二人の恋は順調です
翌日からアナベルは嬉々として政治経済学科に通うようになった。
私はあれから政治経済学科には顔を出していない。
出たところで意味がないからだ。
ゲームのクラウディアはヒロインが王子に近寄ることが許せずヒロインに注意をしてしまう。しかしそれを見た王子が「心の狭い女だな」とクラウディアに告げて、それ以降クラウディアは王子に無視されるのだ。
こちらに正義があろうとも恋をした男女に忠言するだけ無駄と言うものだ。
だから私は何も言わない。
ゲームと違って私はただのお友達だし。
フリーな男女が恋仲になるのは悪いことではない。
しかし私がそう考えていても世間の皆様がそう考えているとは限らないのは確かだ。
その日は本科が終わった後の事だった。
終了の鐘が鳴り皆が立ち上がる中、甘い匂いが私の鼻孔を掠めた。
匂いをたどって視線を向けると、本をしまう為に開けたアナベルのバックの中からだった。
私の視線に気が付いたアナベルが照れくさそうに笑った。
「レオン様にお礼を込めてマフィンを作ってみたんです。レオン様甘い物お好きだと良いのですけど」
もう名前呼びの仲になっている。
ゲームの中で手作りお菓子のプレゼントも親密度をあげる重要ポイントだ。
着実に二人の仲は親密になっているといえるだろう。
まあチョロ男レオンはヒロインが傍にいるだけでどんどん好感度上がっちゃうんだけどね。
「甘いものは苦手ではなかったと思いますよ。お勉強頑張って下さいね」
「はい、ありがとうございますクラウディア様。クラウディア様は今日も政治経済学科には来られないんですよね?」
「ええ、私は別の科を見学に行く予定です」
「そうですか、良かった」
え、何が?邪魔者がいなくて良かったって意味ですか?
「ちょっと、あなた。その言い方はクラウディア様に失礼ではないの!?」
クラスメートの一人がアナベルに怒って詰め寄る。
その声を聞いた他の女生徒達もワラワラと寄ってきてアナベルに注意をし出した。
「大体あなた一人なぜ政治経済学科で勉強を教わっているのです!?不公平ではありません?」
「そうよ、そうよ。政治経済学科におられる他の方達の迷惑を少しお考えになったらいかが?」
「あまつさえクラウディア様を邪魔者みたいな言い方をなさって。ご自分の立場を少しお考えになったらどうなの?」
「あなたがクラウディア様に敵うとでも思っているのだとしたら随分な思い上がりですわよ」
「え、あの。私そんなつもりじゃ・・・」
大勢に責められてアナベルが小さくなっている。
大変だわ、助けなきゃ。
皆を止めようとした瞬間空気を破るような鋭い声が聞こえた。
「そこで何をしているのです!?」
決して大声ではないのに人を従わせるに十分な威厳を持った声。
レオだ。
「レオン様!」
アナベルが囲みから抜け出してレオにしがみ付く。
レオはそんなアナベルを自分の後ろに置いて守る。
「この騒ぎは何事ですか?」
レオの前で女子生徒達は先ほどの勢いをなくして俯いてしまう。
「栄えあるエリクセル学園の生徒でしたら、愚かな真似は止めることですね。クラウディア」
「はい」
「あなたは我が国筆頭の侯爵令嬢でしょう。なぜこのような愚行を黙って見ていたのですか」
「申し訳ありませんでした」
止める前にレオが来ちゃったんだからしょうがないじゃない。
でも言った所で言い訳にしか取ってもらえないから黙って頭を下げる。
「以後気を付けるように」
「はい」
それ以上レオは何も言わずアナベルを促して教室から出て行った。
「あの、クラウディア様申し訳ありません。私達のせいで」
女子生徒たちが私に謝ってくる。
「宜しいのですよ。皆様は私のことを心配してくださっただけでしょう。王太子殿下は少し誤解をしただけです。皆様がお気になさる必要はありませんわ。でも確かに周りからみたら余り良い姿ではありませんから、今後は止めましょうね」
「「「はい」」」
うんうん、素直な良い子達だ。
大体王太子が一人の女子生徒を特別扱いするからこんなことになるのだ。
さっさと婚約者にして守ってやれば良いものを、曖昧な態度でいるから女子生徒達の不満がアナベルに集中してしまうのだ。
言わばレオのせいなのに、なんでその後始末を私がしなくちゃいけないのよ。
私はあなたの婚約者じゃないのよ!
プリプリしながら剣術科に向かうがアーサーはいなかった。
もうっ、私のこの怒りどうしてくれよう!!!!!
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