移送中
「クラウディア様ごめんなさい。巻き込んでしまって」
二人とも目隠しと手を縛られて移送されている。
「いいのよ、私が勝手に首を突っ込んだだけですもの」
挙句の果てに失敗して一緒に捕まっちゃってるし。
これなら隠れて後を付ければ良かったわ。
なんとなくあのゲームのアーサーのようなことが私にも出来るんじゃないかと思っちゃったのよね。
結果はご覧の通りなんだけど。
「おい、勝手に喋ってんじゃねぇ。猿轡もされてぇのか!」
ボスの男が私達の座っている椅子の席を足で蹴ったようで、ガン!という音と振動が体に伝わった。横でアナベルの悲鳴が聞こえる。
全く乱暴ね。
それにしてもさっきこの男は誰かに頼まれてアナベルを誘拐するようなことを言っていた。
一体誰に?
考えられる線としては、
① 王太子に自分の娘を嫁がせようと考えていた貴族による犯行。
王太子と別れさせる為にアナベルを誘拐。
② アナベルを使って王太子に何かを要求。
③ 個人的にアナベルが誰かに恨まれている。
どれだろう。
アナベルを殺しても良いと言っていたから②の線は薄そうだ。要求が通る前に殺してしまっては意味がない。
①に関しても、いくら王太子を取られたからと言ってわざわざアナベルを誘拐までするだろうか。そんなことをするくらいなら、身分差を声高にして反対派の貴族を集めた方が成功率は高そうだ。(まぁレオが本気出したら身分差なんて問題にならないだろうけど)
それを言うなら③も誘拐なんてまどろっこしいことをしなくても一気にブスリとやってしまった方が危険度は少ない。
目の前で苦しませたいからなんて考えもあるだろうけど、そこまでアナベルが人に恨まれるようなことをするだろうか。
はっ、もしかしてリリのようにアナベルの魅力に惹かれて婚約破棄された男性の婚約者による犯行?
でもここ最近で誰かが婚約破棄されたなんて話聞いたことがないわ。
それに生粋のお嬢様がこんなチンピラ紛いと付き合いがあるとは思えないし。
・・・・・。
うーん、分からないわ。
私の頭ではこれが限界。
大体こういうのを考えるのは子供の頃から専らレオの専門だもの。
アーサーと私は特攻隊長。
大体レオが綿密な作戦立ててくれるんだけど、頭に血が上った私かアーサーが後先考えず飛び出して台無しにすることがほとんどで、でも結果はいつもレオの思い通りになるのよね。
あれ、絶対私かアーサーが切れた後のパターンも予測してたわよね。
考えても分からない場合は流れに任せるのも手よね。
どの道今は何も出来ないし、体と心を休めておきましょ。
馬車はしばらく走った後でようやく止まった。
「おら、降りろ!」
ボスが無理やり私とアナベルを引っ張って馬車から降ろす。
そのまま腕を掴まれて歩かされ、どこかの家に入れられた。
「お前はここで大人しく待ってろ!」
突き飛ばされて床に転がる。
「いいな、下手な真似したらあの女殺すからな」
今逆らっても仕方ないし、とりあえずしおらしく俯いておく。
男はドアに鍵を掛けて去って行った。
アナベルはどこに連れていかれたんだろう。
多分この家にいる誘拐犯の元に連れていかれたんだろうけど。
とりあえずこの目隠しの布だけ取れないかしら。
一生懸命顔の筋肉を使って布を取ろうとする。
ほっ、はっ、なんの、これまた、どうした。
眉を寄せたり上げたり鼻の下を伸ばしてみたり鼻の穴を開いてみたり、口をタコにしたり大口開けたりとあらゆる顔の動く筋肉を使って布をズラすことに一生懸命になっていたせいで、ドアが開いたことに気付かなかった。
クスクスクスと笑う声が聞こえる。
誰か来た!
「なんで、誘拐されて一人で百面相してるの?」
優しい声が耳に届く。
この声は!!
声の持ち主は私の前に座ると後ろの結び目をほどき、目隠しを取った。
暗闇から解放されて目に光が入る。
その目が最初に映した人物は、柔らかな笑顔とプラチナブロンドの持ち主だった。
「ルーカス様」
私は大きく目を見開いた。
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完結まであとちょっとです。お付き合いください。( ´∀`)