闇に堕ちた勇者4
後に残ったのは、血の臭いと大量の魔物の遺体だけだった。
実力のない相手だったが、まずまずの戦いができて満足することができた。
「これで魔物は倒せた。行くぞ」
「倒す必要性のない相手を倒して満足ですか!? 倒したところで新しい犠牲者が出ると知っていて倒すのですか!? 彼らの正体を……知っていながら、どうしてこんなことをするのですか!?」
サクラは馬上から涙を流しながら、顔を真っ赤になりながら怒っていた。
だが、何を言われてもオウカの心には何も響かない。
「楽しいからだ」
彼女は言い返すことができずに下唇を噛む。
オウカだって分かっているのだ。この感情は普通ではないと。意味のない殺しは悪であると。
だが、分かっていながらも彼は意味のない戦いに身を堕とす。
心を満たすためだけに、悪に堕ちるのだ。
「……あなたはリアフィース帝国に復讐するつもりですか!?」
「それは興味がない。面白くないし、競い合ってないから楽しくもない」
彼女はオウカの過去を知っているのだろう。
そして、オウカに関わる全てを神のように、知り尽くしているのだろう。
だが、彼女は知らない。
オウカが持つ、怪物のような心を。
「さてと。これからどうする?」
「あなたが無茶苦茶しなければ、少し進路変更するだけで帝都に行けたものを」
「俺が悪いのか?」
「悪いです!」
言われたところでオウカはピンと来なかった。
馬車は使えなくなったため、剣を背中にしまって、別のルートを考える。
「ここからなら、セロニア領はどうだ?」
「あそこの馬車は南東です。帝都に行くには北西方面の馬車に乗らないと行けません」
「少し進路が違う程度だろ?」
「正反対の方向ですよ!」
「ならどうする?」
「スフィア領まで歩きですよ! 暗殺者の森で一日休めば、次の日には着きますから!」
彼女はそれ以降、ずっと口を利かなかった。




