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王子来襲

 あれから真っ青な顔で戻ってきた私にびっくりした王妃様は王宮専属医を呼んでくれようとしていたが、私はそれよりも一刻も早く王宮から去りたくてお母様にしがみついて「なんでもない、でも帰りたい」と訴えて挨拶もそこそこに王宮から屋敷へ戻ると、自分の部屋に閉じこもって誰も入れず一人布団の中で震えていた。

 

 やばいです。私やらかしちゃいました。

 自分が振られる未来が分かっていたものだから、ついついこんな軽い気持ちのせいでって怒ってしまったけれどもまだヒロインちゃんと出会っていない王子様からしたら、王妃にふさわしいと褒めたのにぶたれて説教されて正座までさせられたのだ。


 いや、もうこれ打ち首縛り首じゃないかなぁ。ハハハ。


 修道院へ行く前に牢獄に行くとは思わなかった。


「・・・・・・子供のしたことですからで許されないかな」


 無理だよねぇ。大体加害者(わたし)が言うセリフじゃないもんね。

 私も前世で友達と遊ぶのに駅で待ってたら子供にぶつかられてアイスべっちょりスカートに付いちゃって、その親御さん謝ってくれたのは良いけど、子供のしたことですから~って言ってクリーニング代もくれずに来た電車に乗って逃げて行ったもんね。


 そのセリフは加害者(あなた)が言っていいセリフじゃないですからー!って腹が立ったの覚えてるもの。無理よ無理。

 そんなこと言おうものなら火に油よ。


 ここは潔く謝るしかない。10歳の子供に悪いことしちゃったのに謝りもせず逃げてきちゃったなんて、大人がして良い態度じゃなかったわ。

 

 でも、謝罪しても許されないわよね。良くて修道院悪くて打ち首。ハッ、もしかしてお父様やお母様も打ち首!?お家断絶!?

 どーしよう。


 ・・・・・・・・・・・。


 出家しよう!!


 しばらく考えた後私は覚悟を決めた。

 私が自ら出家すればどんなに王家が怒っていても肝心の私は断罪されるまえにこの家から縁を切っているわけだから、お父様やお母様には累が及ばないかもしれない。


 修道院に行きたくなくてあがいていたのに自ら行く羽目になるとは思わなかった。

 私は机に座りペンと紙を出してお父様お母様宛てに1通。

 そして謝罪と反省をふんだんに込めた手紙を王子様宛てに1通書いた。


 特にレオン王子宛てには涙を誘うような文章をない頭をひねってひねって書き上げた。

 もしかしたらそれを読んだあの優しい王子様が私を許してくれないかなぁというささやかな期待を込めてのことだ。

 

 まぁ無理だろうけど。

 結局私の未来は修道院行きしかなかったのだ。これが噂のシナリオ強制力というものだろうか。なんと恐ろしい。


 書き上げたころには窓の外は真っ暗だった。

 そうだ、荷造りもしなくちゃ。

 一番大きなバッグに着替えを数着となけなしのお小遣いを入れる。


 明日は誰よりも早く起きて屋敷を出て辻馬車を拾って一番近い修道院へ出家の申し込みをしなくちゃいけない。

 下働きの人たちは早起きだから、その人たちより早く起きなくっちゃ。おやすみなさい。


 やることが決まってホッとしたのか急激に眠気がきて私は泥のように眠った。


◆ 

  

 おかげさまで良く寝ました。朝起きたときはもはや朝ではなく昼でした。

 

 やっちゃったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。


 8歳の身体は十分な睡眠を欲するものです。


 いやぁぁぁぁぁぁぁぁ。どうしよう。


 今からこそ~っと部屋を抜け出して行くっていうのはもう無理よねぇ。


 ドアの向こうでは大勢の使用人達が動いている。


 庭師達だってもう仕事している。絶対無理。


 私の部屋から物音がしたので、私の起床に気づいたマリーが入ってきた。

 

「お嬢様おはようございます。ご気分はいかがでしょうか?」


「・・・最悪」


「え?」


「あ、いえ。大丈夫よ。心配かけてごめんなさい。ところで今何時?」


「お昼を回られたところです」

 ああ、やっぱり。お日様あんなに高い所にあるものねぇうふふ。


「こちらに昼食をお持ちしますね。数刻より前にお嬢様へご来客がありますので、体調が宜しければ支度が済み次第応接間へ来られるようにと奥様からのご伝言です」

 ひぃ!


「それは、私のお友達とかかしら」

 かすかな願いも木端微塵。

「いえ、王宮の馬車でした」

 ひえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!


 やっちゃったぁ、間に合わなかった。なんで私ぐーすか寝ちゃったのかしら。もうバカバカバカ。


 昨日体調が悪かった私の身体を考慮して食べやすいものをシェフが作ってくれていたけれども、私は緊張のあまりろくに喉を通らなかった。


 食事が終わると優秀なマリーによっててきぱきと支度され、ぽいっと部屋から追い出された。


 はー家の中なのに断頭台を上る気分。


 誰が来ているのかしら。やっぱり私を捕まえに来た兵士とかよね。

 逃げられないので重い気持ちでノックして入る。


 そこにいたのは、やたらご機嫌なお母様と優雅に紅茶を飲むレオン王太子殿下だった。


 ぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!

 

 大本がきたーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!

 

 兵士が捕まえるなんて生ぬるいから自分の手で私を捕まえにきたの!?


 ドアの前でただ突っ立っている私をお母様が迎えに来た。


「どうしたの?ディア。まだ具合悪いの?」


「あ、いえ。なんでもありませんお母様。ちょっとびっくりしてしまって」

 

「うふふ、そうでしょう?マリーにはあなたにレオン王子が来ていることを内緒にしてもらったもの。ね、ビックリしたでしょう」

 ええ、びっくりしてチビリそうになりましたよ。


「レオン王子はね、あなたが昨日体調を崩したことを聞いてわざわざお見舞いにいらしてくださったのよ。せっかくお見舞いにいらしてくださったからディアを起こそうかと思ったのだけれども、レオン王子が可哀そうだから起きるまで待つと仰って下さってね。なんて優しいお方なんでしょう」

 さあさあと私をレオン王子の元へ押していくお母様。


 いーやーやめてー。レオン王子の笑顔が地獄の門にしか見えないー!!!


 すとんと王子のちょうど対面のソファーに座らせられて、私は冷や汗だーらだら。

 気分はまさに蛇に睨まれた蛙のよう。


「昨日ご気分が悪くなられたとのことで、体調はいかがですか?」


 柔らかく問われているのに、私の耳には獄吏の声にしか聞こえない。


「ええ・・・・・大丈夫です。ご心配をおかけしまして・・・・」


 まともに王子の顔が見れずにうつむいて声も尻つぼみになってしまう。


 こんなんじゃいけないわ、私も良い大人なんだからちゃんと謝ろうって昨日決めたじゃない。

 

「あの、昨日は王太子殿下には大変失礼致しました」


 座っていたソファーから立ち上がり頭を下げて謝罪する。


「あら、何かあったの?」

 お母様が不思議そうに尋ねる。


「いいえ、何も。クラウディア嬢は気分が悪くなって途中退席されたのを謝罪して下さっているのですよ」

 すました笑顔でお母様に答えるレオン王子。


 え、もしかして昨日の事まだお母様に伝えてないの?

 っていうか、もしかして私の事許してくれるの?


 さっすがゲームの世界の完璧王子様。懐が深い。

 ヒロインちゃんとのラブラブ私しっかり応援するからね!


 ほっと胸をなでおろしてソファーへ再度座り、紅茶のカップを手に取る。


「そういえば、クラウディア嬢のお部屋には本が一杯あると聞きました。少し見せてもらっても構いませんか?」

 一口飲んだ紅茶をぶっとカップに戻してしまった。


「失礼。えーっと私の部屋ですか?」


「はい、是非」

 レオン王子の笑顔の圧が凄い。


 これ許されてませんね、私。あれですね、邪魔者のいないところできっちり片つけようじゃないかってやつですね。

 何も知らないお母様はニコニコ笑顔で王子様に賛成する。


「・・・ご案内いたします」


 白旗あげました。だって元々私が悪いんですからね。


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