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お母様が行けなくなった

 カーラ帝国に行く準備を細々としていた頃、お父様とお母様に呼ばれた。

 二人とも渋い顔をしていた。


「ディア。突然で申し訳ないんだが、お母様がディアの長期休暇中にカーラ帝国に行くことが出来なくなってしまったんだよ」

「ええ、なぜですの?」

 お母様と帝国を散歩するのを楽しみにしていたのに。


「ごめんなさいね、ディア。ディアとカーラ帝国に行くから今年は王妃様に夏の離宮へご一緒することは出来ませんとお伝えしてあったのだけれど、先日王妃様から今年も是非一緒に来て欲しいと懇願されてしまったのよ。何度もお断りしたのだけれど、私がいないとつまらないからそれなら王妃様も行かないと言い出してしまって。夏の離宮への参加を楽しみにしている貴婦人は大勢いるから、私のせいで取りやめになってしまったら大変な事になるでしょう。私が行かないと真面目なご婦人ばかりで固められるからつまらないというのも分からなくはないのだけれど、それでもいつもはこんな我儘を言うお方ではないのに。一体どうしてしまったのかしら?」

 

 お母様と王妃様は親友の間柄だから、どうしてもと頼まれてしまったら無下に断ることも出来なかったのだろう。

 

「私が一緒に行けないならお爺様とお婆様にディアの付き添いをお願いしようと思ったのだけれど、急な話なものだから予定があると断られてしまったのよ。なんでも研究機関からお爺様が治める領地の国土調査の協力願いらしくて。領地が広いからさすがに1日2日で終わる話ではなさそうなのよ。さすがにお爺様やお婆様抜きで勝手に調査して下さいというわけにもいかないみたいで」

 まあ、なんて悪いタイミング。


「ディア。残念だとは思うけれど、何も今年無理に帝国に行くことはないんだ。お前はまだ15歳だし、これから行く機会はいくらでもあるだろう。どうだろう、今年は行くのを止めにしては。私としてもディア一人で異国に送り出すのは心配だしね」

「お父様」


 確かに私も一人で帝国に行くのは不安がある。残念だけれど諦めようと心を決めた瞬間、ビシッと有無を言わさぬ感じでお母様が命令してきた。


「いいえ。一人で帝国に行ってらっしゃい、ディア。そして良い殿方がいたらゲットしてらっしゃい」

「アンブローシア!」

 お父様が驚いたようにお母様を見る。


「君はまだそんなことを。あのことはきちんと説明したじゃないか!」

「ええ、きちんと説明され納得もしましたし謝罪も受けました。今さら怒ってなどおりませんわ」

「ではなぜ!?」


「ディアの為です」


 私の為?

 お母様は真剣な顔で私に向き直った。


「ディア、実は今あなたに縁談の話が来ています。王家からとシモンズ家の両家から」


 レオとアーサーの家からね。

 

「両家とも返事は急がない。あなたの気持ちに任せると仰っているわ。あなたはどちらを希望するの?」


「私が決めてしまっても宜しいのですか?お父様やお母様は私を王家に嫁がせたいとお思いにならないのですか?」

 普通の貴族なら家の繁栄の為、娘が王家に嫁ぐことを望むものだろう。


「そうね、(わたくし)も初めはそれがあなたの幸せだと信じて疑っていなかったわ。でもこの間の事件があった時に思ったのよ。王家に嫁ぐことがディアの幸せに繋がるわけじゃないんじゃないかしらって」


 お母様。


「アンブローシア、だからあれは仕方のない事だったんだ。本当ならば我々の代で清算すべきだった負の遺産をレオン王太子殿下が代わりにしてくれたんだ。感謝こそすれ恨む話ではない」


「ですから(わたくし)も恨んではいないと申し上げております。王太子殿下の立場も行動も理解しております。私とて貴族の娘であり妻ですから。ですが、それとこれとは別の話です。今回のことは仕方がなかったのだから許せと。でもそれを許して次回また同じようなことが起きないとどうして言えますか?残党は殲滅したから確かにそちらは大丈夫でしょう。でも王家に嫁ぐ以上なにかしらのことはこの先も起こり得るでしょう。その度にディアが巻き込まれ傷つき苦しむのではないかと(わたくし)はそれが心配なのです」


「アンブ」

 お父様もお母様の訴えに言葉を失う。


「ディアが望むのであれば王太子妃になることも反対は致しませんわ。ですからレオン王太子殿下をディアの婚約者候補から外すことは致しません。ですが、今後は私も殿下に協力することは一切致しません。条件は皆同じにします。ディアには真っ新(まっさら)な気持ちで出来るだけ多くの男性と出会って、その中からこの人だと思った人を選んで欲しいのです。(わたくし)があなたと出会って感じた幸福をディアにも味わって欲しいの」

「アンブローシア」

 二人が甘く見つめだした。


 突然始まった両親のラブシーンに居心地が悪くなる。

 困ったな、私お邪魔よね。

 そ~っと目立たないように立ち上がり部屋を出て行こうとしたけれど、お母様に呼び止められた。


「ディア、そういうわけだからあなた一人でも帝国にお行きなさいね」

「はい!」

 物見遊山の気持ち100%だったけれど、お母様の気持ちを汲んで50%くらいはお見合いに力を入れないとと気合を入れ直した。 

ブックマーク登録&評価をして下さった皆様ありがとうございます(*^_^*)


誤字連絡&感想を下さった皆様ありがとうございます(*^_^*)


勝手にランキングを押して下さっている皆様ありがとうございます(*^_^*)


書きつづけられているのも皆様のおかげでございます<m(__)m>


雨で湿度が高いです。湿度高いと体が重く感じませんか?え?太っただけだろって?いえいえそんな。

・・・違うと信じたい。(;一_一)


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