ヒロイン発見!
新入生は講堂集合の為途中でアーサーと別れた。
講堂には既に大勢の新入生たちがいて、私は目立たないように後ろに並ぼうと思っていたのに、私の姿を見た子息令嬢たちが何故か道を開けだして、モーゼの海割りのようになってしまった。
え?なんで?
呆然と開いた道の前で突っ立ってしまったが、私が動かないといつまでも道が開いたままだと気が付いて、仕方なく前へ進んだ。
進んでいる最中に「あれがエストラル侯爵令嬢か」とか「あれがクラウディア様ね」とか「王太子殿下の」とか声が聞こえたけれど、私何もしでかしてませんからー!!
私ただのライバル令嬢で悪役令嬢じゃありませんから!
私、皆に怖がられてる訳じゃないわよね!?ねっ!!
歩いている最中に一人の男子生徒と目が合ったけれども、私と目が合った瞬間にサッと目をそらされてしまった。
うわーん。なんで??
シクシク心の中で泣きながら大人しく一番前で入学式の開始を待った。
しばらくすると学園長が現れて式の開始を宣言した。
学園長や来賓の方達の長い祝賀挨拶が終わると、生徒会長が壇上に現れた。
生徒会長はゲームの中の生徒会長とやっぱり同じだった。
名前はジャスティン=クロムウェル。
白髪を後ろにキッチリ流し、黒縁メガネの典型的な真面目キャラ。
長身に厳しい雰囲気が一部の女子生徒のハートを早くも掴んだようで、あちこちで女子生徒の「ほぅ」というため息が聞こえる。
壇上の生徒会長をぼんやり眺めていると一瞬生徒会長がこちらを見た。
ん?
なんか睨まれたような気がするけど、気のせいよね?
初対面だもの。
きっと生徒会長の目つきが悪くてそう見えただけよ。うん。
長くて退屈な入学式がやっと終わって新入生たちは自分達のクラスに別れた。
クラスは成績順で分けられ、私はAクラスだった。
リリも同じだった。
後は肝心のヒロインちゃんなんだけど・・・。
正直言って外見で見つけるのは困難だろうと思っていた。
虹恋の売りの一つがアバターを自分で好きに変えられることだったからだ。
丸顔卵顔たれ目釣り目ショートにロングと髪色も自由に変えられ、10人いれば10人が違うヒロインになった。
私は主に丸顔たれ目のタヌキ顔を選択していたけれど、友達のあかりちゃんは尖った顎大きな目ピンクの髪とこれぞ少女漫画のヒロインだと言わんばかりのアバターを作っていた。
名前も自分で好きに変えられたからファーストネームで見つけるのは無理よね。
だとすると後はファミリーネームで見つけるしかないのだけれど。
確かヒロインのファミリーネームは・・・。
「アナベル=バートです」
そうそう、確かバート。
ん?
なんですと?
いつの間にやら始まっていたクラスの自己紹介でバート姓の女子生徒がいた。
恥ずかしそうに立っているその女子生徒は水色の髪に水色の瞳をした可愛い女の子だった。
いたー!この子がヒロインちゃんだ!!
間違いない。
この世界の住民は基本的に髪色が茶色か暗赤色の人がほとんどで、レオンのような金髪私のような銀髪アーサーのような黒髪は他では見かけない。
運営がモブは面倒だから手抜きしたとしか思えない。
そんな中水色の髪色なんてそれだけで特別な存在だ。
みーっつけた♪
是非是非お友達になって虹恋リアルバージョンを特等席で眺めさせてもらおう。
ああ、モブって最高!
◆
初日は自己紹介と簡単な説明だけで終わった。
この後帰るも良し専科を見学しても良しの自由行動だった。
リリが私の傍に寄ってきて、この後予定があるか聞いてきた。
「特にはないわよ」
「じゃあ、一緒に農学科を見学してもらえないかしら?一人で見に行くのちょっと勇気がいって」
「ふふ、ダレル様の為に農学科に行くの?」
図星を指されてリリは真っ赤になる。
「やだもう、からかわないで」
真っ赤になったほっぺたを手で押さえて隠す。
かーわいい。
あれからダレルは得意な土いじりを極めて新製品の肥料を作り出した。
その肥料が安価で品質が良いと園芸好きなマダム達に好評なのだ。
バーロウ領は特に特産のある地方ではなかったので、今後そちらの方面に力を入れていくらしい。
ダレルもやるじゃない。これもリリへの愛がなせる業ね。
ダレルは私達とは3歳差なので残念ながら一緒の学園生活を送ることは出来なかったけれど、リリは少しでもダレルの役に立てるように農学科を選択するつもりのようだ。
仲が良くて何より。
政治経済学科はレオがいるし、剣術科にはアーサーがいる。
何も急いでその二つを見に行く必要もないし、今日の所はリリに付き合って農学科に行っても良いかと思った。
「じゃあ農学科へ行きましょうか」
でも、その前に。
「アナベル=バートさん。良かったら私達と一緒に農学科へ見学に行きませんこと?」
ヒロインちゃんも誘ってみましたー!
帰る為に私達の後ろを通っていたヒロインちゃんはびっくりして立ち止まった。
「え、どうして私の名前を?」
「先ほど自己紹介頂きましたから」
「え?クラウディア様はそれだけで覚えてしまわれたんですか?もしかしてクラス全員の顔と名前も?」
いやいやそんなまさかレオじゃあるまいし。
第一最初の方聞いてませんでしたし。
ヒロインちゃんであるあなただけです覚えているのは。
でもそんなこと言えないからにっこり笑って誤魔化すと、勝手にヒロインちゃんは誤解して感心してくれた。
「あなたも私の名前を覚えていて下さっているではありませんか」
「あ、すみません。馴れ馴れしく名前でお呼びしてしまって」
「構いませんわ、私達は同じ学舎で学ぶ同級生ではありませんか。身分などここでは関係ありません。どうぞそのままクラウディアとお呼び下さいな。私もアナベルさんとお呼びしても宜しくて?」
「は、はい。どうぞ。でも、クラウディア様のことは自己紹介されなくても貴族なら皆知っていると思います。有名ですから」
え?有名?なんで?
私なにかしでかしました?
意味が分からなくてリリを見るけれど、リリも苦笑だけして答えてくれなかった。
当然ヒロインちゃんもそれ以上は教えてくれず。
えーん、私は無実ですー!!!
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