ジェイコブが襲ってきた
「クラウディア嬢見つけましたよ」
汗ばんだ手で肩を掴まれ抱き寄せられる。
ひぃぃぃぃ、出たジェイコブ!
「私本日は所用がございますのでこれで失礼いたしますわ」
具合が悪いなんて言おうものなら空き部屋に連れ込まれそうな予感がしたので、用事があると言ったのだが、ジェイコブは離さない。
「そんなに急いでお帰りになることもないでしょう。まだ我が家自慢の庭をご覧になっていないでしょう。ご案内いたしますので是非見てからお帰りになってください」
「いえ、それはまた次の機会に」
断っているのにぐいぐいと肩を抱かれて庭に連れ出される。
「あの、もう十分見ましたので結構です」
それでもジェイコブは止まらずにズンズンと庭の奥へ進んでいく。
嫌な予感しかしない。
「まあまあ、もう少し先に母上自慢の温室があるのですよ。そこの方が虫も出ませんし、あなたも都合が良いでしょう」
何の都合が良いのよ!
勝手にハァハァ興奮してて気持ち悪い。
「離してください。大声出しますよ」
「構いませんよ。あなたが叫ぶのと同時に私はあなたの胸を露わにしましょう。もちろんその後は私が責任もってあなたを妻に迎えます」
「あなたには婚約者がいらっしゃるでしょう!?」
「あんな女などあなたに比べたらそこいらの石にしか見えませんよ。罪作りなお人だ。ふっ」
本人はニヒルに笑ったつもりのようだが、私からは蛇がニタァと口を開けたようにしか見えない。
いやぁぁぁぁ、むりぃぃぃぃぃ。気持ち悪いぃぃぃぃぃ。
もうコイツ殴って良いわよね。
キツく抱きしめられているせいで腕が十分に使えないが肘なら当たる。
軽く引いて思いっきりジェイコブのわき腹に肘を打ち込んだ。
「グハッ」
ジェイコブは腹を押さえて地面に蹲った。
「無理強いする男性はモテませんわよ」
こちとら騎士団直伝で護身術も教わっている。そこいらのおぼっちゃんに手籠めにされる程柔じゃない。
痛みに呻いているジェイコブを尻目に颯爽と私は会場を後にした。
アナベルはレオと婚約して私は変態に襲われかけて。ヒロインとライバル令嬢って扱いに差がありすぎなんじゃないかしら・・・トホホホホ。
その後シルヴィ家は内部告発により裏帳簿や裏稼業が次々と暴露され、お家断絶となりジェイコブを見ることもなくなった。
あの息子を見る限り汚い事一杯やってそうだったものね、シルヴィ家。
他の女性が犠牲になる前にジェイコブが消えてくれて良かった。
◆
その日のシルヴィ伯爵家の夜会には大勢の貴族が参加していた為、レオとアナベルが婚約したという噂は一気に貴族の間で広まった。
王宮からの正式発表はまだだったが、それも時間の問題だろう。
アーサーも攻略途中だったと思うけど、アナベルはアーサーのことは一体どうするのかしら?
レオ一筋?それとも同時進行?
ベッドの中であれこれ考えていたら、マリーに就寝の時間だと告げられた。
途中まで読んでいた本を閉じ、掛け布団の中にもぐりこむ。
「おやすみなさいませ、お嬢様」
「おやすみなさい、マリー」
部屋の明かりが消され暗闇になる。
目を瞑りながら私は虹恋のゲームの世界を思い出していた。
虹恋は基本攻略対象を一人決めて遊んでいくアプリゲームだったが、実は逆ハーレムルートも存在していた。
ただしそれは上級者向けだった。
チョロ男とファンの間で呼ばれていた王太子だが、王太子ルートでは滅多なことでは好感度が下がらない癖に、逆ハールートで他の攻略対象者に近づくと途端に親密メーターがぐんぐん下がっていってしまうのだ。
だから虹恋で逆ハーレムルートをやろうとしたら、レオに構いつつも他の攻略対象者のイベントをこなさないといけない。
どちらに比重を置きすぎても失敗してしまう。
私は興味がなかったから一度もやらなかったけれど、友達のあかりちゃんはムキになってやっていた。
ヒロインが逆ハールートをやるつもりなのかどうかは分からないけれど、出来れば誰も傷つかなければ良いと思いながら眠りについた。
翌日そんな願いをあざわらうかのような出来事があるとも知らず。
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ジェイコブ編が思ったより量が少なくて加筆していたら遅くなりました。申し訳ありません。
いつも読んで頂きましてありがとうございます<m(__)m>