親密度50%超え
アーサーがいなかったから鬱憤がはらせずに、夜になってもモヤモヤしていて中々眠れなかった。
おかげで翌朝少しばかり寝坊してしまった。
いつもは混む前に学園に着くのに、一番混んでいる時間に来てしまった。
馬車停留所で順番が来るのを待ってから降りると、後ろから順番を抜かして停留所にやってくる馬車があった。
なんて無作法な。
私が眉をひそめて見ると、それは王家の馬車だった。
レオが権力にあかせてこんな無礼な真似をするとは思えない。
何か王宮から急な連絡でもあったに違いない。
てっきり使者が乗っているのだろうと思って見ていたら、ドアが開くとレオが降りてきた。
「!?」
レオは1段階段を降りると振り返り、馬車の中に向かって手を差し出した。
中から白くてほっそりした手がレオの手を掴み、ドアから姿を現した。
アナベルだ。
レオはアナベルをエスコートして馬車から降ろすとそのまま二人で歩き出した。
周囲の目が二人に注目する。
これは親密度50%以上になると発生する送り迎えだ。
ヒロインは地方から出て来た為、普段は学園が用意した寮に住んでいる。
歩いて20分程度の場所だから普段は徒歩通学なのだが、攻略対象者との恋愛が進むと馬車で迎えに来てくれるようになる。
それにしても早い。まだ二人が出会って1カ月も経っていないのに、もう親密度半分越えとは。
さすがチョロ男。
私が見ていることに気が付いたアナベルがレオに耳打ちする。
レオは私を見てちょっと驚いた顔をした後こちらへやって来た。
「おはようクラウディア。今日は随分と遅いんだね。停留所は混むのだから、君のような高位の者は皆に気を使わせない様に早めに来た方が良いよ」
どの口がそれを言うのか。
「おはようございます、殿下。少し所用がございまして出るのが遅くなりました。明日からはまた早く来るように致します」
「うん、そうだね。その方が良いよ」
私の答えに満足したのか、そのままアナベルと二人で歩き出そうとする。
昨日からムカついていた私は思わずレオを止めた。
「しかしながら殿下。先ほどのような御振舞は王家に傷を付けることになりかねません。お気を付け下さいますよう」
レオの足が止まる。
「どういう意味かな」
レオの冷たい目が私に突き刺さる。
こんな目で見られたのは初めてだ。
でも引くものか!
「先ほど並んでいる者達を無視して停留所に来られましたね。殿下の行為は王家の行為とみなされます。お気を付け下さい」
「アナベルを長い間馬車で待たせる訳にはいかないだろう、可哀そうじゃないか。君はそんな固い性格だから長い間婚約者が決まらないんじゃないのか。少しは柔軟に物事を考えたらどうだ」
よ、余計なお世話よっ!!!
この恋愛バカバカ脳王子!
もう知らないっ!!
あの冷静で切れ者のレオが恋愛一つでこんなにおバカになるとは思わなかった。
恋は人を変えるとはよく言ったものだ。
「失礼致しました」
これ以上相手にするのも嫌なので、さっさと謝罪して終わりにした。
レオは私の謝罪を受け入れ大勢の生徒が注目する中、アナベルの背に手を添えて校舎の中に入っていった。
周囲が同情の目で残った私を見つめる。
ふんだ、レオのバーカ。アーホ。間抜けのコンコンチキ。将来禿げてテッペン1本毛になってしまえ!
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着々と完結に向けて進んでおります。
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