ギル先生にお目見せ
私が万歳していると、ギル先生か不思議顔で近寄ってきた。
「どうしましたか?クラウディア嬢。あなたがそんなに騒ぐのは珍しいですね」
「あ、申し訳ありません。でも先生私魔力感知できました!」
「え、本当ですか?ちょっとやってみて下さい」
「はい!」
私は体中の魔力を集めて右の人差し指に動くようにイメージする。
30秒経過。
1分経過。
3分経過。
私の指先からポワッと銀色の小さな光が出た。
「おお、こんなに早く!なんて素晴らしい!」
ギル先生が顔を真っ赤にして興奮している。
エリオットもクーさんすごーい!と拍手してくれた。
「あなたはいずれ私を超す魔術師になるかも知れませんね。こんなに早く魔力感知出来た生徒も初めてですし、こんなにスムーズに魔力をコントロールした生徒も初めてです」
いやぁ、10割神馬のおかげです。
「最近他の生徒の成長も著しいですし。予算も下りることになりましたし、あなたはまるで魔術学科の救いの女神ですね」
そんなに褒められると照れちゃいますよぉ。それに他の生徒の成長は皆の努力の結果であって、私のおかげではないですよ。
「いえいえ、本当ですよ。クラウディア嬢が入科してからここ最近急に皆魔力感知がスムーズに行くようになったんです。これはあなたが幸運の女神である証拠ですよ」
ん?ここ最近?
クルッと神馬を見る。
神馬はあらぬ方向を見て誤魔化していた。
やっぱり神馬のしわざね~。
大方美味しいご飯貰うお礼のつもりでさっきみたいなこと軽く皆にもやってたわね。
だから皆も率先して神馬にご飯上げてたのかぁ。
正体がバレたとは思えないから、皆も多分軽いジンクス気分だったんだろうけど。
神馬にご飯上げたら魔力感知しやすくなるよみたいな。
全く神馬は食いしん坊なんだから。
「あなたは光属性です。その魔力を極めれば重症の人でも助けられるようになるかも知れません。是非頑張ってください」
「はい、ギル先生の為にも頑張って魔術は世の中にとって有益なものだと証明します!」
ギル先生あっての魔術ですからね!
「・・・あなたは、本当にいつも人の事ばかりですね。少しはご自分の事を最優先に考えられても良いのですよ。皆があなたの優しさに甘えてしまっては、あなたが誰かに甘える隙がなくなってしまうでしょう。クラウディア嬢はエリオット君達とは別の意味で心配で目が離せない生徒ですね」
優しくギル先生がほほ笑む。
美人だわぁ。
ギル先生ってたおやかだけど芯はしっかりしてるし優しいし包容力があるわよね。
さすが攻略対象者。冴えない魔術学科の中で唯一ファンクラブを持つ先生なだけはある。
それにしても自分では優等生だと思っていたのに、エリオット達とは別の意味での問題児だったとは。
ショックだ。
そういえばゲームでもヒロインがギル先生に目が離せませんねって言われてたシーンがあったっけ。
ギル先生の攻略の仕方はまず魔術に興味を持って、そして実際に魔力を手に入れることだった。この2つが揃わないと魔術学科に入ってもまず攻略が始まらない。
その上で先生との恋愛ゲージを上げるには、自分の魔力を増やし続けることが必須だったんだけれども、これが実に地味な作業だった。
魔術学科に行く → 訓練を選ぶ → 一日が終わる。
無課金だと大体これを永遠に繰り返す。
私は面倒くさいから課金して魔力ドリンク買って終わりにしちゃってた。
そして魔力がある一定値を超えるようになると、念願のイベントが発生する。
ヒロインが疲労でぶっ倒れるのだ。
目が覚めると目の前にギル先生がいて、軽くお説教をされる。
すみませんと謝罪するヒロインだけどギル先生の目は優しくて、頑張り屋のあなたから目を離したらどうなってしまうか分からないから目が離せませんね。と言われる。
このセリフがギル先生と恋愛モードに入るスイッチだった。
ヒロインの目が離せないは甘い意味を含んでいるけど、私の目が離せないは問題児扱いだから。意味合いが天と地ほども違うわね。
これがヒロインとライバル令嬢の埋められない差というものなのね。