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40.魔王都-外周南区

 門を通り抜けると、アーロンさんとミネルバさんの迷子組が近付いてくる。


「あなたたちは?」

 クリストフ支部長が怪訝な表情で問う。

「私たちは、この方たちに命を救ってもらったのです」

「そんな大袈裟な」

 そこまで感謝される覚えはないんだけど。

「何言ってんだ、あんた達に出会わなかったら俺達はもう生きて森を出られなかったさ」

 それはまあ、彼らは森の奥目指して進んでいた訳だしね。


「どうやら、我が支部の冒険者の恩人でもあるのですね」

「いや、ただ迷子を拾い、飯を食わせて連れてきただけだ」

「色々なお話しも兼ねて支部の方へご案内します」

「待ってくれ、長旅故の疲労もあってな、今日は宿でゆっくりと休みたいのだ。明日朝一で出向くということに出来ないだろうか?」

「それは配慮が至らず申し訳ない。そうですね、本日はゆっくりとお休みいただきましょう。宿の手配は直ぐにこちらの方で致します」


「支部長、宿の手配は既に済んでいます。私たちが手配しました」

「そうですか、ではご案内をお願いします。それではまた明日ということで、支部にてお待ちしております」

 流石は支部長ということか、話は簡潔に済んで何よりだ。長話をされたら堪ったもんじゃない。



「じゃ行こうぜ、この先だ」

 迷子組の案内で宿へと向かうことになった。案内させた宿は、周囲を見回して比べると少し良さげな建物だ。

 ダイモンさんも宿の建物をじっと観察している。


「ここは少し高いのではないか?」

「料理も美味しく、サービスもそこそこの宿だぜ。俺達が使うには多少無理があるが、あんたらなら大したことないだろう」


「こいつらなら余裕だろうが、オレの稼ぎは少ないんだぞ」

「お世話になったダイモンさんの分は、僕たちで持ちましょう」

 お金は一応出発の日に用意してある、何があるか分からないので50ゴールド持って来た。霞のポーチの中で金貨が50枚じゃらじゃらいっているはずだ。


「いや、だがなぁ、年長であるオレがお前たち払わせるなど」

「気にしないでください、ほんの気持ちですから」

「ダイモンお兄ちゃん、諦めろー」

「うっぐ、わかった。馳走になる」


 宿の中に入り、受付で馬を預けるよう手配し、大量の荷物をそれぞれで分担する。ジルヴェストとオンディーヌにも持たせる、旨く空中に維持しているので大丈夫だろう。

 再び宿の中に入ると店員が案内してくれるそうだ。精霊たちの姿を見て訝しがるが何も言われなかった。普通、問題になると思うのだがどういうことだろうか? 精霊使いは珍しいはずだから、精霊を認知しているとも思えない。


「俺達はこれで失礼するよ、依頼の報酬も貰わないといけないからな」

「明日はギルドで待っているわ」

 それだけ言うと迷子組は、冒険者ギルドに向かって出て行った。



「それではお客様、足元にお気を付けください、ご案内いたします」

 店員に後に続き、部屋へと案内された。一人一部屋ずつの3部屋、一つの部屋の中へ入り説明を受ける。

 洗面所とトイレ、そして驚いたのがお風呂が個別に設けられているということ。お風呂は嬉しいことこの上ない、この世界には無いものだと思っていたから。

 あとは冷暖房の空調設備が備え付けられている。これは魔道具なのだという、使い方も教えてもらい案内は完了した。

 店員が去ってから部屋を割り当てた、鎧やらの装備を外し、まずは風呂に入ろうと思う。

 荷物の中から着替えを準備し、お風呂に突撃したのだが、オンディーヌ達も付いて来てしまう。


「お前たちはそこら辺に待機していてくれ、僕はお風呂に入りたいんだ」

『付いてゆくのじゃ』 『俺は護衛だからな』

「大丈夫だから、それじゃここで待機していてくれ。これは命令だからね」

 押し黙る2体の精霊を放置して、僕はお風呂を満喫した。小さなバスタブしかないので狭くてイマイチだけど、お風呂自体が嬉しい。

 体を洗い、湯船に浸かる。お湯に浸かることが久しぶりで気持ちが良く、気を抜くと眠ってしまいそうだ。



 普段着に着替え、ベッドへとダイブ。他の2人もお風呂に入っていると思い、ゴロゴロしていると扉をノックする音が響く。


「お兄ちゃん、ご飯行くよー」

「分かった、今行くよ」

 ベッドから飛び降り扉を開けて精霊たちと廊下に出る、留守になるのできちんと鍵を閉め直す。

 ダイモンさんは先に1階の食堂へと向かったそうだ。


「お前たち、こっちだ」

 手を振り、僕たちを呼ぶダイモンさん。

「お待たせしました」

「既にオーダーしてある、お前たちが席に着けば運ばれてくるぞ」

 流石ダイモンさんだ、気が利いている。僕たちが席に着くと同時に、料理が次々と運ばれてきた。

 少し豪華な定食という感じだ、柔らかそうなパンも付いてきた。


「お肉だよ、お肉!」

 肉中毒な霞は大はしゃぎだ。

「冷めない内に食ってしまおう」

 まともな食事は久しぶりだ、僕たちは一心不乱に食べ始め、食べ尽くす。

 食後に出てきたお茶を飲みながら、明日からの予定を検討する。


「まずは冒険者ギルド支部だな、まあ話だけで終わるだろう。その後はあの2人に案内を頼み本部を目指す」

「それで構わないでしょう。支部でどの程度時間を要するか分かりませんからね」

「馬車に乗って行くのは嫌だよ」

「それに関しては、オンディーヌを貸してあげるよ。クッションにしたらいい、オンディーヌ頼んだよ」

『主様のお願いでは、聞くしかないのう』

「ありがとうね、オンディーヌちゃん」

 霞の馬車酔いに対しては、これで問題ないだろう。

 あとは、冒険者ギルド支部でどのくらい時間を浪費するかだろうか? 無視するわけにいかないのが辛いところだ。

 席を立ち、雑談をしながら2階の客室に戻ることにした。


「今日はゆっくり休むことにしようか、お前たちも長旅で疲れただろう」

「ぐっすり眠れそうです」


 部屋に着くと、そのままベッドに横になる。お腹も満たしたので眠気が凄い、もう寝てしまおう。 

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