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 皇宮での夜会は1週間後なので、それまで予定通り他の貴族の夜会にも出席することにした。

 マリーは帝国での滞在が延びたことを喜び、私を着飾ることに余念がなかった。

 今回のテーマは前回から一転して気高く華やかにということらしく、深紅のドレスが選ばれそれに合せて化粧も施された。

 

 本日の夜会はリューベック公爵家で開催された為、王女であるレナーテも参加していた。

 最初こそよそよそしく挨拶を交わしたものの、時間がたつとレナーテは大勢の貴族の子息たちに囲まれてアップアップしていた私をさりげなく救い出してくれた。


 はー、ありがとうレナーテ。あんなに大勢の男性に囲まれることが今までなかったものだから本当に助かったわ。レオやアーサーに助けを求めたくとも二人とも私以上に貴婦人たちに囲まれているから身動き取れないし。こういう時モテる女性はサラッと躱すんでしょうけど、インディア国ではモテなかったからやり方がいまいち分からないわ。

 私がお礼を言うと、レナーテはキッと私を睨みバルコニーまで引っ張っていった。


「別にあなたを助けたわけじゃないわよ。彼に近づく口実が欲しくてあなたを呼んだのよ。さ、早く私をレオン様の元へ連れて行って。私今日レオン様が参加するって聞いたからわざわざ来たのよ。それなのに最初に軽く挨拶しただけで後は全然彼と話が出来ないのよ。あなたも私の気持ちを知ってるんだから、少しはレオン様との仲を取り持ってよ。彼に近づきたいのに次から次へと女たちが彼に群がって来るから全然近寄れやしないのよ。こんなんじゃ彼を口説き落とせないわ。あ、またあの女私のレオン様に馴れ馴れしく触ってる。キー!」


 生でキーって言う人初めて見たわ。


「悪いんだけど、それは出来ないわ」

「何でよ、同じ転生者でしょ、少しは協力してよ。あなたが間に入ってくれればレオン様の側に私がいても不自然にならないわ」

「いや、それが駄目なのよ」

「何でよ」


 私は仕方なくレナーテがイングラム侯爵家から去った後の出来事を話した。



 レナーテは三人での話し合いの後、実はお兄様に内緒で出てきたからバレる前に帰るわと言ってすぐに馬車で帰っていった。

 

 レナーテを皆で玄関で見送った後、レオに笑顔で肩を叩かれた。


「クラウディア、少しお話しようか」


 え、ワタクシハナニモハナスコトアリマセンワヨ。

 嫌な予感がして逃げようとした私の襟首を捕んでレオは説教部屋(応接間)に直行した。


 いやぁ、アーサー助けてー!


 しかしアーサーもレナーテのことで怒っていたようで、肩を竦めただけで助けてくれようとはしなかった。

 レオが滞在延ばすの許可したのって思いっきり説教(このため)するためじゃないわよね。

 えーん、私悪くないよー。


 レオにたっぷりと私の迂闊さを頭に叩き込まれてようやく解放された。

 頭の中がレオの説教の言葉で一杯だ。もう何も入らない。


 そりゃ転生もゲームも知らないレオやアーサーからしてみたら、いきなり私の命を狙ってるかも知れない人物とホイホイ二人っきりで会ってたって知ったら怒るのも無理はないけれど、私も一応聖女様は大丈夫なんじゃないかなって思ったし、もし聖女様が転生者なら水入らずで話したいなって思ったから最初からレオやアーサーを呼ばなかった訳で。

 私なりにちゃんと考えてから行動してるのに。


 ぶぅと膨れていたら、アーサーがぽんと頭に手を乗せてきた。


「俺もレオもお前が心配なんだ。イングラム侯爵はいい人だが所詮カーラ帝国の貴族だ。いざとなったら向こうの味方になるだろう。ここでは味方はないに等しい。出来る限り勝手な行動は慎んでくれ。もしあの聖女が敵だったなら俺たちは同じ敷地内にいるのにお前をみすみす敵の手に落とす所だっただろう。頼む」


 アーサーが切なげに懇願してくる。

 そうか、そうよね。


「ごめんなさい」

 私は素直に謝った。


「私の言葉は頭に入らないのにアーサーの言葉にはずいぶんあっさりと謝罪するんだね、ディア」

 レオ様再度お怒りモード。


 違うのよ、これはそう北風と太陽よ。

 北風にピューピューって吹かれて寒いなぁって思ってたらホカホカ太陽が包み込んでくれたものだから、ついホロッとね。


 ちゃんとレオの忠告も頭に入ってるから許して!


「クラウディア。あの聖女と話したのは災厄の話だけ?」

 え?

「もっと私たちに言ってない何か別のことがあるんじゃないのかい?」


 えーと、それはきっと転生のこととかゲームのこととか、よね。

 でもこれは言えないわよね。言っても良いけど多分信じて貰えないし。二人に頭がおかしくなったって思われるのは嫌だな。


 レオの言葉にアーサーまで疑惑の目で見てくる。

 あー、どうしよう。


「実は、あるわ」

 仕方ない。こうなったら言うしかない。


「何?」


 レオとアーサーが私に注目する。


「レナーテは以前レオの絵姿を見たことがあって、レオに一目惚れしたんですって。だから今回レオの偽装もすぐに分かったらしいわ。なんとかレオと結婚出来ないかって相談されたわ」


 嘘は言っていない。ちょっと所々変えているだけだ。


 レオとアーサーがなんとも言えない顔をしている。


「そう、で君はその相談になんて答えたのかな?」

「え?私は部外者だから何も」

「へえ」

 レオが黒い笑顔で近づいて来る。

 あら、あら、あらららら。

 圧力に押されて壁際に追いやられる。


「君を好きだと言ってプロポーズしている私を好きだと言ってくる女性がいるのに、君は部外者だと言い張るんだね。先程の説教同様私の気持ちも君の頭の中に入っていないなら、身体に覚えさせるしかないけれどどうする?」

 どうする?ってどうするの?

 そんなに色っぽい瞳で見られても無理無理無理。

 頭の中はショート寸前!


 ギュッと目を瞑ると目の下にチュッと口づけされた。

 思わず目を開けると、レオの碧色の綺麗な瞳とぶつかった。

 

「アーサーがここにいて良かったね。でも次忘れていたらこんなのじゃ済まさないからね」

 小さく囁いてレオが私から離れていった。

 私はズルズルと床に崩れ落ちた。


 ヤバいわ。腰が、抜けちゃった。

 その後立ち上がるのに数分を必要とした。

 

 前世の事を誤魔化すにしてもこれは選択ミスだったらしい。今後のために良く覚えておこう。



「・・・そんな訳でレナーテの手助けをすると私の身が持たないから出来ないの。ごめんなさい」

 私が謝罪するとレナーテは私の頬を左右にミヨ~ンと引っ張った。


 いひゃいいひゃい。


「それは私に対して自慢してるのかしら?」

 違う違う、そんなつもりじゃないから。

 限界まで引っ張られてから離された。

 あー痛かった。

 まだヒリヒリするわ。


「レオン様本当にあなたが好きなのね。あなたレオン様に何したの?虹恋(ゲーム)の再現でもしたの?」

「そんなのしてないわよ。ヒロインじゃないんだから、イベントだって起きないし。言ったでしょ私たち幼なじみなんだって」

「本当に?初対面の時帽子が飛んでレオン様の前に偶然落ちて、周囲で花吹雪が舞ったりしなかった?」

 初対面は普通だったし、再会した後も確かに周囲は花壇だったけど私確かレオの事殴って逃げたわね。


「レオン様がやせ我慢してるときにあなただけ見破って慰めたりしたとかは?」

 さあ?レオが無茶をする前に私とアーサーが殴ってでも止めるしなぁ。


「レオン様の本当の気持ちをあなただけ理解したとかしなかった?」

 ???

 レオンの考えなんて複雑すぎて私には分からないわねぇ。


 私の返答にレナーテは頭を抱えた。

 

「なんでこんなポンコツをレオン様は好きになったのかしら。やっぱり惚れ薬とか飲まされたんじゃないかしら」

 失礼ね、そんなもの飲ませた覚えはないわよ。私の煎れたお茶は飲ませてるけど。


「まあいいわ、正当なヒロイン相手にするよりあなたの方が隙がありそうだもの。私はめげないわ」

 ブレないレナーテに私は疑問をぶつけた。


「レナーテは前回レオンと話してゲームのレオンと違うなって思わなかったの?」


 レナーテはレオに近づいている女たちをハンカチを噛んで睨みながら答えた。

「え、違うのは当たり前でしょ。私だってゲームの聖女と違うしあなただってゲームのクラウディアと違うんだもの。レオン様だって違って当然でしょ」

「恋心は消えなかったの?」

 ゲームと違うのに?

 私の問いに呆れたようにレナーテは見た。


「あなた、私のレオン様への恋心を甘く見てるんじゃなくて。私の彼への気持ちはそんな生半可なものじゃないのよ。現実の彼がゲームの彼と少し位違ったからって何だというの?肝心なのは私が彼を愛していると言うことなのよ。どんな彼だって私は愛することが出来るわ。そして彼の深い愛を受け止められるのも世界で私だけなのよ」

 そ、そうなんだ。


「私の言っている事が分からないって顔してるわね。じゃあ聞くけどあなたゲームのアーサーが好きだったわよね、現実の彼を見てゲームで好きだった時の気持ちはなくなった?」

「それはないわね、むしろ現実のアーサーの方が格好良いもの」

「でしょ、それと一緒よ。違いがあるのは当然よ、だって決められたゲームの言葉だけじゃないんですもの。返ってくる言葉だってシナリオライターが書いた言葉じゃなくてどれもこれもレオン様本人の生の言葉なのよ。一言一言が新鮮で嬉しいわ」


 キャラ愛もここまで極めればもはや純愛といっても良いかもしれないわね。


「後はお邪魔虫さえ退治すればハッピーエンドなんだけど。ねぇ、やっぱりあなた災厄の生け贄になる気ない?」

 折角感動した私の気持ちを返せ!

「全くないわよっ!」

「冗談よそうムキにならないで。あ、ほら。あなたの好きなアーサーもさっきから色んな女性にダンスに誘われてるわよ。止めなくて良いの?」

 レナーテが指さした方を見ると、確かにアーサーはとてもグラマラスな美女と一緒に踊る所だった。

 レオは上手くダンスの誘いを断っているようだった。レオ流石ね。少しはアーサーにその処世術を教えてあげれば良いのに。


「妬かないの?」

「別にダンスくらいで妬いたりはしないわよ」

「ふぅん。あなたって良く分からない人ね。レオン様とアーサー本当はどちらが好きなのよ」

 そんなの私が知りたいわよ。

「じゃあ、質問を変えるわ。あなたがピンチに陥ったとき助けを求めるのはどっち?」

 え?ピンチに陥った時?何それどんな状況?

「どんなでも良いわよ。悪者に囲まれたでも崖から落ちそうになるでも」

 う~ん、悪者に囲まれたらとりあえず自分でやっつけようとするかな?

 私がそう答えるとレナーテが殴ってきそうになったので、慌てて崖の方を想像してみた。


「アーサーかな」

「ほら、やっぱりあなたはアーサーの方が好きなのよ」

「え、違う。違う。私がアーサーを選んだのは、もしその崖が崩れそうになった時レオを巻き込むわけにはいかないから消去法でアーサー」

 

 レナーテが片眉を吊り上げた。


「本当に厄介な思考の子ね。それじゃあベタな奴行くわよ。川でレオン様とアーサーが溺れていたらあなたはどちらを助ける?助けられるのは一人だけよ」

「それはもちろんレオよ」

 これは即答ね。


「え、あなたレオン様のこと好きなの?」

「もちろん好きよ。幼なじみだもの。そうじゃなくてアーサーと約束してるの。もし一人しか助けられない状況になったらレオを助けるって。それにアーサーの事だからアーサーを助けてもすぐにアーサーはレオを助けに行くだろうから、やっぱりアーサーを助けることはないわね」


「あなたたちって」

 レナーテが頭を抱えた。

「厄介な関係ね」

 そうね、私も自分でそう思うわ。 




ブクマ&評価&感想ありがとうございます(^_^)

画面直りました。親切にも教えて下さった方がいらっしゃって。ありがとうございます(^_^)

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