11:散弾デビュー
「アヤ!!!早くショットガンを持って!!!あいつらが一斉に襲いかかる前に撃ち込むぞ!!!」
エクスはアヤにショットガンを持つように指示を出した。
RM870を左手で持ってアヤに突き出した。
アヤは驚きつつもエクスから渡されたRM870を持ってエクスの指示でショットガンを構える。
だが、アヤは引き金に既に指を掛けている。
いつでも撃てるようにしているのだ。
本来であれば不用意に引き金に指をかけてはいけないのだが、アヤは民間用ロボットなのだ。
軍事用ロボットではないから銃を構えたこともないのだろう。
おまけに銃の構え方も片手持ちだ。
RM870は3キロ弱ある上に反動も強い、銃すら持ったことがない人間であれば、この片手持ちの状態で撃つのは肩を脱臼したり、暴発したり事故の原因になるので極めて危険な持ち方であった。
どこぞのターミネーターだとエクスはツッコミを入れたくなったが、アヤはロボットなのだ。
銃だって持ったこともないだろうし、下手に武器を持とうとするとプログラムが拒絶反応を示す場合もある。
アヤは気難しい顔をして迷っているようであった。
そこでエクスはアヤに銃を撃てるかどうか尋ねた。
「えーっと…アヤ、もしかして銃を発砲してはいけないようにプログラムとかされているのか?」
「はい………ただ私の場合は欧州向けに輸出用として作られたので、犯罪に巻き込まれて周囲の人や雇用主などに危害が加えられそうになった場合にのみ、自衛のために銃などの反撃手段を講じることを許されています。現在の状況ではそうした危機的状況に当てはまりますので、銃の使用が抑制プログラムから許可されました。ただ銃を撃ったことがないのでこの持ち方でいいのか………エクスさん、この持ち方でよろしいでしょうか?」
「あー…うん、今はもう時間がないからその持ち方でいいけど………引き金はむやみやたらに触らない方がいいぞ………」
「分かりました………気をつけてください、あと数発でドアが破られそうです」
ドン、ドン、ドン………とドアを叩く打撃音が続いて5秒程間を開けてからドアが破られた。
ドアを破って現れたのは、一つ目の化け物だ。
だが、先程までの一つ目とは違い、一回り大きくて両端の耳も異様に大きかったのだ。
楽器のシンバルのように大きく膨れ上がった耳がひくひくと動いているので、エクスとアヤの会話を聞きつけたようであった。
その後ろから他の一つ目の化け物たちがぞろぞろとやってくる。
やるなら今しかないと思ったエクスは、息を止めて最初にドアを破壊した耳のデカい化け物の目掛けて一発撃ちこんだ。
撃ちぬかれた部分から紫色の血が噴き出る。
しかし、内部まで貫通はしていなかったようで、耳のデカい一つ目の化け物は絶叫を上げながら破壊された部分を抑え込む。
そこにすかさず銃弾を二発撃ちこむ。
一発目は左手にめり込み、二発目で急所である目玉の奥深くに直撃したようだ。
化け物は撃たれた反動で床に倒れて動かなくなる。
エクスの発砲を合図にアヤもRM870を発砲する。
頭部を散弾で無数に細かい穴の開いた化け物は硬直した後に、膝から崩れ落ちる。
それからはエクスとアヤは化け物が途絶えるまで銃を撃った。
エクスは銃を構えて正確に目玉の部分を撃ちぬく。
それに続くようにアヤはロボットの特性を生かしながらRM870の反動を抑えた状態で感染者の頭を散弾で破壊する。
アヤがショットガンの装てんをしている間にエクスがフォローする。
2分ほどで講義室の入り口には化け物の死体の山が出来上がった。
エクスはマガジン2本分の14発、アヤはシェルホルダーについていた予備の散弾を含めて10発すべてを使い果たしたのであった。
「はぁ………なんとかこれで全部みたいだな………アヤ、大丈夫か?」
「はい、大丈夫です。エクスさんも………お怪我はありませんか?」
「うん、怪我は無いよ………それにしても、一つ目の化け物以外にも耳のデカいやつまでいるとはね………」
「これも感染の影響でしょうか………それにしても不気味ですね………」
エクスとアヤが倒した死体がもう動くことはない。
しかし、この施設内部にはこんな化け物達がうじゃうじゃいるだろう。
危険極まりない場所だ。
だが、安全地帯であった講義室のドアが破壊された現在、ここも他の化け物によって襲われるかもしれない。
エクスはアヤに場所を移動することを提案する。
「今の銃声で他の化け物も寄ってくるかもしれない…アヤ、他に隠れそうな場所はないか?」
「そうですね………一先ずドアが二箇所以上ある場所に向かいましょう。一箇所から侵入されても脱出経路を確保すれば安全です。この講義室は出入口が一箇所だけでしたので………」
「言われてみればそうだな………よし、場所を移そう。所で缶詰や散弾は持てるかい?」
「はい、収納ポケットがありますのでそこに入るだけの容量はあります。充電も45パーセントまで回復したので移動は問題ありません」
RM870用の散弾15発すべてをアヤに手渡してRM870に5発とシェルホルダーに5発、そしてアヤの装甲に備え付けられている収納ポケットに残りの散弾を缶詰と共に入れ込む、エクスはペットボトルに入ったお茶を半分ほど飲んでから講義室を後にしたのであった。




