エリクセル学園入学
ふふふふふふ、うふふふふ、うふっうふっうふふうふ。
え?気持ち悪いですって?
周囲が私の忍び笑いを聞いて引いているですって?
そんなもの私は全く気にしません!
だって私本日エリクセル学園に入学したのですから!!
世界中の皆様私を祝ってください。私無事王子の婚約者にならずに15歳になれたんですよ。
つまり修道院行きルートから外れたってことです。
なんということでしょう!私はついにやり遂げたのです!!
パンパカパーン!!
思えば長い道のりでした。
3歳で前世の記憶を取り戻しルートから外れようと奮闘したにも関わらず、レオと出会ってしまいひょんなことから友人となり宮殿に行ってアーサーと出会い友人となり。
アーサーと一緒にやらかしてレオに怒られ罰を食らい、アーサーと一緒にやらかしてレオに怒られ罰を食らい、アーサーと一緒にやらかしてレオに怒られ罰を食らい・・・あら、おかしいわ。この7年間その記憶の繰り返ししかないわ、変ねぇ。
おかげで最初は1年のはずだったダンスレッスンパートナーが繰り返される罰のせいで2年5年7年と伸び、その途中レオンが他に婚約者を決めなかったせいで暇だった王妃様が私を拉致してお茶会に参加させたり、そのついでに王妃様直伝のマル秘テクニックなどを伝授されたり、細かいマナーや貴婦人たちとの付き合い方なんかをレクチャーされる羽目になった。
そういうのは未来の王太子妃が受けるものではないのですか?とやんわり断ったこともあったけれど、「それならちょうど良いからディアがレオンのお嫁さんになりなさい!」と無邪気に王妃様に言われたので、それ以降は何も言わずにただ王妃様に従った。口は災いの元。藪蛇藪蛇。
色々大変な事もあったけどそれもこれも後はレオがヒロインちゃんと出会えば全部バトンタッチできるし、私は私の人生を歩むだけ。
実はゲームと同じ学園に通わなくても良いんじゃない?と気づいた私が庶民が行くモーリッツ学園に行きたいと希望を述べたらお母様がぶっ倒れてしまったので、そこはきちんと貴族の子供が行くエリクセル学園に通うことにした。
まぁ学園ならではのイベントも沢山あったし、それを特等席で見れるのも悪くはないかなと思い直した。
これからはヒロインちゃんがメインで私はモブですから。
良いわよね~モブって自由ですもの。モブ最高!
くふふふふと笑っていると頭に大きな掌が乗ってきた。
「おい、何朝から変な声で笑ってるんだよ。お前仮にも侯爵令嬢だろうが。初日位化けの皮被ってろ」
ズンッと腰に来る低音ボイスを朝からどうも御馳走様です。
「アーサー!おはよう、いいお天気ね!」
この7年でアーサーはゲームのアーサーと同じように成長した。
高身長細マッチョ長い手足に端正な顔立ち魅惑のボイス。
もう毎日垂涎ですよ。
「お前はいつも元気だな」
クスっと笑った笑顔なんて色気がありすぎて。見て、被爆した周囲の女子学生が腰砕けになって立てなくなっているから。
やっばいわー、この人外歩かせたらいけないわ。
「今日は念願の入学式だからね。あ、そういえばアーサー先週お見合いだって言ってたけどどうだったの?」
私が聞くとアーサーは目を泳がせた。
「あ?んん。いつもと同じだよ」
ということはまたダメだったのだろう。
アーサーも17歳になったのにいまだに婚約者がいなかった。
しかしそれは子供の頃とは意味合いが違う。
子供の頃は男性人気しかなかったアーサーだけれど、大人になってからは女性人気の方が高いのを知っている。
縁談も毎日山のように送られて来ているらしいが、いざ生のアーサーと顔を突き合わせてその魅惑のボイスを聞くと女性が気絶してしまう為中々婚約者が決まらないらしい。
可哀そうにアーサー。
「大丈夫よ、私もまだ婚約者いないし」
そう私はフリーです。ゲームと違って王子の婚約者じゃありません。
大事な事なので何度でも言います。私フリーなんですよー!
おかしいと思いません?世間の皆様。
自分で言うのもなんですけど、私かなりお買い得なご令嬢だと思うんですよ。
家柄良し顔良し教養アリ。最近では王妃様にしごかれているから所作だって完璧なんですよ。
それなのにどうして私に婚約者がいないのでしょう?
変だわー。
美しすぎるのも罪ってやつなのかしら?と以前言ったら、アーサーに「お前が婚約者決まらないのは当たり前だろう」と真面目な顔で言われた。
ちょっとふざけただけなのに。ふんだ。
「ねぇ、アーサー。もう私で良いんじゃない?」
もう何度目になるだろうか逆プロポーズを今日もかますがアーサーはフッと目を細めていつものセリフを言った。
「お前が良い女になったらな」
なってるじゃない。どこに目を付けてるのよ。ゲームのライバル令嬢なめるんじゃないわよ。
見て、このボン・キュ・ボン!
ペタ・ペタ・ペタだった前世から比べると戦闘能力が100倍違うわよ。
「お化粧もうちょっとちゃんとしようかしら」
ゲームの私は厚化粧をしていたが、前世と比べるとはるかに美少女な上元々お化粧自体やらなくていいならしたくない派なのでほぼすっぴん状態だったのだが、良い女の定義が色気であるならば覚えることもやぶさかではない。
しかしそれはアーサーに却下された。
「化粧して稽古するととんでもないことになるぞ」
はうっ!
そうだった。
実は今私はアーサーと一緒に剣を習っていた。
子供の頃アーサーにくっついて騎士団の練習を見学に行った時、そこにいた女騎士の格好良さに惚れ込んでそこから私もお父様におねだりして剣を習いはじめたのだ。
お母様は最初女の子が剣だなんて危ないわと反対していたけれど、私はどうしてもとお願いした。
もし万が一王子の婚約者になってしまい破滅コース行きになったら、騎士団に入れば良いんじゃないかと思ったからだ。
手に職がないお嬢様だから振られたら修道院へ行くしか道がないけれど、剣が使えれば身分を捨てて騎士になることが出来る。
いいアイディアだと思ったのだけれど、実際に剣を振ってみると模造刀でも重いし体力がもたないしで、無様な格好を何度も晒してその度にアーサーに笑われた。
けれども私は諦めなかった。そして地道な努力と元々の才能(←ここ大事。テストに出るからね!)のおかげでそこそこいい線行くようになった。
アーサーのお父様からもあと数年真面目に稽古すれば騎士団に入れるだろうとお墨付きも頂いた。エッヘン。
もちろんアーサーは学生にして既に騎士団入りしてるけどね。二足のわらじって奴ですよ。
天才だからね!
「ところで、もう専科は決めたのか?」
アーサーから尋ねられて思い出した。
この学園には基礎学力を勉強する本科の他に自分の行きたい道を選ぶための専科がある。
ヒロインはここでどの専科を選ぶかによって攻略対象者が決まる。
政治経済学科を選べばレオンに。
剣術科を選べばアーサーに。
魔術学科を選べば魔術師長に。
農学科を選べば公爵子息に。
どこにも入らず生徒会に入れば生徒会長か後輩に。
結構重要なポイントなのだ。
ゲームの私はレオンと同じ政治経済学科を選択していたけれど、今の私は何を選ぶか考えていなかった。
「まだ決めてないから後で見学してから決める予定」
ヒロインちゃんがどこを選ぶかも気になるし。
「そうか、まぁ剣術科に来たらしごいてやるよ」
「返り討ちにしてあげるわ」
こう返しちゃうところが私がアーサーに女性に見られない最大原因なのは分かっていたけれど、この関係も居心地が良くて変えられなかった。
ブックマーク登録&評価をしてくださった皆様ありがとうございます(*'ω'*)
とても嬉しいです。(*'▽'*)
感想をくださった皆様ありがとうございます( ´ ▽ ` )
皆様のおかげで頑張れてます。