3:ヒロイン登場!
エクスは周囲を警戒しながら廊下を進んでいく。
廊下からは時折どす黒い排気音のような不気味な音が鳴り響くが、先程登場した一つ目の化け物とは遭遇していない。
なので廊下は今のところ安全だ、少なくとも今はだが…。
部屋の中は大惨事になっているケースは多いようだ。
所々部屋はあったが、廊下越しからドアを覗くとスプラッター映画顔負けの状況になっていることが多々ある。
「この部屋は………………うん、見なかったことにしよう。人が壁の中にめり込んでいるし…明らかにヤバイな、あの一つ目の化け物も四匹もいるな………。むやみやたら部屋に入るのはやめよう」
今エクスが通りがかった部屋は凄まじく荒らされていた。
電気は止まっていなかったが、部屋の中の光景はかなり、悲惨。
いや悲惨を通り越して凄惨といってもいいぐらいだ。
上半身と下半身がお別れしている死体がゴロゴロ並んでいる。
いや、敷き詰められているといったほうがいい。
そんな凄惨現場で死んだ研究者の腕を口に入れてお食事している一つ目の化け物はまさに恐怖だ。
やつらの視界に入らないように、すぐに伏せて忍び足でその部屋の前を去った。
どこぞのホラー映画のシーンだとエクスは心の中で突っ込みを入れた。
「…ったく、この危機的な状況で銃を握りしめて道がわからないまま歩くなんて冗談じゃねぇ………イカレタ場所だけに、地図のようなものはないのだろうか…」
そう、この建物内部は相当広い。
直線の廊下だけで1キロ以上はあるのではないだろうか。
それだけの巨大施設、ならどこかの国家が絡んでいるのではないかと脳裏で推測するも、場所すらわからないようでは話にならない。
しばらく歩いていると、今までの実験室のような部屋ではなく、やや大きな扉が設置された場所にたどり着いた。
もしかしたらこの部屋の中に重要なものがあるかもしれない。
エクスはゆっくりとドアを開けた。
どうやら部屋は講義室のようだ。
椅子がいくつも並べられていて、黒板には何やらチョークで殴り書きされたような文字が見受けられる。
(血塗れでなだけ遥かにいい部屋だな。だが、何があるかわからない。油断せずに警戒をすることが長生きする上で必要なコツだ…ってだれかが言っていたような気がする)
ドアを閉める際に廊下に誰もいないことを確認する。
右、左…もう一度右…よし、だれもいないな。
ドアを閉めてから黒板が置かれている教壇側にゆっくりと歩きだす。
一歩、また一歩近づいていく。
コツ…コツ…コツ…
(誰かいそうなようでいない…いや、誰かいるはずだ。)
エクスは感じていた。
誰かに見られていると…。
視線を感じるのだ、エクスの五感がフル稼働していることもあって、視線の感じる先に歩きだす。
ゆっくりと、銃を握りしめて。
呼吸を整えて歩く。
(落ち着け、落ち着け…もしかしたらまともな生存者かもしれないぞ…まともじゃなかったら?さっきの化け物みたいなやつだったら?そんときはKILLを前提で撃って構わない…)
やがて、黒板に近づくにつれて、女性のすすり泣くような声が聞こえた。
聞き間違いか?
いや、確かに女性がすすり泣く声だ。
エクスは近くに女性がいることを確信する。
床を少しだけ動かす際に服の繊維が床に擦れる音が聞こえる。
エクスの正体に気が付いたのかもしれない。
もしくはあの一つ目の化け物だと誤解されているのかもしれない。
確かにあのような化け物がウロチョロと歩き回っていたら恐怖以外の何物でもない。
エクスですら本能的に恐怖を感じるような容姿だ、まして女性であれば尚更怖いと感じるだろう。
(そう考えたら俺を化け物だと思って早とちりして撃ってしまう事も考えられるな………うーん、ここは一つ声をかけてみるか?俺は化け物じゃないって言った方が安心するかも…)
そう考えたエクスは足を止めた。
そして囁くような小さな声ですすり泣いているであろう女性に対して聞こえる程度の声量で話しかけた。
「………おーい、誰かいるのか?………いるなら返事をしろ………」
「………スッ………………スッ………………」
「…大丈夫だ、おれはあんな化け物じゃない、人間だ。そこにいるんだろう?俺の声が聞こえるなら姿を見せてほしい………」
すると、女性の方からゆっくりと姿を現す。
どうやら話が通じる相手のようだ。
黒板の前にある教壇の中に隠れていたようで、教壇から出てきてくれたのだ。
相手も話が通じる相手だと感じたのだろう、一安心した矢先に、出てきてくれた女性の姿を見たエクスは驚愕する。
エクスは最初人間の女性だと思いこんでいたが、よく見たら人間ではない。
大企業の受付嬢が着ているような黒色のしっかりとしたレディーススーツ風の装甲を身に着けている、装甲以外は無機質な薄い青紫色で染まっており、女性の瞳は人間に近いが人間のように円形ではなく、ひし形に近くてマリンブルーのような青い瞳であった。。
そしてその瞳の中にはカメラレンズがいくつも搭載されており、エクスを見るために視覚センサーを調整したのだ。
頭部は女性のツインテールをイメージして作られた飾りのようだ。
早い話が、エクスの目の前に現れたのはロボットであった。
繰り返しますが、このロボットが本作のヒロインです(ガチ)