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アーサーside ~アーサーの独り言~

 最初に俺がレオを見たときの第一印象は 『つまらなそうな奴だな』 だった。


 誰にでも親切で穏やかな笑顔を振りまいて大人受けの良さそうな真面目ないい子ちゃん。

 それが俺がレオに抱いた感想だった。


 子供の頃の俺はとにかく体を動かしたくて、じっとしていることが苦痛だった。

 黙って座っている位なら走り込みでもした方がマシだったし、机で勉強している暇があったら剣を振り回していたかった。

 頭では勉強が大事なことも分かっていたけれど、最終的に本が俺の命を守ってくれるわけじゃなしと自分に言い訳をして剣の修業に重きを置いていた。


 それはレオの側近になってからも変わらなかった。

 度々つまらないことで呼び出されてはただレオの傍で立っていることが苦痛で、良く俺は呼び出しをサボった。

 さすがに重要な場面では父上に首根っこを掴まれて連れて行かれたが、そもそもなんで俺がレオの側近に選ばれたのか意味が分からなかった。

 レオの側近になりたかった奴らなら一杯いただろうに。


 9歳になった頃俺は一度レオに側近を辞めさせてくれと頼んだことがあった。

 レオはチラッと俺を見るとまた何事もなかったかのように紙に何かを書いていた。


 聞けよ、おい!


 しかしレオはあくまで俺の意見は無視し、書き物を終えると立ち上がって俺に言い放った。


「明日街へ出る。アーサーも一緒に来い」

「は?やだよ」

「そうか、じゃあ明日午前11時に迎えに行くから用意しておけ」

「は?だから嫌だって」

 俺の意見丸無視で去って行くレオに俺は心底頭にきた。

 明日は絶対11時前に家を出ててやる!


 しかしレオの奴は朝9時に俺を迎えに来た。


 あのやろう、俺が逃げ出すの読んでやがったな。

 ったく、頭の良い奴はこれだから嫌なんだ。


 さすがに父上母上監視の元では逃げられない。

 俺は観念してレオと共に馬車に乗って街へ出かけた。


「街で何するんだ?」

 ぼんやりと馬車の外を眺めているレオに聞くと、

「なにも」

 というおかしな返答が返ってきた。

「ただ私と街をぶらぶら歩いてくれれば良いよ」

 なんだそりゃ、女子か!

 ウィンドウショッピングっていうやつだろう?

 なんで俺がそんなもんに付き合わなきゃいけないんだよ。勘弁してくれ。

 

 さっさと終わらせて帰ってやろう。

 俺がそう決心していると、レオが俺を見て目だけで笑った。


 な、なんだよ。

 もしかして俺が考えていることがバレたのか?

 まさかな。


 馬車が街に着き本当に俺はレオとただ街をぶらぶら歩いた。

 あーくそつまんねぇ。


 何が悲しくて王子と二人で街を歩かなきゃいけないんだよ。

 しかもレオの奴はやたら人目を引く容姿をしてるから、地味な格好しても目立つんだよ。

 ジロジロと街の人に見られるのも鬱陶しい。

 それなのに肝心の見られているレオはどこ吹く風で気にしないで歩いていく。

 コイツ心臓に毛が生えてるな。アレックス隊長の胸毛みたいなボーボーのやつ。


 顔はガラス細工みたいに繊細なのに、中身が合金って詐欺だよな。と俺が思っていると、一軒の店に飾られている剣に目がいった。


「すっげぇ、格好いい」

 ガラスにへばりついて見惚れてしまい、気が付くとレオとはぐれてしまっていた。


「やべっ、父上に怒られる」

 レオに付き合う気はサラサラなかったが、こんな中途半端な場所で王子を一人にしたと父上にバレたら説教と言う名のしごきが待っている。


 俺は急いでレオを探しまくった。


 大通りからそれた小さな路地の中でキラリとレオの金髪を見た気がした。

 俺は急ブレーキをかけ右に急転換した。


 走って行くとレオがガタイの良い男数人に囲まれているところだった。


「そいつから離れろ!」

 俺は走ってレオの正面にいる奴に体当たりしたが、体格負けで俺が地面に尻もちをついた。


 くっそう。


 俺はすぐに立ち上がり男達を蹴ったり殴ったりしたが、男達はビクともしなかった。

 そのうち鬱陶しく思った男の一人が俺の襟首を持ち上げて放り投げようとしてきたから、俺はぶら下がった足でそいつの股間を思いっきり蹴っ飛ばしてやった。


 男は股間を押さえて悶絶した。


「こいつ、いい加減にしないか!」

 他の男が俺の頭を掴んで力任せに地面に押し付けた。

 ちょうど口のところに男の親指がきたから、思いっきり噛みついてやった。


「うわっ痛ってぇ。子供だと思って優しくしてやれば、もう許さねぇ」

 俺を押さえつけていた奴は右拳を振り上げた。

 俺は両腕で頭をガードして衝撃が来るのを覚悟した。


 しかしドサッと音がしたと思ったら、男は俺の横の地面に寝っ転がっていた。


 なんだ?


 そうだ、王子は!?


 レオの方を見ると王子(レオ)を囲んでいた奴らは全員地面に倒れていた。


 レオの周りに数人の男が立っていて、何か話していた。


 もしかしてあれが噂の影の部隊か。


 レオはそいつらに何か指示を出した後で、呆然と座り込んでいる俺に近寄ってきた。


「なんで君来たの?」


 第一声がそれかよ!


「お前が見当たらなくて探していたら、怪しい奴らに囲まれてたから助けに来てやったんだろ。一人で先に行くんじゃねぇよ」

 俺が文句を言うと、不思議そうにレオは首を傾げた。


「でもアーサー、君私に付き合う気全くなかっただろう。だったらはぐれたのを幸いに逃げちゃえば良かったのに」

そしたら側近だって辞められたのに。ととぼけた事も言われた。


「俺はそんな無責任な奴じゃねぇよ!サボるにしてもお前の身の安全を確保してからに決まってんだろうが」

 レオはちょっと驚いた顔をした。


「さすがはシモンズ家の一員だね。君を見くびっていたよ。てっきり私など気にしないでいなくなると思っていた」

 予想外だったなとレオはつぶやいた。


「はぁ?バカにすんな。俺はお前の側近なんてゴメンだけど、なってる間はキチンとやるさ。っていうかその言い草だとお前ワザと俺からはぐれて1人になっただろ。狙われてるのか?」


「狙われるかどうかちょっと確認しただけだよ。でも今回はハズレだったかな。あいつらはただの物取りみたいだ」


「そんな確認すんな!どうしてもするなら俺にも絶対話してからにしろ!」


「何?知ってたら守ってくれたの?」

 レオがからかうように俺に言う。


「守ってやるよ」


 今はまだ守れる程実力はないけれど、この歳で誰にも頼らず何でも自分1人でやってしまおうとするコイツを1人になどしておけない。


 俺の答えが意外だったのか、レオは初めて俺の前で素の顔を見せた。


 この日が俺がレオの側近になろうと決意した時だった。

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感想を下さった皆様ありがとうございます(*´ω`*)


皆様のお陰でここまで書いてこれました。(๑>◡<๑)


暑い日が続きますが皆様お身体をご自愛くださいヾ(๑╹◡╹)ノ"

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