表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/109

レオとアーサー

 エリクセル学園は通っている生徒が全員貴族の為、朝の馬車停留所はとても混む。

 混雑を避ける為に私は少し早く出るようにしていた。

 今日も生徒がまばらなうちに着いて学園に入っていこうとしたら、声が掛けられた。


「あの、クラウディア=エストラル侯爵令嬢!」


「はい?」

 横を見ると知らない男子学生だった。


「何か私に御用でしょうか?」

 対外用スマイルで応対すると男子学生はみるみる内に顔を真っ赤にした。

 あら、どうしたのかしら?熱でもあるのかしら?

 もしかして私に助けてほしくてSOSを?


「大丈夫ですか?どこが具合でも・・・」

 私が近寄ると男子学生は焦って手を上下にパタパタさせていた。

 なにかしら?何かの儀式?


「いえ、あの。大丈夫です。そうじゃなくて、あの。僕、以前エストラル侯爵令嬢をお見かけしてからずっとス・・・・・・すすすすす、すみませんでしたー!」

 男子学生は真っ青になって逃げて行ってしまった。


 えー?一体何なの?

 訳が分からず首を捻っていると、後ろから綺麗な声が聞こえてきた。


「おはようディア」


「レオ!おはよう。今日は早いのね」

 声変わりをして低くなってもレオの声は綺麗だった。


 キラキラの容姿に相応しい声よね。


「折角君と同じ学園生活を送れる貴重な一日だからね。ディアは今日も綺麗だね」


「まあ、ありがとう。そう言ってくれるのはレオ位なものよ。さすが皆の憧れの王子様ね」


「誰にでも言っているように言わないでくれ。こんなセリフ君にしか言わないよ」

 嘘だー。レオが群がるご令嬢をうまくかわしてるの何度も見てるもの。

 まあ、この位言えないと王子様は務まらないのかもね。


「ところで今日は政治経済学科に来るかい?」


「んーまだ決めてないけど」


「入るつもりはないの?」


「まだ考え中」


「そう、決まったら教えてね。私も移るから」


「うん。え、何?移るって?」


「ディアと同じ学科に行くってことだよ。ディアが政治経済学科に来るならそのままいるけど、違う学科なら私も移るよ」

 いやいやいや、何言っちゃってるの?この王子様。


「3年は卒業前に専科の発表もあるし、移動しちゃダメでしょ」


「別にどこに行っても私は出来るから問題ないよ。消去法で政治経済学科を選んだに過ぎないし」


 そりゃレオならどの学科に行ってもトップ取れるだろうけど。


 レオが入った年とその下は政治経済学科の倍率が物凄かったと聞いている。

 今在籍している生徒たちはそんな熾烈な争いを勝ち抜いた精鋭(エリート)達だ。

 全員が少しでもレオと親しくなりたくて頑張って勉強しただろうに、私のせいでレオが移動したら私が全員から恨まれてしまう。

 勘弁してほしい。


 どうにかレオの意見を変えたいけれど、幼い頃からレオを思い通りに出来た試しなんかない。

 レオの方が1歩どころか10歩も20歩も上なのだから。

 きっと何を言っても言いくるめられてしまうだろう。

 困ったなぁと思っていると、魅惑のボイスが降ってきた。


「女に合わせて進路を変えるなんてダサいぞレオ」

「アーサー!」


 長い脚を持て余しているかのように歩いてくる。その姿は美しい獣のようだ。

 アーサーは私の傍まで来ると私の頭をくしゃくしゃと撫でた。 


 もうっ、折角マリーにセットしてもらったのに。

 乱れた髪を手で直していると、レオがアーサーに冷たく微笑んだ。


「誤解される言い方は止めてくれるかな、アーサー。剣術バカな君と違って私はどこに行っても問題はないんだよ。政治経済学科で修めるべき科目は1年で履修し終えているからね。王太子業務の時間を取る為だけにいる必要もない学科にいただけだ」


「王太子業務は今後もあるんだからそのままそこ(政治経済学科)にいれば良いだろう」


「3年目は自由にしていいと言われているのでね。王太子業務は最低限しかやらないから心配は無用だよ」

 アーサーは親指でクイッと私を指す。

「こいつが困っているだろう」

「ディアのことになぜ君が口を出して来るんだい?それこそ余計なお世話と言うものだよ」


 アーサーとレオが睨み合う。

 二人の間で冷たい火花が散っている。


 なぜだろう、ここ数年でこの二人はこうやって対立し始めた。

 昔はアーサーは絶対レオに逆らったりしなかったのに。

 まあ側近がYESマンじゃ困るだろうけど。


 普段は仲が良いんだけどな。


「はいはいはいはい、そこまで」

 私は二人の間に割って入った。

 やって来る生徒の数も段々増えてきたし、このまま二人が反発し合っているのを見せるわけにはいかない。


「今日は政治経済学科に見学に行くわ、入るかどうかは後で決める。それで良いでしょう?レオ」


「もちろんだよ、ディア。私が案内してあげるからね」

 レオが満足げに頷いた。


「良いのか?」

 アーサーが私に確認する。

 私は頷いた。


「元々政治経済学科も見学に行こうと思っていたから問題はないわ。ありがとね、アーサー」


 私がそう言うとアーサーは無言でまた私の髪をくしゃくしゃに撫でた。

 もうっ折角直したのに何するの!?

ブックマーク登録&評価をして下さった皆様ありがとうございます。<m(__)m>


感想くださった皆様ありがとうございます。<m(__)m>


皆様のおかげで書く気力が湧いてきます。(*^_^*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ