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レオと魔術学科

 いつものように専科終了後、すっかり魔術学科のマスコットと化した神馬と共に魔術学科に向かった。


 ドアを開けるとキラキラレオがいた。

 思わずドアを閉めた。


 え!ここ魔術学科よね?政治経済学科じゃないわよね!?


 なんどプレートを見ても魔術学科と書かれてある。

 もう一度そ~っとドアを開けると、レオがすぐ前に立っていた。


「きゃあ!」

「きゃあって酷いな、ディア。どうしたの?早く中に入っておいでよ」

 笑顔で手を掴まれて中に引きこまれドアを閉められる。


「え、なんでレオが魔術学科(ここ)にいるの?」

「ん?生徒会長から2・3年も入科可能になったって聞いたから、さっそく見学に来たんだよ」

 ああ、あの熱狂的なレオ信者ね。 


「でも2・3年は魔力感知が出来ることが条件でしょう?レオ出来るの?」

「出来ないよ」

「じゃあ、ダメじゃない」

「やり方を教わる位いいじゃないか。入科出来なくてもいつか魔術が使えるようなったら素敵だし」


 それはそうだろうけど、レオが真面目に魔術の練習をするとは思えない。

 だって前回あんなに魔術学科をバカにしていたんだもの。

 入科規則を盾にレオを追い返そうとしたのだけれど、


「クラウディア嬢がレオン王太子殿下に魔術の素晴らしさを説いて下さったんですって?本当にありがとうございます。魔術学科の予算確保も生徒会に掛け合って下さるとおっしゃっられて、これで今まで予算がなくて買えなかったあれやこれやが買えますよ~」

 ギル先生が嬉しそうにローブの前をぎゅっと掴んで悶えている。

 後ろでいつも他人に無関心な生徒たちまで万歳三唱している。

 皆にこんなに喜ばれてしまっては今さらレオを追い出せない。


 むぅ~相変わらず手回し良いんだから。


 神馬を鞄から出してやり、黒ローブを被る。

 神馬を見てレオが、


「ディアいつもこの小鳥学園に連れてきているの?」

 と尋ねてきた。

「ええ、本科の間はずっと外で待っていて、専科になるとここへ連れてくるのよ」

「もう魔術学科のアイドルですからね。頭の良い子なんですよ、この部屋の中で1回も粗相したことがないんです」


 ギル先生も小鳥の可愛さにメロメロだ。

 他の生徒達も人間には興味がないが神馬(小鳥)には興味があるようで、皆で交代交替に餌を与えてくる。

 そのせいで最近神馬が太ってきた気がしてならない。

 神馬に太った?って聞いたら『馬鹿者!精霊が太るわけがなかろう』って否定してたけど、どうにもこうにも小鳥の腹回りや顔がふっくらしてきた気がしてならない。


「へえ、ディアはペットのしつけも上手なんだね。おいで」

 レオが手を出すが神馬はぷいっとそっぽを向いた。

 ほほほ、レオ。それはただの小鳥じゃないのよ。そんなに簡単に懐いたりしないわ。


 レオは少し考えた後、おもむろにポケットからお菓子を取り出して神馬に差し出した。


「食べる?」

「レオ、この子は小鳥よ。そんな人間のお菓子なんて食べないわよ・・・って、食べるの!?」

 神馬は足を使って器用にお菓子を挟んで摘まんでいた。


 ちょっと、神馬のプライドはどこにいったのよ!

 角がないとプライドも消えちゃうわけ!?


「ははは、可愛いね」

 レオが頭を撫でても嫌がるそぶりも見せずお菓子にしがみ付いている。

 意地汚いわよ、神馬。


「名前は何かな?」

「シンよ」

 以前ギル先生にも聞かれてユニコーンとも言えず悩んだ末神馬(しんば)の一部を取って「シン」と名づけた。後で神馬にダメだったか聞いてみたが、名前など好きにしろと言われたのでそのままシンで通している。


「そう、良い名前だね。シン、ディアを守るんだぞ」

 レオがそう言うと、当然だとばかりに神馬が頷いた。


「ふーん、まるで人間の言葉が分かるみたいだね」

 ギクッ!

 レオがじっくり神馬を見つめている。

 これ以上レオに見られたら正体がバレそうな気がして、急いで神馬を回収した。


「レオは魔力感知を教わりに来たんでしょ、小鳥と遊んでないで早く誰かに教わって政治経済学科に戻りなさいよ」


 両手の中に神馬を包んで出来るだけレオの目から隠す。

 レオは小鳥から私に視線を移すと、おもむろに私の頬に手をあててきた。


「黒ローブにディアの銀色の髪が映えて綺麗だね。ディアは何を着ても良く似合うね」

「あ、ありがとう」

 いきなり褒められて思わずお礼を言うと、クスッと笑ってレオが私との距離を詰めてきた。


「ディアが魔術学科を気に入っている理由が分かったよ。こんなに人がいても誰も周りを見ていない。ほら、今も私達のことなんか誰も見ていないし気にしていない」


 ええ、そうね。ギル先生は自分の部屋に戻っちゃったし、他の生徒達も皆壁に向かって呪文を唱えているからね。

 そんなのいつものことで分かってるわよ、だからなんで私に詰め寄って来るの?

 レオの圧力に押されていつの間にやら壁際まで下がっていた。


 トンと横の壁にレオの手がつく。


 ひええええ、これは一時期流行った壁ドンって奴では!?

 前世では未経験だったのに、異世界来て体験しちゃったワンダホー。


 ってふざけてる場合じゃないわ、顔が近いっ、レオ!


 レオのガラス細工のように繊細な顔立ちがほんの数センチ先にある。

 碧色の綺麗な瞳が間近に迫ってレオの長い睫毛の数まで数えられそうだ。


「ディア」

 呼ばないで、今私の名前を言わないで。

 今愛を囁かれたら心臓がどうにかなってしまう。


「カーラ帝国に行く話どうなったの?」

 ん?


 おや?

 

 もしかしてただ内緒話をしたいからこの体勢になったの?

 紛らわしいわねっもうっ!




読んで頂きましてありがとうございます(*´ω`*)

皆々様のご好意に感謝致します。(*´ω`*)

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