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魔力感知が出来た!

「行くわよ、予定通りに」

 私が答えるとレオが片眉を上げた。


「誰と?」

「一人よ。お母様が行けなくなっちゃったから」

「一人で!?ディアみたいなか弱い女の子が一人で行くなんて危ないよ」

「か弱くないわよ」

 自慢じゃないけどその辺の鍛えてない男子生徒なら余裕で叩き伏せられるわよ。


「そう、じゃあここから抜け出してみたら?」

 顔の横に両手を置かれてどちらからも出られなくなる。

 しゃがむのもレオとの距離が近すぎて難しい。

 困った顔の私を覗き込みながら、レオが囁く。


「ディア、カーラ帝国の噂知らないの?」

「噂って?」

「ここ最近災害が多くて、ほんの数年前もイナゴの大群が現れて一つの村を飲みこんだらしいよ」

「嘘っ!」

 大量のイナゴ。ひいいいいぃぃ。


「その時帝都にもだいぶイナゴが紛れ込んできたみたいだけど。ディアはそんな国に行きたいんだ」

 行きたくない、無理。無理ぃ。

 涙目でブンブンと顔を横に振る。


「じゃあ、今回は止めたら?」

 止めたい。でも、そうしたらお母様の気持ちを無下にしてしまう。

 どうしよう。

 レオに助けを求めてもどうしようもないことは分かっているのだけれど、つい傍に居るからすがってしまう。


「待って、ディア。そういう顔は2人だけの時にしてくれ」

 口元を手で押さえてレオは私から下がった。


 そんな顔ってどんな顔?不細工だから人前で見せるなとでも言いたいの? 

 酷い。

 行け神馬!


 神馬をレオに向けて放つ。神馬はレオの肩に止まるとツンツンと頬をつついた。

 よし、良いわよ。神馬。


 レオはポケットからもう一つお菓子を出すと神馬に与えた。

 神馬は喜んで食べた。


 コラー!神馬のくせに簡単に餌付けされてるんじゃない!


「ディアはどうしても帝国に行かなくちゃ行けないの?」

 先ほどの私の葛藤でレオは理解したようだ。

 それもそうだ、レオは私がどれだけイナゴを嫌っているか知っている。Gよりも蛇よりもムカデよりも嫌いだ。そんな私がイナゴが大量に出たと聞いても行かないと言わないのだから嫌でも分かるだろう。


 私がコクリと頷く。


「そう、じゃあ危険だから君にボディーガードを2名つけるよ。君に万が一のことがあったら大変だからね。本当は私が一緒に付いていけたら良かったんだけど」


「え、良いわよそんなの」

 私そんなに重要人物じゃないし。


「承諾してもらえないなら国境を封鎖して君を通れなくしようかな」

「ありがたく受けさせていただきます」

 話が纏まったところで、ギル先生とエリオットが大量のパンフレットを抱えて奥の部屋から出て来た。


 ・・・先生もしかしてそのパンフレットは買いたい物リストですか?

 ほくほく顔の二人を見る限りそうだろう。


「あれぇ、クーさんどうしたの?泣いてるの?」

 エリオットが私を見て首を傾げた。

 ギル先生がレオを睨む。


「王太子殿下何があったのか説明して頂けますか?クラウディア嬢は私の大切な生徒です。たとえ殿下であろうとも私の生徒を傷つけることは許しませんよ」

 ちょ、ギル先生。誤解です。


「私は何もしておりませんよ。第一私が大切なディアを傷つけるわけがないじゃないですか」

 

「嘘だー。おうたいし殿下って他の女と浮気してクーさん振ったんでしょ?全然大切にしてないじゃーん」

 エリオットが特大ハンマーでレオを直撃する。

 

 なんだ、魔術学科の人やっぱり噂を知っていたのね。それでも何も聞かないで放っておいてくれたんだ。

 まあ、単に興味がなかっただけかも知れないけど。


「これ、エリオット君。いくら本当の事でも言って良い事と悪い事がありますよ。すみませんね、王太子殿下」

 ギル先生が窘めるがその言葉にもトゲを感じる。


「いえ」

 こころなしかレオの鉄壁の笑顔も崩れてる気がする。


「あの、本当に私殿下から何かされた訳ではないので、大丈夫です。ご心配お掛けしてすみません」

 

 私がフォローするとようやくギル先生もエリオットもレオを敵視するのを止めてくれた。

 やれやれイナゴのせいでレオもとんだとばっちりに合っちゃったわね。

 

 その後誤解しちゃってごめんねーという軽い謝罪の元エリオットがレオに魔力感知のやり方を教えた。

 ギル先生なぜよりにもよってエリオットを選んだの?エリオットは確かにこの学科で一番成績良いけれど教えるのは向いてない気がする。

 私も一度エリオットに教わった事があるけれど、そこでぐわっと、熱くばーんととか訳の分からない説明されて何もわからないまま終わってしまった思い出がある。

 レオは笑顔で説明を受けて帰って行ったけど、さすがにあの説明ではいくら天才レオでも理解できないだろう。


『そなたカーラ帝国に行くのか?』

 神馬が私の黒のローブを引っ張って自分の方に意識を向けさせる。


「行くわよ、言ってなかったかしら?」

『初耳だ。カーラ帝国も久しぶりに見てみたい。我も付いていくぞ』


「えー、神馬は何かしでかしそうだからお留守番してて」

『何を言う、有能な我が問題など起こすはずがなかろう!』


「問題起こして人の記憶操作したことないって神様に誓って言える?」

『・・・』


「じゃあ、留守番で」

『待てっ、連れて行ってくれるならそなたが魔力感知できるようにしてやるぞ』


「加護はいらないわよ」

『そんな程度に加護など必要ないわ。手をこちらに出すがよい』


 言われて左手を出す。

 神馬は私の人差し指にちょんと足を乗せた。

 

 ずずずずずと心臓部から指先に向けて熱い何かが移動している感じがした。


「はっあっ!!」

 次いで身体全身が燃えるように熱くなった。

 呼吸が出来ない。

 なにこれ!


『そなたのしょぼい魔力を無理やり引きずり出したからの。少しは苦しいやも知れぬな』

 そう言うのはやる前に言って頂戴。


『なに、すぐに治まる。ホレもう大丈夫であろう?』

 淡い銀色の光が身体を覆って消えた。

 呼吸もすぐに吸えるようになった。


 本当に使えるようになったのか目を瞑って集中する。

 心臓から指先へ血液を通って全身に移動する魔力を感じる。


「分かる!私魔力を感じるわ!」

 すごい神馬!

 神馬はドヤ顔で私に高い高いされていた。   

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