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ファーストキス

 来世というレオの言葉に引っかかった。

 なによ来世って。まるで今世は不幸になること決定みたいね。


「私とアーサーがいるんだから、今世だってレオを不幸にはさせないわよ」


「そう?じゃあ私のお嫁さんになってくれる?」


 チャカした言い方だからレオが本気じゃないのは分かる。

 でも、そのふざけた物言いの中にレオの本気が混ざっているのが感じられた。


「私がレオのお嫁さんにならないとレオは不幸なの?私やアーサーがレオを好きでどんなに大切に思っていても?」


「君が手に入らないのなら、私の心は凍えたままだろうね」


 レナーテから聞いたゲームのバッドエンドが頭に浮かぶ。

 そんなバカなと思いながら私はレオに聞いた。


「もし私がレオじゃない人を選んだら、レオはこの世界を破壊する?」

 普通ありえないだろう。笑って否定されると思ったのに、レオは考え込んだ。


「そうだね、君が私の傍からいなくなってしまったら、私はまた君と出会う前の生きているか死んでいるのか分からない灰色の世界に戻ってしまうだろうから、生きている実感を持つために暇つぶしに世界征服でもするかも知れないね」


 嘘でしょ、どこの世界に暇つぶしの為に世界戦争を始める人がいるのよ。

 あ、ここにいたか。

 いやいやいや、ダメでしょ。


「冗談よね」

 そうであって欲しい。


「もちろん冗談だよ」

 ニコッと例の胡散臭い笑みでレオが答えた。

 それを見た瞬間スーッと血の気が引いた。


 ダメだわコレ、間違いなくレオはやるわ。

 一人で世界を相手に戦争を始めるわ。

 それをきっかけにまた昔のように世界戦争が始まってしまう。


 あまりの大事に気が遠くなりそうになるところを踏ん張って堪えた。


「分かったわ、私レオのお嫁さんになる!」


「本気?」


 120%本気よ!


「だって私がレオの傍にいないとレオは不幸になってしまうんでしょう。そんなの私もアーサーも望んでやしないもの」


「アーサーはどうするの?」


「アーサーは私が傍にいなくても幸せになれる人だから大丈夫よ。それにアーサーなら祝福してくれると思うわよ。レオってば、私やアーサーの気持ちを少し軽く見てるところあるわよね、私やアーサーがどれだけレオの幸せを願っていると思ってるのよ。私たちはお互いを犠牲にしてでもレオを生かそうと思うくらいレオが大切なのよ。それはレオが王太子だからってだけじゃなくて、私もアーサーもレオが大好きだからよ」


「同情?それでも私は構わないよ。君が私を選んでくれるのなら。そのかわり何があっても私は君を一生離すことはないけど、その覚悟はある?」


 だからもー、このひねくれ者は!!


 立ち上がって、ゴン!と座っているレオの頭をグーで叩く。


「誰が同情よ、恋愛感情が丸っきりない男とボランティアで結婚する趣味はないわよ!」


 (いたぁ)ーっとレオが頭を抱える。

 あ、あら。そんなに痛かった?ちょっと力入れすぎちゃったかしら。


「大丈夫?」

 心配になって顔を覗き込むと、レオが私の二の腕を掴んできた。


「ひゃっ」

 バランスを崩してレオの方に倒れこむと、真剣な目をしたレオと目が合った。


「本当に、本気で私の婚約者になってくれるの?」

 レオの碧色の瞳が月の光でキラキラと輝いている。

 とても綺麗。


「ええ、なるわ。んっ」

 二の腕を引かれてレオに軽くキスされた。

 えええええ!

 目を丸くしてレオを見ると、レオはほほ笑んで立ち上がり私の顎をレオの綺麗な指で軽く持ち上げて、今度は上からキスをしてきた。


 月明かりの下でファーストキス。

 相手は完璧王子様って、まるで物語のヒロインみたいじゃない?


 私はレオのキスに合わせるようにそっと瞳を閉じた。




ブクマ&評価&感想ありがとうございます。

なんだかゴールっぽく見えますが、まだゴールにはなりません。 

ハイ。

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