隣国でお見合いと言う名のバカンス
学園から戻るとお母様がニコニコしながらやってきた。
「クラウディア、学園が長期のお休みになったら旅行へ行きましょう」
突然のバカンスのお誘い。
「それは構いませんが、どちらへ行かれるのです?」
お母様は扇子で口元を隠して忍び笑いをした。
「カーラ帝国よ」
ん?
「隣国ですか?隣国のどちらに?」
「帝都よ」
避暑地じゃないんですね、お母様。いきなり首都とはビックリです。
「お母様のお父様、つまりディアのお爺様ね。そのお爺様に頼んで帝都の大貴族につなぎを取ってもらったの。そうしたらその方が長期の休みに私とディアの滞在を快く許可して下さってね、ディアに会えることを向こうの方も大層楽しみにしていらしたわ。長期休暇中はずっと帝都にいましょうね。パーティも一杯あるでしょうからドレスも何点か新しく作らないといけないし、アクセサリーも合わせて買いましょう。帝都の人達に野暮ったいなんて思われたら嫌ですもの」
あー、これはつまりー。
「お見合いですか」
私の導き出した答えにお母様はにっこり笑う。
「ご名答。お爺様に相談したらお爺様も大層お怒りになって私以上に尽力して下さっているの。絶対ディアにはレオン王太子殿下なんて目じゃない世界一の殿方に嫁がせてあげるわ!」
なぜかお母様はこの間からレオを目の敵にしている。
そんなに私より先に王太子に恋人が出来たことが悔しいのかしら?
それにしてもお母様ばかりかお爺様まで暴走中とは。
さすが親子ね。
隣国にはいつか行ってみたいと思っていたけれど、まさかこんな形で行くなんて思わなかった。
長期休暇まであと一カ月半あるし、今のうちに向こうの言葉を勉強し直しておかなくちゃ。
◆
帝国へ行く前に夜会に慣れておこうという事で、シルヴィ伯爵の夜会に出ることになった。
私のパートナーは大抵予定が合えばレオが。合わなければアーサーが務めてくれていたのだけれど、もう頼めないのでどうしようかと思っていたら、シルヴィ伯爵の末のご子息が務めてくれることになった。
初めシルヴィ伯爵は長男のジェイコブ様をパートナーに寄越すと仰って下さっていたのだけれど、ジェイコブ様には既に婚約者の方がいらっしゃるので、その方に申し訳ないので結構ですとお断りをしたら、それではと末のご子息を寄越してくれることになった。末のご子息であるヘンリー様はまだ13歳でパーティには参加資格がないのだけれど、今回だけ特例で参加することになった。
ご迷惑をお掛けして申し訳ありません。
今まで婚約者がいなくてもレオやアーサーがいたから困ったことがなくてノホホンときてしまったけれど、いい年して婚約者もいないと色々不便だということを実感した。
早く私も婚約者を作ろうっと。
夜会ではお母様のご命令で髪がアップされ、胸元が大きく開いたスカイブルーのドレスが選ばれた。
背の高い殿方とダンスを踊ったら間違いなく胸の谷間が見えるだろう。
背中もパックリ開いている。
こんなに露出したドレスを着たことがなかったので、なんだか恥ずかしい。
「あの、お母様。これにしないとダメですか?」
ドレスのデザイン的にはとても可愛らしい。綺麗なスカイブルーの生地の上に白バラの刺繍が裾からウエストにかけてふんだんに取り入れられ、大きな襞が動くたびにふわりふわりと広がってまるで私自身が花畑の中にいるようだ。
「この位今の若い御嬢様方は当たり前のように着ていますよ。ディアはスタイルが良いのだからもっと自信を持ちなさい」
お母様がそう言うとマリーも鼻息荒く同意する。
「そうですわ、お嬢様。とても良くお似合いです。お嬢様の白くて細いうなじと芸術的なデコルテラインを皆に自慢したいと常々思っていたのです。これ以外はマリーも認めませんわ」
そんな、マリ~。
強者二人に押し切られてドレスと髪型が決定した。
後はアクセサリーだが。
「お嬢様、どれにいたしますか?」
マリーが宝石箱から多数のアクセサリーを見せてくる。
その一つにレオから貰ったアメジストのセットがあった。
私は悩んだ末に一つのアクセサリーを選んだ。
夜会が始まるちょうど一時間前にシルヴィ伯爵家から迎えの馬車が来た。
てっきり末のご子息が出てくると思っていたのに、馬車から出て来たのは長男のジェイコブ様だった。
「お迎えにあがりました。美しい姫よ」
芝居がかったセリフで私の手を取るジェイコブ。
「あの、迎えはヘンリー様ではなかったのですか?」
私の質問にジェイコブはあちゃーと言った仕草で顔を上に上げ目に手を置いた。
いちいち動作が芝居がかっていて白ける。
「申し訳ありません、クラウディア嬢。ヘンリーは何せ子供なものですからこの大役を前にはしゃぎ過ぎて、直前になって寝てしまったのです。クラウディア嬢をこれ以上お待たせするわけにはいかなかったので、私が迎えに参りました」
「そうでしたか」
許可したわけでもないのに馴れ馴れしく名前呼びされて少し不快に感じる。
「それではご迷惑でしょうから私本日の参加は止めることに致しますわ」
クルリと背を翻した私の手をジェイコブが掴む。
「お待ちください、もう準備はすでに整っております。クラウディア嬢に会えることを楽しみにしている者も沢山おりますから今さら不参加にされると困ります」
ジェイコブに手を掴まれてゾゾゾっと体中に悪寒が走った。
「分かりました。分かりましたからその手をお離しになって。失礼ですわよ」
「あ、これは失礼いたしました。とても可愛らしくて柔らかな手ですね」
手を離す瞬間ジェイコブは親指の腹で私の手を撫で上げた。
ダメ~、無理~、気持ち悪い。
ジェイコブの婚約者さんには申し訳ないけれど、良くこんなねっとりした蛇みたいな男と結婚する気になったわね。
爬虫類好きなのかしら。
たまにいるわよね、蛇とかトカゲとか好きな女性。
でも私は犬猫派なので爬虫類はノーサンキューよ。
馬車の中でもジェイコブはやたら私の胸元に視線を寄越しているのが分かって泣きたくなった。
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大当たりです、おめでとうございます!!
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当たっていても物語の進行上致命傷とならないものはそのまま残してあります。
折角皆様がお時間割いて書いて下さった貴重な感想は出来るだけ残しておきたいと思っておりますので。
完結後に大当たりされた方の発表をさせて頂きます。
〔何も景品出ませんが。笑〕
もし名前を出されるのがお嫌な方がいらっしゃいましたらご連絡ください(^人^)