アーサーSide ~アーサーの独り言2~
10歳を過ぎた頃レオは突然エストラル侯爵令嬢と婚約すると言い出した。
身分的にも年齢的にも問題はない。
俺は口では反対しなかったが、正直女と一緒にいて何が楽しいのかと思っていた。
それというのも俺と会った女たちが皆一様に酷い反応を返してくるからだ。
まず目が合っただけで怯える。
何も言っていないのに泣く。
そしてなぜか親に言いつけられて俺が怒られる。
常にそのループだ。
理不尽すぎて付き合いきれない。
女たちの話している内容もどこそこの店のデザイナーのセンスが素晴らしいだの、どこそこのご子息とご令嬢が怪しいだのどうでもいい内容ばかりで、聞いていてつまらないことこの上ない。
しかしレオの婚約者ともなれば俺とも顔を合わせることが多くなるだろう。
顔を合わせるたびに泣かれるのは御免だなと思った。
そしてとうとうレオの紹介でエストラル侯爵令嬢と顔を合わせる時がきた。
初めて見たエストラル侯爵令嬢は一言でいうと『完璧な美少女』だった。
俺は内心密かに感嘆した。
外見も美しければ所作も美しい。
噂で綺麗な子だという事は聞いていたが、何せこの令嬢は王宮の催し物にはろくに出てこなかった為、俺は顔を知らなかったのだ。
レオとエストラル侯爵令嬢が並ぶと金と銀の見事な一対の人形のようだった。
レオの奴顔だけで婚約者を選んだな。
俺は初めそう思っていたが、すぐに間違いだと気が付いた。
この令嬢は中身がおかしい。
俺がどんな態度をしようがまずビクともしない。
それどころか俺と対等に話して俺の挑戦まで受け取り予想のつかない方法で勝ちをもぎ取った。
俺に対しても屈託なく笑い、たまに変な妄想をして涎を垂らして迫ってきたり、俺の誘いに文句を言いながら一緒にバカをやらかした。
弱っちいくせに正義感だけは人一倍で、弾丸のように突っ走るので俺とレオが後から追いかけるのに精一杯だったりもした。
とにかく目が離せない。
最初はそんな彼女を面白いと思うだけだった。
それがいつしか妹のように可愛い存在になり、愛しんでいるうちにコイツは妹だと言い訳をしている自分に気が付いた。
恋は気が付いたら心に芽吹いているものだと長兄に言われたことがあったが、その時は色ボケ兄の寝言だとバカにしていたが、自分がまさかそれに陥るとは思いもよらなかった。
自覚してしまったらもう他の女性を婚約者にすることは出来ない。
母上が躍起になって俺の婚約者を探そうとしているが、俺にその気はない。
好きな相手がいるのに婚約者を作るのは不実というものだろう。
クラウディアは未来の王太子妃となる存在だ。
その為にレオが散々周囲に手を回していたのも知っている。
だから自分の気持ちに気が付くのが遅れた。
実際クラウディアには王妃になる素質が十分にある(変な素質も山ほどあるが)。
大貴族として生まれたのに贅沢を好む訳でもなく、下の身分の者を軽んじる様子もない。
むしろ嬉々として下々の者に混じり歌を歌い裸足になって踊る。
知れば知るほど変な女だ。
面白くて目が離せなくて可愛くて。
ディアに触りたくなって頭を撫でれば、髪をグシャグシャにしたと子リスのようにぷうっと頬を膨らます。そんな様も愛おしい。
手の中に囲って何物からも守ってやりたいのに、目を離すとすぐに飛んで行ってしまう。
俺の手の中からもレオの手の中からも。
随分とやっかいな女に惚れたものだと自分でも思う。
でも惚れてしまったものは仕方がない。
恋に落ちてしまった以上ガンガンアプローチして攻めていきたかったが、レオを裏切るわけにいかなかった。
なぜかクラウディアはレオの言葉をまともに受け止めようとしなかったから。
そんな不公平なスタートラインでレオからクラウディアを奪うのはフェアじゃない。
まずはクラウディアがレオとの関係をしっかり見据えてから俺も口説いていこうと決意した。
口説くと決めた以上、俺は相手が王子だからって手加減はしないぜレオ。
幸いクラウディアは俺の声と姿が好みらしいからな。
使えるものは最大に使い成果を手に入れる。
これは子供の頃クラウディアに教わった事の一つだ。本人の身にしっかりと返させてもらおう。
「好きだ」
俺にこの言葉を言わせたらもう止まらない。止まるつもりもない。
クラウディアが俺の声に弱いことを承知で耳元で「ディア」と囁くと、クラウディアは鼻血を出して気絶した。
俺はそんなクラウディアを片手で支えてその額にそっと口づけた。
「アーサー!」
隠れ家の中でレオが俺を怒る声が響き渡った。
ブックマーク登録&評価をして下さった皆様ありがとうございます(*^_^*)
誤字連絡&感想を下さった皆様ありがとうございます(*^_^*)
下の勝手にランキングを押して下さっている皆様ありがとうございます(*^_^*)
皆様のおかげで書いて来れました<m(__)m>
お盆ですね。皆様お暑いですがお体に気を付けてお過ごしください。<m(__)m>
読み返したら物足りない表現がちょこちょこあったので、ところどころ付け加えてみました。最初に読んで下さった皆様申し訳ありません。
m(_ _)m