レオの到着
日がだいぶ落ちて夕焼けの光が窓から差し込んだころ、一台の馬車が止まる音がした。
レオが来た!?
窓の外を見るが位置的に見えない。
ドアに駆け寄りもう一度ドアノブをひねると、開いた!
さっきは確かに鍵が閉まっていたはずなのに。
まあ、そんなこと今はどうでもいいわ。それよりレオが来たのか確認しないと。
こっそりとドアから出て近くの柱の影に隠れる。
玄関のドアが開いてレオが入ってきた。
一人だ!
対面にはルーカスとロージー卿と数人のくたびれた男達がいる。
「これはこれはレオン王太子殿下。ようこそいらっしゃいました」
ロージー卿が興奮しきれない様子でレオに話しかける。
「私はアナベルに誘われてここへ来たのですがね。アナベルはどこです?」
「ふおっほっほっほっほ。この期に及んで女の心配ですか。安心してください、もうすぐ会わせて差し上げますよ。二人仲良く地獄でね」
ヤバいわ、レオ。なんで一人で来ちゃったのよ。いつものあなたならこんなバレバレの罠簡単に見破れる筈なのに。
アナベルはどこにいるのかしら?こうなったら私が彼女を助けてあげないと。
キョロキョロ探していたら、レオの低い笑い声が聞こえた。
「地獄ですか、それはどちらのことを言っているのでしょうね。分かりませんか?私がここに立っている時点で勝負は既に終わっているのですよ」
「何を言うか貴様!ハッタリもいい加減にしろっ!!おいっ、誰かあの女を連れてこいっ!王子の目の前で殺してやるっ!!」
仲間の中年男の一人が後ろに向かって叫ぶが誰も出てこない。
「おいっ、早くしろっ!何してるんだっ!!」
男が更に大声で怒鳴ると、キイっと後ろのドアが一つ開いてボスが転がり出て来た。
「こいつのことか?」
騎士団の制服を着たアーサーが伸びたボスの頭を靴の先でつついていた。
「な、なんだ貴様はどこから入ってきた!?」
アーサーの後ろからゾロゾロと騎士団のメンバーが出てくる。
「チェックメイトですね」
レオの言葉と共に騎士団のメンバーが次々と男達に襲い掛かり捕縛して行った。
「ええい、触るな。ワシに触るんじゃないっ!」
懐に隠し持っていた短刀を振り回してロージー卿がこちらの方へ逃げてきた。
ヤバい。
目が合った。
ロージー卿は短刀を振り上げながら私に迫ってきた!
やられる!
思わずぎゅっと目を瞑ると、横から衝撃を受けて私は床に転がった。
目を開けるとレオが私に覆いかぶさっていた。
「レオ!何してるの?大丈夫!?」
レオの右肩の衣装が破れて血が出ていた。
「ちょっとかすっただけだよ、問題ない。ディアは怪我してないかい?」
「私は、大丈夫。レオが庇ってくれたから」
「そう、良かった」
見るとロージー卿はアーサーに床に押し付けられていた。
「くそぅ、離せ、離せぇぇぇ、ワシを誰だと思っておる。ワシこそはこの国の影の支配者だ。王も王子も皆皆ワシの前にひれ伏せばいいのだぁぁぁぁ!」
口から泡を飛ばして妄言を垂れ流すロージー卿。
哀れだ。
「連れていけ」
アーサーがロージー卿を縛り上げて部下に引き渡す。
「クラウディア様!」
アナベルが部屋から出てきて私の元へ走ってくる。
「良かったわ、ご無事でしたのね」
アナベルは私の首にかじりついて泣いていた。
レオに縛られていた紐をほどいてもらい、久しぶりに手の感覚を取り戻す。
あー、良かった。手が後ろにあると体のバランスを取るのが地味に大変だったのよ。
手をぐっぱーぐっぱーしていると、アナベルが真剣な顔でレオの前に立ち頭を下げた。
「申し訳ありませんでした。私の不注意でクラウディア様を巻き込んでしまいました!」
え?何?どういうこと?
巻き込まれた覚えはないわよ。飛び込んだ覚えはあるけど。
「不可抗力です、仕方がありません。まさか私もわざわざ遠ざけておいたディアが、ど真ん中に飛び込んでくるとは思いませんでした」
え?何?意味が分からないんだけど。
なんでレオそんな呆れた声を出してるの?
あ、そうだ。それよりルーカスは!?ルーカスも捕まってしまったの?
見回すと玄関ホールのど真ん中にルーカスが一人ポツンと立っていた。
「ルーカス」
私がつぶやくと、ルーカスはこちらを見て歩いてきた。
そしてレオの前まで来ると手を胸に置き頭を下げた。
「潜入ご苦労でした」
「とんでもございません。お役に立ててなによりでございます」
えー何コレ何コレ何コレ。
なんなの?さっきから私一人だけ状況が読めてないんですけどー。
誰か説明して!
プチパニックになっていると、アーサーが頭にポンと手を乗せてきた。
「落ち着け、今説明してやるから」
本当ね、頼むわよ。もう訳が分からないの。出来るだけ詳しくお願いね。
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1部本編は明日で完結となります。1か月間ありがとうございました。(*^_^*)
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