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魔術の才能

「えーと、それでは魔術学科の説明を致します。まぁ名前の通り魔術を研究している学科です」

「はい!」

 驚愕から立ち直ったギル先生に部屋を案内をされる。

 案内と言っても殺風景な部屋に黒ローブを被った人間が壁に向かってブツブツ言っているだけなのだが。


 一見するとなにやら不気味だけれど、これも魔女っ娘になる儀式の一つなのだろう。

 ワクワクして続きを待っていると、


「以上です」

 とギル先生は説明を終了させてしまった。


 ちょっとちょっと待って、魔女っ娘になる説明を抜かさないで。

「あの、もう少し具体的にお願いします。例えばここにいる皆さんは先ほどから何をされているのですか?」


「彼らですか?彼らは自分の身体を流れる魔力を感じてそれを体の外に出そうとしています」

 そうそう!そういうの聞きたかった。続きプリーズ。


貴女(あなた)はご自分の魔力の流れを感じたことがありますか?」

 いえ、全く。

「目を閉じて感じてみてください。己の鼓動から流れるエネルギーを」


 己の、鼓動。

 鼓動から流れるエネルギー。


 目を閉じて感じ取ろうとするが私にはさっぱり分からない。


「分かりません」

 素直に降参するとギル先生は笑った。


「すぐに分かる人はいませんよ。最初は皆エネルギーを感じるのに1年はかかります」

「そんなにかかるんですか?」

「ええ、そしてエネルギーを感じた後に己がどの自然と相性がいいかを探ります」

 いいわ、ますますファンタジーっぽくなってきた。


「ギル先生はどの自然と相性がいいのですか?」

 知ってるけど見たいから聞いちゃう。


「私は主に火ですね。よろしければご覧にいれましょう」

 そう言うとギル先生は目を瞑って精神統一を始めた。

 5秒経過。

 10秒経過。

 もうすぐ15秒というところでようやくギル先生の突き出した人差し指から3センチ程の小さな炎が上がった。

 

「わぁ、凄い!!」


 火が出たわ、指から火が!

 凄い、人間ライターみたい。

 私が大喜びしていると、ギル先生は集中していた顔を花のようにほころばせた。


「俺も、俺も見て!俺の得意技は風だから」

 エリオットが私とギル先生の間に割り込みしてきて、私の前に人差し指を突きだす。


 3分経過。

 5分経過。

 10分経過したところでようやくエリオットの指から小さなそよ風が出た。


「凄いわ!本当に風が出てる!!」


 これは夏に便利だわー、人間扇風機になるもの。

 一家に一人エリオットだわね。


 エリオットの指から出る風に笑顔で当たっていると、

「エストラル侯爵令嬢は本当に魔術にご興味があるみたいですね」

 とギル先生が言ってきた。

「もちろんです!」

 私は即答で答えた。魔術を使うのは前世からの憧れですから。


 目標は箒で空を飛ぶことです!

 悪人の前にヒラリと空から飛んできて、


 魔女っ娘ディア、ただいま参上!と高らかに口上。


 何なら魔女っ娘衣装でビシッとポーズも決めちゃうんだから。

 妄想にニマニマしていると、ギル先生が切なそうに言ってきた。


「こんな学科なので結構冷やかしで来る生徒が多いのですよ」

 おや?

「もしかして私も冷やかしで来たと思ったのですか?」

 私がそう言うと、ギル先生は淡く微笑んだ。


「いえ、あなたの場合はそうではなく。とうとうこの学科が潰されるのかと思いました」

 はい?一生徒である私にそんな権限ありませんよ。


「あなたは王太子殿下と仲が宜しいですから、代わりにこの学科を潰す下見にでも来られたのかと」

 ああ、それで案内が最初いい加減だったんですね。


「そんなことするはずないじゃないですか」

 両腰に手を当て否定する。

 失礼しちゃうわ、そんなもったいない事私がするわけないじゃない。

 潰しちゃったら私が魔女っ娘になれなくなっちゃうもの。

 ギル先生って案外おっちょこちょいね。


「ええ、杞憂だったみたいで安心しました」

 安堵してほほ笑むギル先生のバックに大輪のユリが見えた気がした。

 

 男の人だけど美人って言葉がぴったりな人ね。凄いわ。


 それにしてもどうして潰されると思ったのかしら?所属生徒数が少ないから?

 こちらを一切気にもせず壁に向かってうんうん唸っている人達が所属生徒全員だとしたら、十数人しかいないだろう。


「人数が少なすぎて存続の危機なんですか?」

 こういう時はズバリ聞いてしまうのが一番。


「まあ、それもありますが。基本的に魔術学科は今の世の中に不必要なものとされていますから。あなたも見たでしょう、たったこれだけの小さな炎を出すために時間が掛かりすぎる。それなら火石で火を付けた方がはるかに速い。魔術を使う人間もおかげで減る一方なんですよ」


 なんですと!

 この世界の人間は使おうと思えば魔術が使えるのに、不便だからと言う理由で自ら手放しているなんて。


 もったいないお化けが出るわよー!!


「それはおかしいです。無から有を作り出すことがどれほど大変な事なのか。5分や10分待ったところで何だというんですか、そんな理由で魔術が衰退していくなんて許せません!」

 前世アニオタでもあった私が許しません!


 地球人に聞いてごらんなさいよ、

『あなたは頑張れば魔術が使えるようになります。練習しますか?

 YES or NO で答えなさい』 って。


 大抵の人がYESって答えるから。

 

「ギル先生!絶対魔術学科をなくさないでください。私でよければぜひ入科させていただきますから!魔術は素晴らしいものですわ、先生もご自分の力に自信を持ってください!」


 魔術師長のギル先生が魔術を止めてしまったら衰退待ったナシになってしまう。

 私がそう言うとギル先生は感動して目を潤ませながら何度も頷いた。


「魔術など無用なものだと世間から罵倒されること数百年。細々と繋いできた力ですが、こんなにも魔術を理解してくれる生徒がいてくれるなんて本当に嬉しいです。そうだ、本当でしたら自分の魔力を感知できるようになってから調べるのですが、よろしければあなたがどの自然と相性が良いか調べてあげましょう」

 ギル先生が奥からいそいそと手のひら大の水晶玉を持ってきた。


「これで本人が保有する魔力量なんかも分かるんですよ」

 へー。

 あ、そう言えばゲームのヒロインちゃんもギル先生攻略の時この水晶玉に手を置いてたわ。

 ヒロインちゃんは光と相性が良くて、鍛練すれば治癒魔法が使えるようになる。

 治癒魔法が使えるようになるのと比例して魔術師長との恋愛ゲージも貯まって行っていた。


 私はドキドキする胸を押さえながら水晶の上に手を置いた。


 どうしましょう、転生物にありがちな無敵状態になってしまったら。

 ラノベとかだと、転生者が魔力測定機に手を置くと余りの魔力量に測定器が壊れてしまうのよ。


 ワクワク。

 

 ギル先生が水晶を覗き込む。


「こ、これは!!」


 ギル先生が驚愕する。

 キターお約束!!


「光属性ですよ、素晴らしい!」

 なんと、ヒロインちゃんと一緒だとは!

 さっすが私、転生者。


「ギル先生、私の魔力量はどうですか?」


 俺tueeeeee状態ですか!?


「魔力量ですか?そうですね、魔力量は・・・」


 ワクワク、ドキドキ、ワクワク、ドキドキ。


「普通ですね」


 あらららら?

 残念。

 転生者でもライバル令嬢は無双出来ないようです。

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読んでくださっている皆様のおかげでこうして書けています。本当にありがとうございます<m(__)m>

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