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アーサーとお出かけ

 翌日イングラム侯爵と食事をした後、私はアーサーと二人で街に出かけた。

 本当はマリーと二人で行くはずだったのだけれども、女の子二人で異国の街に出るなんて危険だからダメだとレオに言われ、アーサーが付いて来ることになった。

 それならレオも一緒に行かない?と誘ってみたけれど、イングラム侯爵と話がしたいからとやんわり断られた。

 レオは本当にいついかなる時でも抜け目がない。侯爵から世間話にかこつけて帝国の情報を手に入れるつもりだろう。

 レオが残るのならアーサーにレオに付いていた方が良いんじゃないかと進言してみたけれど、屋敷内の危険と街の危険では圧倒的に街の方が危険だからこちらに付いて行くと言われた。


 アーサーが付いて来ると知ったマリーは、それなら私は遠慮しますとなぜか一緒に行くことを辞退されてしまい、結局アーサーと二人だけで行くことになってしまった。


 最初の予定では馬車で行くつもりだったのだけれど、マリーは行かないと言うしそちらの方が身軽だからとアーサーの愛馬に二人乗りで行くことになった。


「どこか行きたい場所があるのか?」

 アーサーに言われて少し考える。


「雑貨屋さんとかアクセサリー屋さんとかが見たいわ。皆にお土産を買う下見がしたいの」

「分かった」


 そう言うと、アーサーは私を自分の馬に乗せ、自分も軽々と乗ってきた。

 目の前でアーサーの長い脚がふわっと広がったかと思うと、すぐ横にアーサーの逞しい胸が来た。

 レオに白馬がとても似合うように、アーサーにも黒馬が良く似合っていた。


「昨日までずっと走りっぱなしだけど、休ませなくて良いの?」

 私が馬の心配をすると、アーサーが笑った。


「俺の愛馬(マクシミリアン)をバカにするなよ、全力ならまだしもあんなゆっくりな進行でバテたりなんかしないよ。むしろ走り足りないくらいさ。な、マクシミリアン」

 アーサーが馬の首を撫でると、ぶるるるるっとマクシミリアンも答えた。

 なら良いのだけど。それにしても仲が良いわね。


「ただ、確かにちょっと心配なことがある」

 アーサーが真面目な顔で呟いた。

「何?」


「クラウディアの重さにマクシミリアンが潰されないかが心配だ」

「もうっ!」

 怒って拳をアーサーに振り上げるが、簡単にアーサーの大きな掌に握りこまれてしまった。


「ははは、冗談だよ。クラウディアの重さなんかマクシミリアンにとっては羽みたいなものさ。じゃあ、出発するぞ。舌噛むなよ」

 そんな初心者みたいな失敗しないわよ。

 キュッとアーサーの胸の服を掴むついでに爪で軽く引っ掻いてやった。イテッと言っていたけど知らんぷりした。

 

「まったく、お前は猫か」

 お返しに右手で頭をぐしゃぐしゃに撫でられた。

 あー髪がぁ。せっかくマリーが綺麗に編み込みしてくれたのにぃ。


 アーサーのバカ!


 アーサーの愛馬に乗りながら流れる景色を見ていたら、アーサーが頭上で話しかけてきた。

「なあ、クラウディア」

「何?」

「ここはカーラ帝国だ」

 分かってるわよ。

「休戦状態とはいえいつ何があるか分からない。もし俺とレオの身に何か起こったら、お前はレオを連れてここからすぐに逃げてくれ」

「アーサーはどうするの?」

「俺ももちろん逃げるさ。ただどちらか一人しか助けられない状態になったら、迷わず俺を見捨ててレオを助けてやってくれ」


 アーサー。


「分かった。じゃあアーサーも私かレオのどちらかしか助けられない状態になったら、私を見捨ててレオを助けてね」

「それは・・・」

「アーサーも約束してくれなきゃフェアじゃないでしょ」

「・・・分かった、約束する。その代り恨むなよ」

 つんと人差し指で額をつつかれる。

 やーねー恨むだなんて。


「思いっきり恨むに決まってるでしょ!恨んで恨んで幽霊になってアーサーがお爺さんになって死ぬまで耳元で恨み言を囁き続けてあげるわよ」

「それは無理だな」

 なんでよ。


「お前が死んだら俺も死ぬからな」

 

 OUCH(アウチ)


 不意打ちはダメだと思うのよ。

 アーサーの事だから口説くつもりで言ったわけじゃないのが分かる分、心臓に突き刺さる。

 顔が真っ赤になって何も言えなくなって俯いてしまう。


「どうした?クラウディア。酔ったのか?」

 精悍な顔が覗き込んでくる。


 いや、今はちょっと放っておいて。


「大丈夫。大丈夫だからちょっと離れて」

 胸をグイッと押し返すと頭を掴まれて逆にアーサーの胸に押し付けられた。

 ひえぇぇぇぇ!


「具合が悪いのならしっかり俺に掴まっていろ。我慢出来なかったら俺の服に吐いてもいいぞ。今急いで止められる場所を探すから」

 ぎゅうっと頭をアーサーの大きな掌で押さえつけられているせいで、アーサーの心音まで聞こえる。

 トクン・トクンと規則的に聞こえるアーサーの心音を聞いているとなんだか心が安心した。


 アーサーの背中に手を回し目を瞑る。


「・・・クラウディア、寝たのか?」

 アーサーの低い声も気持ちが良い。


 私達二人で子供の頃から散々バカやって一緒にレオに怒られたりしたけれど、いつの間にかアーサーはこんなにも人に安心を与えられる人になっていたのね。


 私も子供の頃と比べたら少しは成長したかしら・・・?

 

 ・・・・・・。


 きっ、きっとどこか見えないところが成長してるはずよ、うん。

 そうやって自分を慰めていたら、アーサーから発生するマイナスイオンのおかげでいつの間にか本当に寝てしまっていた。


 街に着いたぞと揺り起こされて、初めて自分がアーサーの腕の中で寝ていたことに気が付いた。

 ヤバいわ、アーサーの服に涎とか垂らしてないわよね。


 手で触って確認してみると大丈夫なようだった。ホッ、セーフ。

 馬を止めるとアーサーは一人で軽々と馬から飛び降りた。


 アーサーに手を取ってもらい私も馬から降りる。

 トンと地面に足が付いて持って貰っていた手を離すと、アーサーは黙って私を見下ろしその空いた手で私の頭をまた撫でた。


 え、何?


 そして何も言わず馬を預けに去って行った。

 

 えっと、今の一体何だったのかしら??? 



読んで頂きましてありがとうございます。

ブクマ&評価&誤字連絡&感想を下さった皆様ありがとうございます(*^_^*)

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