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2部~はじまり~

 残党殲滅事件があった翌夕方にレオがアーサーと共に我が家へやって来た。


「どうしたの?二人一緒に来るなんて珍しいわね」

「お互いしばらく抜け駆け禁止協定を結んだからね」

 抜け駆け禁止協定?なにそれ。


「お前に迫る時は当分抜け駆けはなしってことだよ」

 アーサーが私の右頬に片手を添えて瞳を覗き込んでくる。

 アーサーの神秘的な黒い瞳が言葉より雄弁に熱く語りかけてくる。


 お前が好きだ、と。


 思わずごろにゃんとアーサーにもたれかかりそうになるところを寸前でレオが止めた。


「つまり、こういうことにならないようにしばらくはお互いに監視し合おうってことだよ。ディア」

 レオの笑顔のこめかみに怒りマークが見える。


 ごめんなさい。ついつい前世の私(ゆみ)がアーサーに反応しちゃうのよ。

 

「玄関で立ち話もなんだし、私の部屋へどうぞ」


 二人を案内して部屋に置いてある椅子を勧める。

 足の長い二人が私の部屋のファンシーな椅子に座ると窮屈そうに見えるのがちょっとおかしい。


「それで、今日は本当にどうしたの?事件の後処理とかは終わったの?」

 マリーにお茶を淹れて貰って私も椅子に座る。


「そっちはあらかた終わったよ。今日は大事な話をしに来たんだ」

「大事な話?」

 なんだろう。

 きょとんとしていると、アーサーとレオが身を乗り出して私に聞いてきた。


「「ディアは政治経済学科と剣術科どっちに入るんだ?」」

 

 へ?


「もちろん政治経済学科だよね。バート男爵令嬢は政治経済学科をやめたし、他の貴族達に私とディアが仲直りしたとアピールするには丁度良いと思うんだ」

 そうレオが言えば、


「剣術科だろ。もっと鍛えたいと言っていたもんな」

 アーサーも負けじと言ってくる。


 私は真剣に問いかけてくる二人を尻目にコクンと一口紅茶を飲んだ。

 折角マリーが美味しく淹れてくれたのに、一番おいしい時に飲んであげないともったいない。


「どっちにも入らないわ。私もう他の学科に入科してるもの」


「「は、どこに!?」」

 どうでもいいけどさっきから二人のセリフがシンクロしてるわね。さすが仲良し。


「魔術学科」


 私がそう答えると信じられないといった風にアーサーは髪を掻き揚げた。

「なんであんな廃れた科に!?」

 むっ、失礼よアーサー。


「そうだよディア。何であんな落ちこぼれで変人ぞろいの魔術学科に。ディアなら試験なしでうちの科に入れるよ。うちの科に転科しておいで」

 レオまでかなり失礼な。


「確かに魔術学科は廃れてるし周りは落ちこぼれで変人揃いの人が多いけれど、皆とても温かい人たちよ。魔術師長のギル先生だってとっても良い先生だし。レオに振られたって噂が広まった時大勢の生徒が私を憐れむ目で見てきて嫌だったけど、魔術学科の人たちは一度たりとも私をそんな目で見なかったわ」


「皆変わり者だからそんな噂を知らなかっただけでしょう」

 ま、まあそうかもね。


「でも、知っていても私に対する態度は変わらなかったと思うわよ」

「変人だからだろ」

 うん、そうかもしれないけど。


「とにかく、私はあの科が気に入ってるの。今さら転科する気なんかサラサラないわ。誘ってくれたのはありがたいけれど、ごめんなさい」


 私の言葉にアーサーは諦めのため息をついたが、レオはめげなかった。


「じゃあ、私が魔術学科に転科するよ」

「レオ!」

 アーサーが止めるが、レオは止まらない。


「アーサーも私に抜け駆けされたくないなら剣術科を辞めて魔術学科に来れば良いじゃないか。そうすればディアを口説く機会も増えるよ」

 そんな事出来るわけない事を承知でレオはアーサーに告げる。

 アーサーは眉間に皺を寄せて黙り込んだ。

 そんな顔しても二枚目はやっぱり二枚目なのよね。


 でもレオ残念でした。


「魔術学科に入科できるのは1年生のみで2・3年生からの転科は禁止なんですって」


「は、そんなの聞いたことないよ。学生の自由を奪っている。これは生徒会を通して抗議しないと!」

 言ってることはまともなのに、理由が不純よレオ。


「ちゃんと理由があるのよ。魔術を使うには体内に流れる魔力を感知しないといけないんですって。でもそれを感知できるようには早くて1年遅くてもっとかかるんですってよ。だから2・3年になって途中入科しても感知できないまま卒業になってしまうから、入科条件を1年生のみにしているらしいわ」


「そんな!」

 ガックリと肩を落とすレオ。


 そんなに目に見えてガッカリされると、私が悪いわけではないのに罪悪感が芽生えてしまう。


「ごめんね、レオ。折角一緒の専科にって言ってくれたのに。休日お互いの予定が空いたら街にでも行きましょう」

「本当に!?」

 レオが一気に元気になる。


「ええ、もちろん」

 今までのお詫びも込めてね。


「ディア、俺は?」

 アーサーが私の髪を一房取って口づけ、情熱的に見つめてくる。


 いやもう、だからなんでこの人は無駄にフェロモンまき散らしてくるのかな。前世の私(ゆみ)が反応しちゃうじゃない。ごろにゃん。


「もちろん一緒よ。3人で仲良く街に探検しに行きましょう!」

「ディア、デートじゃないの!?」

 レオが抗議してきて、アーサーがお腹を抱えて笑う。


「子供の頃から何も進歩してねぇ」

 むっ、悪かったわね。

 しょうがないじゃない今はまだどっちも大切でどっちも選べないんだから。


 恋愛初心者マークの私には徐行運転からじゃないとオーバーヒートしちゃうのよ。

ブックマーク登録&評価をして下さった皆様ありがとうございます(*^_^*)


誤字連絡&感想を下さった皆様ありがとうございます(*^_^*)


下の勝手にランキングを押して下さっている皆様ありがとうございます(*^_^*)


皆様のおかげで2部を書き始めることが出来ました。

読んで頂けると幸いです。

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