レオとルーカスとお茶会
残党事件お疲れ様の意味も込めてルーカスとレオをお茶に誘ってみた。
ちょっと二人を一緒にして確認したいことがあったからだ。
内緒で二人をじっくり観察してみて、私は安堵した。
二人は本当にいがみ合ってはいないのだと。
世代が違うから今更遺恨などないといえばそうなのかも知れないが、伝え方1つ受け取り方1つで禍根は残るものだ。
でもこうして見ると二人の間にはそんなものは欠片も見当たらなくて、むしろ絆のようなものまで見える。
まるで年の近い兄弟のようだ。
ふと、クーデターが起きた先代の王と王弟の仲は悪かったのだろうかと考えた。
先代の王の性格は厳格で苛烈という記述が多かった。
これは時代のせいだろう。
先代の前まで常に近隣諸国と領土紛争が起きていて、先代の時代も休戦状態とはいえいつ隣国と戦争になるか分からない緊張状態だったから、優しいだけの王では務まらなかったのだろう。
ではクーデターを起こした王弟は?というと、実は余り彼の性格が記述されている歴史書がなかった。
どの歴史書もただ愚かな王弟が自分が王になり変わろうと、反旗を翻して失敗したとだけ記載されていた。
当然といえば当然なのだけれども、なんだか釈然としなくて一時期ムキになって歴史書を読み漁っていたら、一冊だけ王弟の性格を記載してある歴史書を見つけた。
そこには心優しき王弟と記載されていた。
心優しい王弟がクーデター?と疑問に思い読み進めると、その事件の事も激しく残虐な王に苦しめられた民を救う為立ち上がった勇気ある王弟と綴られていた。
誰が記述したのかと本を満遍なく調べたが、作者は不明のままだった。
大体歴史書というものは勝者の都合の良いように書かれるものだ。
それなのにこういう記載の本が、よりにもよって王宮の図書室にあるのはなぜなのか。
立ち位置によって評価が変わるのは当然だから、物事に客観性を持たせるために王宮が敢えてこの本を置いたのかも知れないとその時は納得したものだけれど、今回レオがルーカスに協力を求めたことで第3の可能性を思いついてしまった。
もし王弟のクーデターが先代も承知の上での出来事だったとしたら?
先代の時代は度重なる戦争で国力が疲弊していた筈だ。
そんな中まず王が即位してすることといえば国力の安定。
国の建て直しに必要なのは、強いリーダーシップ。
トップが揺らげば下も瓦解し国も崩壊する。
他国の脅威から国を守る為には、時に必要以上に厳しく国政を取り仕切ったことだろう。
でもそのせいで、民の不満が脹れあがったとしたら?
それに便乗して王家を乗っ取ろうとたくらんだ貴族がいたとしたら?
内部紛争を起こした国など近隣諸国から良い餌にしか見られず、あっという間に飲みこまれるだろう。
その不穏を感じ取った王弟が今回のルーカスのように自分を犠牲にすることでクーデターを失敗させようと動いたのだとしたら?
王家も承知の上での出来事だったから、謀反を起こした一族は全員斬首が決まりなのに、わざとルールを捻じ曲げてルーカスのお父様を赤子を理由に斬首から除外したのでは?
考えれば考えるほどつじつまが合っている気がしてその考えに囚われてしまう。
「ディア、どうかしたの?」
ルーカスがお茶を飲まずに考え込んでしまった私を心配して、顔を覗き込んできた。
「あ、ううん。なんでもないの。ごめんなさい、気にしないで」
私が慌てて手を振ると、レオが渋い顔をした。
「気にするなと言う方が無理だよ」
「え?」
もしや、私の考えていることがレオに読まれてしまったのかと胸がドキッとしたが、
「ルーカス!君いつの間にディアと愛称で呼ぶ仲になっていたんだい!?私は聞いていないよ!」
ズコー。
なにそのどうでも良い発言。
「あれ?言ってなかったかなぁ」
アハハーととぼけるルーカスに怒るレオ。
平和だわ。
私では結局真実がどうだったのか分かりはしないけれど、今の平和な時代をもたらせてくれたのは間違いなくご先祖様たちの苦労の証だから、ありがたく甘受して未来に受け継いでいこうと思う。
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蒸し暑い日にはビールが良いですね。私下戸ですが。笑