遠乗り
待ちに待った遠乗りの日がやってきた。
天気も快晴微風遠乗り日和。
皆乗馬服で馬小屋の前に集合して前回自分が選んだ馬を引いて外に出た。
アナベルが選んだ栗毛の馬を引きながら私の隣に来ると、
「クラウディア様本当にその馬でよろしいんですか?よろしければ交換致しますけれど」
と優しい言葉をかけてくれたが、神馬は私の乗馬服の袖をしっかり噛んで離さないので、大丈夫よと返答した。
「そうですか?じゃあ私は失礼してお先に行かせていただきますね」
軽やかに疾走して行くアナベル。中々の乗馬技術だ。
それにしても最後までアナベルは神馬の姿が見えなかった。ヒロインなのになぜなのかしら?と考えていると、そう言えばこの遠乗りイベントは魔術学科入科が条件だったことを思い出した。
そうだわ、確か神馬と魔力の関係がなんちゃらかんちゃらとか言っていた気がする。
詳しく思い出そうとするけれど、アーサー以外の攻略対象者は最初の方に軽く1回流しでやっただけだから、細かい事が思い出せない。
まあとにかくこれでアナベルに神馬が見えなかった理由がはっきりしたからいいわ。
皆が出発するのを見届けてから、最後に私も出発した。
なぜなら神馬が空を飛ぶからその姿を他の人に見られては困るからだ。
その位我の力でなんとでも誤魔化せると神馬は言ったけれども、私は断った。出来れば余り人の記憶はいじりたくない。
ただ遅れて出発すれば解決できることなのに力を使う必要などない。
皆が見えなくなった頃、神馬はおもむろに空を飛んだ。
ふわっと重力に逆らって空を飛ぶ感覚は遊園地の空中ブランコを思い出された。
凄いわ、本当に空を飛んでいる。
ちらっと下を覗くと生徒達がはるか下に見えた。
「すごーい」
私が褒めると神馬はジェットコースターの上りかと突っ込みたい程に更にぐんぐんと上昇していく。
雲がもう目の前にこんにちはしている。
「ちょっと上がりすぎなんじゃないかしら」
『力を使わずに人から見えなくするには上に上がるしかないからの』
「それはそうだろうけどちょっと高すぎよぉ〜」
運営さん、ゲームのヒロインちゃんは気持ち良さそうに笑顔で神馬に乗っていたけれど、実際乗ると怖いわよ!あの辺の映像直しておいた方が良いわよ、恐怖で引きつる顔が正解よ〜。
『怖いなら下を見ずに上を見てれば良かろうて』
「そっかぁ!ってそんな簡単な問題じゃないのよぉ。足元がブラブラしてる状態で高い所にいるとお尻がひゅんってするのひゅんって」
折角の絶景だけど怖すぎて斜め上の視線固定。
横乗りしてるのがまた怖さ倍増。でも今さら乗り方を変えることも出来ない。
神馬だから振り落とされることはないと分かっていても、もしつるんと滑ったりしたら真っ逆さまに落下すると思うと恐怖で手汗が酷い。
『我の力を使えば下に行けるがの』
「それもちょっとぉ」
『あれもダメこれもダメとまっこと注文の多い女子よの』
神馬に呆れられてしまう。
うう、ごめんなさい。
「そうだ、何も空を飛ぶ必要ないんじゃない?他の馬と同じように地面を走れば良いのよ」
ゲームのイメージでそのまま空飛んじゃったけど、最初から飛ぶ必要などなかったのよ。
グッドアイデア!と思ったのに、神馬は鼻を鳴らして反対した。
『それは我のプライドが許さぬ』
どこに生えてるプライドよ!
地上を歩くのは屈辱だとでも言いたいわけ?
そんなこと言ったら最初から地面歩いてる他の馬や人間たちはどうなるのよ。
そんな無駄に高いプライドなどへし折ってしまえ。
『これ、なぜ我の角にリボンを結んでおる。我のたてがみで三つ編みするな!まて、その口紅はどこから出してきた。そして何をする気だ!ええい、大人しく乗っておれ。第一下が怖いのではなかったのか?』
「はっ、そうだった。きゃーなんで思い出させるのよ。折角忘れてたのにぃ!」
『知らぬわ』
ギャーギャーと空で騒ぎながらやっと目的地の花畑に到着した。
つ、疲れた。
騒いでいたせいで怖さは半減したけれど別の意味で疲れた気がする。
辺りには人の気配がないから、他の生徒はまだ到着していないようだ。
やっぱり空を飛ぶと直線で来れる分早い。
背中で騒いで迷惑をかけてしまった分、ここはやはりゲームと同じように花冠を作ってお礼をするべきだろう。
せっせと花を集めて冠を作り後ろ手に隠して近づき、そっと角に掛ける。
白馬の神馬にパステルカラーの花冠がよく映えた。
「乗せてくれたお礼よ」
私がそう言うと、神馬は頭を下げて花冠を角に滑らせ私の頭に掛けた。
『我につけても仕方あるまいて。こういうものは女子がつけるものよ』
えー、折角作ったのに。
あ、そうだ。
「じゃあ、人間の姿になれば良いんじゃない?それなら違和感ないでしょ」
『・・・なぜ我が姿を変えられることを知っておる?』
ゲームで見たからです!とは言えないから、
「神馬なんだからなれて当然でしょ?」
と無茶振りで通した。
『まっことおかしな女子よの』
神馬が笑ったような気がした。
すると視界が歪み目の前に銀髪銀目の麗しい青年が現れた。
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今日はこちらは珍しく涼しくて過ごしやすい感じです。来月の冷房代が怖い・・・。