3人のお茶会
事の顛末を知ったリリがアナベルに疑ってしまったことを謝罪したいというので、休日に我が家へ二人をお招きして軽いお茶会を開いた。
リリが誤解していたことを告げ頭を下げて謝罪をすると、アナベルが慌てた。
「いえ、そんな。止めてください。私がリリアーナ様に何かされたわけでもありませんし、誤解されても仕方のないことをしていましたから」
アナベルがそう言ってもリリは気が済まないのか、ずっと頭を下げ続けている。
「クラウディア様ぁ」
何とかしてくださいと困り切った顔でアナベルが私に救いを求めてきた。
私は一つ咳払いをしてリリに話しかけた。
「リリ、誠意はもう十分に伝わっているわ。お茶が冷めてしまうからもうその辺にしましょう」
私がそう言うとようやくリリは頭を上げ渋々席に着いた。
アナベルもホッとした顔で席に着いた。
三人でマリーが淹れてくれた紅茶を味わう。
うーん、相変わらずマリーの紅茶は美味しいわ。
美味しいものは人を幸せにしてくれるわよね。
「そう言えば、あの日リリは結局ずっと馬車の中にいたの?」
屋敷から出てこないダレルをずっと馬車の中で待つのは大変だったんじゃないかしら。
私がそう尋ねると、リリは首を横に振った。
「いいえ、ダレル様とバーロウ家で一緒にいたわ」
あれ?
尾行するんだったわよね?
もしかして尾行がバレちゃったのかしら?
いやでもダレルはその日は自宅待機よね?
私の顔に疑問が出ていたのか、リリはちょっと顔を赤くして説明した。
「あのね、ディアにダレル様を尾行するようにって言われたでしょう。だから私朝からダレル様のお屋敷に馬車で向かったの。でも、ダレル様が馬車でお出かけするなら私も馬車で追いかけることが出来るけど、もし歩いて行かれたら私の足じゃ追いつかないなって思ったのね」
ああ、そうよね。ダレルとリリの身長差って30cmは軽くあるものね。
「見失ってしまったら困るなって思って、だから私ダレル様にお願いしに行ったの」
ん?
「私が後ろから尾行しますから、ちょっとだけゆっくり歩いてくださいって」
・・・リリ、それ尾行じゃないわ。
そうよね、生粋のお嬢様のリリに尾行は無理よね。
私が悪かったわ。
アナベルも顔を横にして隠しているけど絶対笑ってるでしょ、肩が震えてるもの。
「そしたらダレル様はなんて?」
「すっごく驚いてらしたわ。なぜ尾行をするのかって聞かれたから、それは秘密ですって答えたの。だってダレル様に知られたらダメでしょう?」
うん、その時点でもうダレル知っちゃってるけどね。
ちょっとアナベル呼吸出来てる?なんかヒクヒクしだしてるわよ。
「でもずっとダレル様なぜなのかってお聞きになるから、つい私言ってしまったのよ。ダレル様の浮気現場を取り押さえにいくのです!覚悟してくださいって。そうしたら違うって。今はまだ理由は言えないけれど君を裏切ることなど天が裂けようとも決してしないって」
その時のことを思い出したのか、うっとりと天井を見上げるリリ。
私はその隙に呼吸困難に陥っているアナベルの背中をさすってあげた。
「仲直りしたみたいで良かったわね」
息も絶え絶えのアナベルを横目で見ながら私は紅茶を一口飲んだ。
「ええ、本当に私ったらとんだ誤解をしてしまって。ダレル様にもアナベルさんにもディアにも本当に迷惑をかけてしまったわ。二人とも本当にごめんなさい」
「良いのよ、リリ。あなたは何も悪くないわ」
「そうですよ、もうお気になさらないで下さい。リリアーナ様」
あら、アナベル復活したのね。目じりに笑い涙がまだ付いてるけど。
「ありがとう、二人とも優しいのね」
にっこりと笑うリリは最高に可愛い。
でも本当にアナベルがダレルと恋人同士じゃなくて良かったわ。
折角リリを修道院行きルートから逃がしたのに、ルートが戻ってしまうのかと思ってヒヤヒヤしたもの。
あ、いけない。またゲームの展開のこと考えてしまったわ。この癖も直さなくちゃね。
「ところで、クラウディア様は結局どちらとお付き合いすることにしたんですか?」
アナベルがいきなり爆弾を放り投げてきた。
リリもこの話題に食いついてくる。
「え、どっちってなんのことですの?王太子殿下の他にどなたがディアに告白しましたの?」
「あ、ご存じなかったですか?アーサー様ですよ。アーサー=シモンズ様」
アナベルが遠慮なく教えてしまう。
やーめーてー。
「まぁ、アーサー様が!まぁまぁまぁ。なんて素敵。ディアはどちらがお好きなの?」
二人してそんなキラキラした瞳でこちらを見ないで。
「どちらって言われても。まだ先日の混乱がようやく治ったばかりだものそんなすぐに決められないわ」
「そうなんですか?私は王太子殿下をお勧めしますけど」
アナベルがレオを推すと、負けじとリリもアーサーを推す。
「あら、断然アーサー様ですわ。子供の頃はちょっとアレでしたけど、大人になったアーサー様は素敵だと思いますわ」
まあ、私はダレル様が1番ですけれど。としっかり惚気るのを忘れないリリ。
「いやいやいや、お二人にもお見せしたかったですわ、王太子殿下がクラウディア様に冷たくした後の姿。もう傍目で分かる位落ち込んでしまって、特にクラウディア様から馬車の割り込みの件で軽蔑の眼差しを受けた後なんか壁に頭着けてしばらく固まっていましたからね。もうおかしくって。あんなに落ち込むならあんなひどい事言わなければいいのに。完璧な王子様なのかと思っていたら、クラウディア様のことになるとただの愚かな恋する青年になってしまうんですね。クラウディア様にもう許してもらえないかもしれないって涙目になってアーサー様に訴えていて、アーサー様に呆れられてましたよ」
結構アナベルも暴露しちゃうわよね。いいのかしら、コレ私聞いちゃって。
取りあえず聞かなかったふりしましょ。じゃなきゃ次レオの顔見たら反応に困ってしまうもの。
「アナベルさんは良いなって思ってる方はいらっしゃらないの?」
リリがアナベルに話題を振る。
「私ですか?うーん、そうですねぇ。今回のおかげでお金の心配をする必要もなくなりましたし、出来ることならこのままずっと独身でいきたいですね。男性に振り回される人生は私は御免です」
「まぁ、アナベルさん位可愛いらしい方でしたら、どんな男性でもよりどりみどりでしょうに」
「それではダレル様の愛人に立候補しても宜しいですか?」
「それはダメです!ダレル様は私だけのものです」
バツと人差し指をクロスして拒否するリリ。
「残念。あ、じゃあクラウディア様の愛人にしてください」
「え?私?」
いきなり指名されてびっくりした。
「ええ、あの時助けに来てくれたクラウディア様本当に格好良かったです。もう私のヒーローって感じで。王太子殿下やアーサー様に飽きたらいつでも私を呼んでください」
いやそんなコールガールじゃないんだから。
「あら、それ素敵ね。私も交ぜて欲しいわ」
リリもノリノリである。
そうね、女3人こうやってお茶を飲みながら笑いあう日々も素敵よね。
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リリとダレルのリクエストがあったのでこちらに載せてみました。(*´ω`*)