18:K`s
「いやあああああ!!!来ないで!!!来ないでぇぇぇぇ!!!!」
悲鳴のした方向にエクスが振り向くと、10代後半の少女が化け物に襲われかけていた。
通路の隅に追いやられて、ノロノロと動いている感染者との距離がどんどん縮まっていく。
(このままでは噛まれてしまう。助けないと………)
エクスは少女に向かって大声で叫んだ。
「伏せて!!!目を閉じろ!!!」
直ぐに少女はエクスの言われたとおりに伏せて目を閉じる。
エクスの声に反応した感染者はゆっくりとエクスの方に顔を動かす、焦点の合わないぎょろぎょろとした目は大きく開いて充血している。
口の中に誰かの頭部を食べていたのか、長い髪の毛が大量に口の中に詰まっている。
それを何度も咀嚼するように歯で噛んでいたのだ。
一つ目の化け物ではなく、人間の形を保っているが異質な姿となっている感染者に向けてエクスは引き金を引いた。
ズガァァン!!!
エクスの放った銃弾は感染者の頭部に命中する。
頭部に命中し、足が崩れて前のめりに倒れる感染者。
そしてトドメの一撃を頭部にもう一発放つ。
ズガァァン!!!
ピクリとも動かなくなった感染者。
そして少女はぺたんと座り込んで涙目で感染者の方を呆然と眺めている。
エクスは少女に尋ねた。
「大丈夫か?噛まれていないか?」
「………ええ、大丈夫よ………」
少女は茶髪のロングヘアーと『K`s』と書かれたピンク色のパーカーを着ており、見た目でいえば高校生ぐらいだろう。
エクスの問いかけに少し間を置いてから答える。
エクスが目視した限りでは噛まれた痕は見受けられない、なので念のためにアヤに感染していないかチェックをしてもらう。
用心するのに越したことはないからだ。
ゾンビ映画では、噛まれていないといって実は噛まれているケースは多い。
ちゃんと全身を診てもらったほうがいいだろう、それで異常が無ければ少女は嘘を言っていないことにもなる。
アヤが少女に近づいて、感染していないかチェックを行う。
「はじめまして、私はアヤと申します。貴女のお名前を教えていただけますでしょうか?」
「…ミホ、イシダ・ミホよ………」
「ミホさんですね、改めてお伺いいたしますが、感染していないかチェックを行ってもよろしいでしょうか?…あ、エクスさん…しばらくこちらを見ないでいただけると幸いです」
「ああ、分かった。それじゃあ、俺は後ろを向いているよ…」
アヤはミホの承諾を得て、バイタル測定と身体に手を当てて傷や感染していないかチェックを行う。
チェルノボグに感染すると初期症状として急激な血圧の上昇と、臓器の異常な数値が出るのでパンデミック初期において民間でチェックが可能な感染を識別する上で最も分かり易い方法だ。
これらのチェックは精度としても極めて高く、遅延性でない限り診断の的中率は98パーセントを超える。
バイタル測定を終えて、目視でのチェックで異常がない事を確認したアヤはエクスに言う。
「エクスさん、安心してください。ミホさんは感染していません」
「そうか………とりあえず感染していないようでなによりだ………」
一先ずミホが感染者ではないことが分かったので一安心するエクス。
しかし、時間は刻一刻と迫っている。
早く整備課に行かなければならないが、それよりもここにいるミホを連れていくかエクスは判断を迫られることになったのであった。




