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2:チュートリアル不要論

銃を右手で握りしめ、エクスは部屋のドアを左手でゆっくりと開けた。

ドアを開いたらそこは外壁やドアも白色で統一された清潔のある廊下だ。

建物の外の様子はわからないが、まだ廊下は部屋の中よりも綺麗だ。

やはりこの部屋だけが異常だったのだろうか。

エクスは首を傾げて廊下を歩きだした。



「あーっ………なんかあれだよな………ほら()()だよ………ゲームの序盤で敵とかが現れそうだよな。なんだっけ………ウイルスパンデミックを描いたホラーゲームだと、ウイルスに感染して凶暴化した動物が窓を突き破ってくるシーンがあったような気がする………」



エクスは頭の中でぼんやりと浮かんだ光景を口走る。

自分がやったことはないが、なぜか記憶の中では触れたこともないゲーム機のコントローラーを手に取って遊んだような記憶があるのだ。

記憶の中では暗い部屋でそのホラーゲームをプレイしており、その顛末までは思い出せないがそういった一種のお約束、ホラー、恐怖感がエクスの身体にひしひしと伝わっていく。



「いやいやいや、そんなご都合主義な展開は無いだろう………それに、ちゃんと廊下は静かだし凶暴化した動物や人間だっていないし………おまけに綺麗だ。絶対気のせいだ、そうだ、気のせい。今時そんなアホなことをするような脚本家もいないって。成年向け同人誌の日常シーンからHでウフフなシーンへの切り替でももう少し凝っているし、チートテンプレート異世界転生量産小説作家でももっと工夫してお話を書いているはずだ。そう、こうして喋りながら歩いているだけだ、そう、とてつもないほどに平和じゃないか………オォウ」



そう喋りながら廊下の突き当りを右に曲がった時に、エクスは見てはいけないものを見てしまった。

前方約25メートル先でスプラッター映画顔負けの殺戮(さつりく)現場を目撃してしまったのだ。

殺されているのは目覚めた部屋にいたような白衣を着た人間だ…おそらく研究者だと思うが、彼らが病院で入院しているときに着る病衣を身に着けた男によってズタズタに引き裂かれていた。

何度も何度も遊ぶように研究者を叩きつけているうちに、男はエクスの存在に気が付いて振り向く。

そして、エクスは男の姿を見て驚愕した。

顔は巨大な一つ目と、縦に割れた不気味…いや、進化の過程を間違えたような滅茶苦茶な配列の鋭利な歯を動かしながらぎちぎちと音を立てている。



「…あーっ。えっと…俺のことはお気になさらずにどうぞごゆっくり………ってこっちくんなよ!!!」



狙い変更。

不気味な男は真っ先にエクスに襲い掛かる。

口からは血が垂れており、あの研究者を()()()()()のかもしれない。

明らかに会話による解決は不能である。

となれば手段は一つだ。

エクスは銃を構え、頭に狙いを定めてトリガーを引いた。



ズガァァァン!!!………カラン、カラララララ………



乾いた発砲音が廊下を振動する。

そして、空の薬きょうが廊下で跳ねて回転する音がエクスの両耳で確かに聞こえる。

弾丸は男の顔面に直撃した。

正確にいえば男の巨大な目玉をぶち抜いたのだ、頭の後ろから頭の中の肉片が飛び出して男はその場で倒れた。

ぶっ倒れた男が死んだふりをしている可能性もあるので、もう一発脳の部分を撃ちぬいて確実にトドメを刺した。

そして、死んだ男をエクスは目視で調べることにした。



「うへぇ………気持ちわる!!!もう、こいつはキメラか?それともゾンビの出来損ないか?いや、でも腕には牙のような部分も生えているのか…これ、戦うために生まれてきたって感じがするな………うぅ…夏場にチーズと納豆とみそ汁を炎天下で3日間放置したような強烈な臭いがするし、顔が致命的にキモイからこいつの死体は見ないでおこう、うん、本当に…(こいつ)がなかったら勝てたかどうかわからないな。というか、素手で戦って勝っても臭いでやられていたかもしれないな………」



余りにも臭いが酷すぎて、エクスは鼻と口を左手で抑えるほどであった。

もし食事をしていたら確実に胃の中身を戻してしまう所だっただろう。

幸運にも食事をしていなかったエクスは吐くことはしなかった。

そして血まみれで、身体の上半身の原型が留まっていない研究者の死体の近くにカードが落ちていることにエクスは気が付いた。

エクスは立ち止まり、カードを左手で拾い上げる。

この亡くなった研究者のものと思われるカードだ。



(この人のカードなのか…カードには【A区画一般職員 識別番号 A402-09】と書かれている。この場所がA区画と呼ばれているのかも、区画ごとに仕切りがあればこのカードが必要になるかもしれない。拾ってウエストバッグにしまっておこう。あの一つ目の化け物がうじゃうじゃいるようならさっさと逃げたほうがいいな…すみません、カード…使いますね)



死体を見ようにも無残な状態であるので、目つぶって研究者の亡骸に一礼すると、エクスは銃を構えたまま再び歩きだした。

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