立ち聞き
まず最初に見学と言う名目でリリと一緒に農学科に行き、リリがいつも使っている隣の部屋に潜んでダレルとアナベルが来るのを待った。
リリから話を聞いて、本科中にアナベルの様子をこっそり窺ってみたが、特に変わった様子はなかった。
暫く待っているとダレルがリリの元へやって来た。
「やあ、リリー調子はどう?何か困ったことはない?」
「こんにちは、ダレル様。ええ、特に変わったことはありませんわ」
「そうか、それは良かった。じゃあ、僕は他の人も見て来るね」
「はい」
ダレルは部屋を出て行った。
正味1分。
え、短くない?
こっそり部屋から出るとリリはガッカリした顔をしていた。
「ダレル様いつもこんなに早くいなくなっちゃうの?」
「ええ、最近はずっとそうね。アナベルさんに夢中だから私の事なんてもう興味がないのよ!」
手で顔を覆って俯くリリ。
指の間から涙が伝って床にこぼれた。
「待って、まだ二人が恋人同士だと決まったわけじゃないわ。二人はいつもどこにいるの?」
「研究室のB-15の部屋よ。あそこは誰も使っていないから良くそこで二人で話しているわ」
「何を話しているか聞いてみたことあるの?」
「ダレル様に1度聞いてみたことがあるわ。でもつまらない世間話だってはぐらかされてお終いだった」
目じりにたまった涙を人差し指で掬い弱弱しく笑った。
「ちょっと様子を見て来るわ」
ドアを開けて外を確認してから歩き出す。
ダレルがまだその辺にいたら大変だ。
リリも私の後ろからついてきた。
「こっちよ」
場所が分からなくて止まってしまったら、リリが先頭に立って歩いてくれた。
リリに案内されてB-15の部屋にたどり着く。
そ~っとドアの窓から中を伺うとダレルがいた。
そしてドアに背を向けていたせいで後ろ姿しか見えなかったけれど、あの水色の髪は間違いなくアナベルだ。
本当に二人は密会していた!
いや、まだ分からない。もしかしたら二人は新肥料について討論しているのかもしれないし。
なんとかして二人の声を聞きたいが、ドアにへばりついていたら周りから変な目で見られるだろう。
うーむ、どうしたものか。
ふと横を見るとドアが見えた。
「こっちは何の部屋?」
小声でリリに尋ねる。
「そこは荷物置き場よ。肥料とか使わなくなった鉢とか置いてあるの」
それは、ナーイス。
私はリリを連れて隣の部屋に音を立てないように忍び込んだ。
壁際に積んである荷物を音がならないようにそっとどかし、二人分のスペースを確保した。
ちょっとお行儀が悪いけど、これもリリの為と壁に耳を付けて隣の部屋の声を拾おうと耳をすませた。
「でも・・・ない。も・・・らど・・・る・・・か」
おっ、聞こえる聞こえる。この声はダレルね。
「だい・・・ぶよ。しん・・・・で。その・・・にや・・・・んだから」
アナベルの声も聞こえる。でも今いち何を言っているか分からない。
リリも私の隣で真剣な顔で耳をすませている。
女子生徒が二人、倉庫の壁に耳を付けてる姿。シュールだわ。
「こんど・・どよう・・・・・を・・・・るわ」
今度?土曜かしら。あとは分からないわ。
もうっ、厚い壁ね。もっと手を抜きなさいな。
前世の私の住んでたアパートなんて隣の人のくしゃみまで聞こえたわよ。
隣の部屋のドアが開く音がする。
二人とももう帰るようだ。
音を立てないようにしばらくリリと倉庫の中で待機してから、元あった場所に荷物を戻して部屋から出た。
ふー、変な汗出たわ。
パタパタと顔を手で仰いでいるとリリが思いつめた顔をしていた。
「どうしたの?リリ」
正直全然声が聞こえなかったので収穫があったかなかったかでいうとまるでない。
でもドアの窓から見た感じだとそんなに二人はラブラブに見えなかった。
だから大丈夫だと思うんだけど。
「今度の土曜日って言ってたわよね、あの二人」
「ああ、うん、そうね。そう言ってたわね。でもそれがどうかしたの?」
「本当は私とデートの約束をしていたの。ダレル様。でも昨日突然行けなくなったって。用事が出来たからって。・・・アナベルさんとデートをする約束したから私とのデートをキャンセルしたのね!酷いわ」
えええええ!ダレルあなたなんてことを。
最低。
「邪魔してやりましょう!」
「邪魔って?」
「今のままじゃ浮気の証拠には弱いわ。もっと確実な証拠を掴むのよ!土曜日二人の後を付けて二人がラブラブになったところで乗り込んで婚約破棄を突き付けてやるのよ!」
それでも傷がつくのはリリだろうけど、あの二人にも思いっきり恥をかいてもらおうじゃない!
ただ念の為デートじゃなかった場合を考えて、ダレルの尾行はリリが。アナベルの尾行は私がすることにした。
さあ、首を洗って待ってらっしゃい、二人とも。
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