるでしょう」

「では、その者たちを前へ」

 レオの言葉に従って、白い服を着た一団が前に出てくる。


 え、誰この戦闘に場違いな集団は。


「教団の人たちよ」

 レナーテが私に教えてくれる。

 教団?なんで教団の人たちが戦闘に入るの?もしかして浄化の力を持っているとか?

 黙って見つめていると、侯爵の号令で一斉に教団の人たちが敵に向かって手を突き出した。


「射て!」

 白服集団から炎が飛び出て敵前方の胸のあたりに炎が列になって浮かび上がっていた。


 炎の魔術だわ。

 炎自体は決して大きくはない。多分少し熱い思いを我慢すれば突破できるだろう。

 しかし敵の軍団は明らかに勢いをなくして後退していく。


 その隙にレオたちは皇太子の軍を救助した。


「クラウディア、お兄様が怪我をいているわ。お願い治して」

 レナーテがクリストフ殿下を支えて叫ぶ。

 大変。

 慌てて走っていくと、殿下は脂汗を流しながら脇腹を押さえていた。


「何、少し端を刺されただけだ。こんな傷大事ない」

 やせ我慢は男の勲章ですからね。

 私は手をかざして殿下の傷を塞いでいった。


「そちにふさわしい奇跡の力だな」

 ハイハイ、殿下ちょっと黙ってましょうね。

 怪我した時くらい口説くのは止めましょう。


 簡単に応急処置をして辺りを見回す。

 戦況は魔術軍団のおかげで簡単に優勢になった。

 操られていた者たちは炎に怯え段々円を小さくして後退していた。

 

「ねえ、レナーテ。どうして教団の人が魔術を使えるの?」

「カーラ帝国では魔術を使える人は教団に入るのが決まりなのよ。そっちの国でもそうでしょうけれど、カーラ帝国でも年々魔術を使える人が減ってしまっていて、保護のためにね」

 ああ、やっぱりカーラ帝国でも魔術は不要の物扱いなのね。せっかくの異世界なのに悲しいわ。


「殿下!ご無事でしたか。助けに参りましたぞ」

「ありがとう、侯爵。そちの忠誠は忘れない」

「はっはっは、ワシの手柄にしたいところですがな、実はこの若者に頼まれましてな。あの魔術師軍団を連れてくるよう進言したのもこの若者です」

 侯爵がレオを前に出す。

 レオが?

「ほお、そちは確かルーカスという名であったな。助かったぞ。よくぞこの苦境に来てくれた」

「お役にたてたようでしたら何よりです。私としても突然飛んで行った小鳥を追いかけにやってきたまでですから」

 ギロリと瞳で睨まれる。


 ひ~怒ってる。当り前だけど怒ってるぅ。


 そろ~と逃げ出そうとしたところをアーサーに襟首を掴まれて動けなくなる。

 そうだった、こっちにもいたんだった。

 いや~ん。ごめんなさい。


「そういえば、これからどうするの?」

 こういう時はすかさず話題を変えるべし。

 魔術軍団のおかげでこちらに余裕が出来たけれども、いつまでも炎で牽制出来るものでもない。


 するとレオは黙って敵の様子を見て、

「そろそろしびれを切らした魔物が現れるんじゃないかな」

 と言ってきた。

 てっきりこのまま逃げるのかと思っていたけれど、良く考えたら魔物に操られている人たちもなんとかしてあげないといけないものね。味方同士で戦ってしまったから両方に甚大な被害が出てしまったけれど。


 レオの言葉を裏付けるように、炎に怯えていた兵士たちがパタパタと意識を失って倒れて行った。

 そしてその奥で黒い靄が立ち上った。


 あれが災厄の魔物?


「レナーテ!」

 クリストフ殿下がレナーテに声を掛ける。

「はい!」

 呼応するようにレナーテの手から浄化の光が災厄の魔物に向かって一直線に飛んでいく。

 しかし大量に魔力を使ってしまった後だからなのか、レナーテの魔力は災厄の魔物の前に霧散した。


「そんな。もう一度!」

 レナーテの手から再び光がほとばしるけれども、結果は同じだった。


「ゲームではこれだけ魔力が残っていれば余裕のはずだったのに。どうして」

 レナーテの呆然とした呟きに被さるように、今まで壁として宙に浮いていた炎も災厄の魔物の一振りで消え去った。

 炎が消えると同時に倒れていた兵士たちが再び起き上がる。

 

 ゾンビリターンズ。


 やばいわ。

 魔術師たちも再度炎を出して牽制しようとするが、それより先に災厄の魔物が大量の水を放出して魔術師たちをなぎ倒していった。


 残ったのはゾンビ兵と親玉の魔物。

 レナーテの力は通じない。

 どうしたら良いの?


 レオが右手を挙げた。

「構え。射て!」

 その号令に合わせて弓矢隊の火矢が災厄の魔物に向かって飛んでいく。

 

 しかしその火矢はすべて災厄の魔物の体に触れた瞬間火が消え、弓だけが地面に落ちた。


「ふーん、これもダメか」

 レオが感心したように呟く。

 やめて、敵に感心なんてしないで。


 ガシャガシャガシャと操られている人たちが迫ってくる。


 味方の兵が緊張しながら刀を構える。

 下手に時間をかけると自分たちも操られてしまう。


 ここはやっぱり今のうちに退却した方が良いのではとレオを見るけれど、退却するそぶりは見せない。

 何度か火矢を災厄の魔物に向かって放つけれど、結果は同じだ。


 レナーテも何度も打つけれど効き目はない。


 全滅!?そんな言葉が頭をよぎった。




ブクマ&評価&感想ありがとうございます。

いやぁ、前回ディアの役立たずっぷりを叩かれるかなぁと思っておりましたが、やはり叩かれましたね。

感想よんで、うんうん私もこのディアに腹が立ってると同意しておりました。

hahaha。

この回の主役はレナーテなので基本ディアの活躍はさいごにならないとありません。すいません。 

主役のディアは今はわき役です。

最終回でなぜこの最後になったのかは書いていきますが、2部は1部以上に叩かれ覚悟で書いております。ふふふ。


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